基本情報
ISBN 10 : 4862853439
内容詳細
キリスト教における人間観の根幹は「神の像としての人間」である。そこでは「像」という人間の限界とともに、「神の」像としての人間の尊厳もまた謳われている。しかし西方教会では、「神の像」としての人間の自然本性が毀損、破壊され、人間は自ら罪を犯す前にすでに原罪を負うていると理解されてきた。原罪の教義はアウグスティヌスの原罪理解の影響のもとでの古代の教会会議の諸決定が、トレント公会議(1546年)の「原罪についての教令」で追認される。だが、キリスト教の原罪理解と人間観は、18世紀の啓蒙主義的人間観と19世紀の進化論の登場を経て後退し、生物学的観点やジェンダー論、フェミニスト神学の現代的視点からも批判が上がっている。しかし今日、圧倒的な技術力を手にした人間が、凄まじい殺戮と破壊をもたらしている現実は、原罪論がもつ人間観を改めて問い直すことを要請し、その考察は神学のみならず広く人文研究の責務と言えよう。本書はアウグスティヌスからアンセルムス、トマス、オッカム、またテルトゥリアヌスやオリゲネス、ペラギウスおよび原罪が教義とされていない東方教会の状況を考察、さらにビンゲンのヒルデガルトや十字架のヨハネなど多岐にわたる原罪論に光をあて再考する。技術の先端化や貧富の格差、グローバル化など混迷する現代において「人間とは何か」を問う試みである。
目次 : 1 樹の実の誘惑と根源悪―「創世記」と『告白』の物語りに拠る/ 2 霊魂伝遺説と原罪―テルトゥリアヌスの魂概念を手掛かりとして/ 3 アウグスティヌスの原罪論におけるオリゲネス伝承の受容と変容/ 4 アウグスティヌスにおける楽園神話解釈に基づく人間観の形成―「嘘」の概念に注目して/ 5 ペラギウス派による原罪論批判の本質と女性観を巡る課題―悪は「善の欠如」であるか?/ 6 十一‐十二世紀における原罪論の展開―アンセルムスからトマス・アクィナスへ/ 7 ビンゲンのヒルデガルトにおける原罪論の射程―『スキヴィアス』における原罪・堕罪の幻視を中心に/ 8 トマス・アクィナスの原罪論―彼のキリスト教的人間観の一面/ 9 オッカムにおける道徳の理論―原罪論を起点として/ 10 原罪から栄光まで―十字架のヨハネの原罪論の射程
ユーザーレビュー
哲学・歴史・宗教 に関連する商品情報
-
大河ドラマ『どうする家康』関連商品特集 2023年の大河ドラマ第62作はスピード感あふれる波瀾万丈の戦国エンターテインメント!徳川家康の生涯を新たな視点で描... |2023年09月27日 (水) 10:00
-
池上彰,佐藤優 対談シリーズ『黎明 日本左翼史 左派の誕生と弾圧・転向... 階級を生んだ松方デフレ、大逆事件の衝撃、弾圧と知識人の「転向」。日本左翼の原点とは何だったのか?シリーズ累計13万部... |2023年06月14日 (水) 00:00
-
アン ミカの新しいスタイルの人生トリセツBOOKが誕生!『Let’s ... 令和版「ええじゃないか」爆誕!【書籍購入者だけがいち早く聴いて歌って踊れる♪アンミカ オリジナルMusic Vide... |2023年06月05日 (月) 16:00
-
新書大賞2023 大賞『現代思想入門』 無限の反省から抜け出し、個別の問題に有限に取り組む。大きな謎に悩むよりも、人生の世俗的な深さを生きる…現代思想の真髄... |2023年06月01日 (木) 10:00
-
磯田道史『日本史を暴く』中公新書 知っているつもりの日本史も史料をもとに読みなおせば、新たな面が見えてくる。戦国、江戸、幕末の驚きの真相が満載。忍者や... |2022年12月27日 (火) 00:00
-
【緊急出版】エリザベス女王 写真で振り返る、国家に捧げた生涯 9月29... 1952年から70年にわたり、女王として君臨し、公私にわたって数々の話題を振りまきながら、96歳で亡くなるまで、英国... |2022年09月16日 (金) 14:00
おすすめの商品
商品情報の修正
ログインのうえ、お気づきの点を入力フォームにご記入頂けますと幸いです。確認のうえ情報修正いたします。
このページの商品情報に・・・