補陀落渡海記 井上靖短篇名作集 講談社文芸文庫

井上靖

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784061982345
ISBN 10 : 4061982346
フォーマット
出版社
発行年月
2000年11月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
16cm,311p

内容詳細

熊野補陀落寺の代々の住職には、六十一歳の十一月に観音浄土をめざし生きながら海に出て往生を願う渡海上人の慣わしがあった。周囲から追い詰められ、逃れられない時を俟つ老いた住職金光坊の、死に向う恐怖と葛藤を記す表題作のほか「小磐梯」「グウドル氏の手套」「姨捨」「道」など、旺盛で多彩な創作活動を続けた著者が常に核としていた散文詩に隣接する人生の不可思議さ、奥深さを描く九篇。

(「BOOK」データベースより)

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「補陀落渡海記」は、井上靖さんの短編の中...

投稿日:2021/04/14 (水)

「補陀落渡海記」は、井上靖さんの短編の中でも特に好きな作品だ。補陀洛山寺に残る渡海船から小説家としてのイマジネーションを膨らませ、これだけ面白い物語を創造したことに敬服する。新潮文庫では「楼蘭」の中に収録されており、勿論「楼蘭」も素晴らしい作品であることに疑いはないが、「補陀落渡海記 井上靖短篇名作集」として氏の短編を代表する作品として書名にされていることに特別な感慨を覚える。

ジャン=ルイ さん | 千葉県 | 不明

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読書メーターレビュー

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  • 安南 さん

    老いや死についての短編集。夢や夢想で語られる物語は幻想譚のようにも感じる。『姥捨』想像のなかで主人公は母親を背負い姥捨山を彷徨う。捨て場所を探しながらの会話がおかしみがあり、また切なくもある。そんな二人を照らす月の光はきりきりと痛い。『補陀落渡海記』この伝承を知って以来、恐怖しながらも憧れのようなおもいを抱いてきた。今回表題作を初めて読む。大詰め、嵐のなかの船出、死の淵から救われて一安心と思いきや、暗転する冷徹なラスト。背筋が凍る。傑作といわれるのも頷けた。

  • 塩崎ツトム さん

    表題作が一番異彩を放っていた。死に送り出された高僧が、嵐に巻き込まれて岸に戻る。……これって特攻兵のことでは? 平和な時代、技術や医学の発展した時代。老いというものに、初めて真剣に向き合うことになったのが戦後?いやいや、そうか?井上靖の後にも前にも、老衰というのを本当の意味で真剣に考えた作家はいないんじゃなかろうか?

  • 鯖 さん

    「『救けてくれ』聞いた筈だったが、それは言葉として彼等の耳には届かなかった」ブラタモリの熊野特集で取り上げられていたので久しぶりに再読。61歳になると補陀落渡海をする習わしがあった補陀洛寺の住職である金光坊。死への恐怖、観音信仰を自らが傷つけるわけにはいかないという強迫観念。一度助かったのに、今度は明確に他者の手によって箱に釘打たれ、補陀落渡海させられちゃうのがしんどい。金光坊の死をもって補陀落渡海は区切りを迎える。自発的に死んでくれるなら続けるけど加害者になるのは嫌というのもエゴイズム。しんどい。

  • 誰かのプリン さん

    大和田和子の作品「補陀落山」を読んでから、井上靖も同じ様な作品があると知り読んだのが本書でした。 人間の奥底にある心理を上手く表現されている。「補陀落渡海記」他も心に残る作品です。

  • 忽那惟次郎8世 さん

    熊野旅行の折に補陀落神社にてこの小説を教えてもらった。小説を読んで あの鬼ヶ崎で見た熊野灘の海 太平洋の黒い波を思い出した この小説の本質は「世間」と個人主義、同調圧力 そう言ったものをテーマにしているのではないか。実際補陀落神社の人は金剛坊を褒めていた。 世間の流れに抗したい 意をことにするのであれば もっと早くから意見表明し 工作し 周囲に違うんだよ ということを伝え 環境を作らねばならない これは我々の生活でもよくあることである。 他に明智光秀を素材にした「幽鬼」「楼蘭」も読んでいる、共に素晴らしい

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人物・団体紹介

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井上靖

1907(明治40)年、北海道生まれ。静岡県に育つ。京都帝国大学哲学科を卒業後、毎日新聞社に入社。50年「闘牛」で芥川賞を受賞し、51年に退社、作家生活に入る。58年『天平の甍』で芸術選奨文部大臣賞、60年『敦煌』『楼蘭』で毎日芸術賞、64年『風涛』で読売文学賞、69年『おろしや国酔夢譚』で日本文学

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