荒地の家族 新潮文庫

佐藤厚志

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784101059617
ISBN 10 : 4101059616
フォーマット
出版社
発行年月
2025年05月
日本
追加情報
:
確実に帯が付いた状態での出荷、また初版など版のご指定はお約束しておりません。

内容詳細

40歳の植木職人・坂井祐治は、十数年前の災厄によって仕事道具を全てさらわれ、その2年後、妻を病気で喪う。自分を追い込み肉体を痛めつけながら仕事に没頭する日々。息子との関係はぎこちない。あの日海が膨張し、防潮堤ができた。元の生活は決して戻らない。なぜあの人は死に、自分は生き残ったのか。答えのない問いを抱え、男は彷徨い続ける。止むことのない渇きと痛みを描く芥川賞受賞作。

【著者紹介】
佐藤厚志 : 1982(昭和57)年、宮城県仙台市生れ。東北学院大学文学部英文学科卒業。2017(平成29)年、「蛇沼」で新潮新人賞を受賞しデビュー。’20年「境界の円居」で仙台短編文学賞大賞を、’23(令和5)年『荒地の家族』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • absinthe さん

    生きるっていうのはつらい事でもあるんだな。大災厄の日の後、生き残った人々の話。生存者は自分が生き残ったことに罪悪感を感じることもあるらしい。死んでいった人に申し訳ないと思うような。自分を辛い環境に押し込んで、自らを罰しているような。そんな姿が描かれる。

  • A.T さん

    また、海の町なのだ。以前読んだ村上春樹の短編小説「アイロンのある風景」(1999年)にも浜辺で焚き火する男が震災後の神戸の家族を思うシーンで、炎を見つめる時の心癒される情景が描かれていた。佐藤厚志「荒地の家族」の主人公は東日本大震災で傷ついた人々とのふれあいを描くなかにも、海岸で一斗缶の焚き火をする男が描かれている。焚き火のはぜる音と匂い、炎を媒介にして傷ついた人が失ったものを弔うのだろうか。それぞれの失意は語らないし、尋ねない。春樹の人物が饒舌であったのに、ここでは無口なのが東日本らしさなのかも。

  • 桜もち 太郎 さん

    終始暗く救いようのない物語。解説の小川洋子さんは主人公祐治の息子が最後に笑うところが、光が見えると書いていたが、自分にはそうは見えなかった。東日本大震災を生き延びた家族だが、彼の妻は2年後に流感にやられ死んでしまう。再婚した相手との間にできた子供は流産。その妻にも逃げられる。「どれだけ土をかぶせてもその穴は埋まらない」「この世にはまだ見ぬ、計り知れなぬ災厄が順番を待っている不吉な予感があった」。震災を経験した人たちの心情なのかもしれない。幼馴染の明夫の自殺が決定的だった。元の生活には戻ることはできない。→

  • cao-rin さん

    初めての作家さん。第168回芥川賞受賞作。東日本大震災で仕事道具全てを波にさらわれ、2年後には妻を病で亡くした40歳の植木職人・祐治を中心とした物語。震災によって大きく人生が変容し、何とか再生をめざすが、お世辞にも前向きな話ではなく、どの人も痛みや苦悩を抱えたまま日々を生きる。復興とか、再生とか、そんな表面的な言葉では表現できないし、恐らくゴールなどない。それでもほんの一筋の光や平穏が、被災者の方々の元に少しでも多く訪れて欲しいと願わずにいられない。

  • 練りようかん さん

    芥川賞きっかけ。野外で作業する植木屋の一人親方。過酷な夏も寧ろ待ち切れないと体を使う主人公の姿にアグレッシブさは感じず陰が漂った。東北の漁港、荒地ともいうべき広大な景色、高い高い堤防。主人公の頭の片隅には幾つもの死が停泊していて、帰郷した幼なじみもまた同じ眼をしていると思わせる報いという言葉に自然と没入。過去の解像度は高く現在は低く、他者に対してあまりにも不器用なのだが、場面のつなぎと人物の脳内がオーバーラップするもっていき方が巧く、生き残った人間の心のやり場がテーマに思えた。小川洋子さんの解説が良い。

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人物・団体紹介

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佐藤厚志

1982年、宮城県生まれ。東北学院大学卒業。2017年、書店員として働くかたわら執筆した「蛇沼」で新潮新人賞を受賞しデビュー。2023年「荒地の家族」で芥川賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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