これは貴重なCDが出たという感じです。ムファットのオルガン曲がこれだけまとまって収録されているのは珍しいことです。オルガンは3種類を使用し曲によって使い分けています。国内盤の解説や帯を見ているわけではないので、どのような理由で使い分けているのかは現時点では詳細不明ですが、音色や楽器規模などの違いは聴き分けができます。曲目はトッカータを中心にカンツォーナ、リチェルカーレ、カプリッチョーの4種が収録されてますが、面白いのはトッカータの調性と同じ調性のカンツォーナ、リチェルカーレ、カプリッチョーの何れか、あるいは全部で3種の曲をまとめて並べていることです（トッカータニ長調の次のトラックにカンツォーナニ長調、その次にリチェルカーレニ長調と言う具合）。バロック時代初期の作品群ですが、トッカータに限っても華やかな曲や静寂で厳かな曲があったり、ケルル風のカンツォーナがあったりと多彩です。当時のオルガンの技巧や機能を追及した結果なのかもしれません。録音は高域を中心にクリアな響きを再現していますが、残響も程よく入っているのでオンマイク過ぎることはありません。もっと中低域も含めてパワフルな響きを追求される方には合わないかもしれません。また曲によっては再生システムとの相性の関係でうるさ過ぎて疲れるというケースも発生するかもしれません。このような録音面のマイナスを考慮しても初期バロックの鍵盤音楽ファンの方には貴重な音源となることでしょう。バッハやブクスフーデのような派手さや重厚さはありませんが、オルガン音楽の奥深さを改めて再認識させられるCDです。

万華鏡のように多彩な美しい響きを聴かせるムファットのハープシコード曲。室内楽の編曲も時折顔を出してファンにはたまらない魅力です。このCDは最後のパルティータがクラヴィコードで、それ以外はハープシコードで演奏されています。録音は残響が多く、部屋の奥で演奏しているのを聴いている感じで、音の分離も余りよくありません。演奏の少ない曲だけに大変残念ですが、そうした音作りであると納得して聴けば、それなりに楽しめる貴重盤です。

ホールの残響を強く感じさせる録音です。若手の演奏とのことですが、そうした新鮮さや溌剌さのイメージとは異なり、落ち着いた演奏傾向で意外なほどです。若さを発揮した活き活きした演奏を繰り広げて、ムファットの異なる魅力を強烈にアピールしてほしかったところですが、しっとりと品良く普通に仕上がってます。演奏順序は局番に沿ったものではなくばらばらになっています。マルチチャンネルで聴くとLIVE感の強い別の魅力があります。

17世紀、18世紀の曲目演奏を中心とするスロヴァキアのムジカ・エテルナの演奏は、非常にオーソドックスで、安心してムファットの音楽を楽しめます。1993年の録音ですが音質も上質です。最新のオランダ・バッロ協会のSACDの若手の演奏と比較しても、演奏内容・音質共に何ら遜色はありません。第1集と第2集の2枚のCDで合奏協奏曲の全曲が廉価で手に入るので大変にお勧めです。

これは一体協奏曲を聴いているのか、それとも交響曲を聴いているのかと思わせる、時代を超越したムファットの絢爛な音絵巻。バッハより30年も前に活躍しながら、ヘンデルをも凌駕するほどの度量の大きく整然とした音楽が展開 します。ジャケットの印象とは異なり、中身は骨太の勇壮なバロック建築。演奏・音質ともに一級品です。

このCDは小編成で演奏されたものですが、非常に美しさの映えたすばらしいものです。アンサンブル415の演奏(廃盤)はこれよりも大きな編成で、このCDとはかなり趣きが異なって聴こえます。ムファット自身の「少数または多数の楽器のためのソナタ」という前書きが元々あり、どちらで演奏するのも自由なのですが、それにしても1981年に録音されたこのCDは、本当にうっとりするくらい美しい演奏です。ムファットは、イタリアの華やかさを保ちつつ落ち着いた雰囲気があって実に味わい深いのですが、なぜか無名なんですよね。

Muffatの作品をこれだけまとめて聴いたのは初めてですが、親しみやすい旋律と多彩な響きで飽きさせません。　　 なお、たいていのショップでは2枚組み価格で販売されていますが、HMVさんは1枚物と同価格なので大変お買い得だと思います。

このソナタ集はムファットの師コレッリが合奏協奏曲を初演する直前に書かれた作品で、後に合奏協奏曲集として生まれ変わります。終曲の パッサカリアもシャコンヌへと編曲されますし、音楽史にも重要だと言えます。“協奏曲誕生”が覗える作品です。ensemble415盤（合奏協奏曲集）と一緒にどうぞ。シャコンヌは、Favourite Baroque Classics (hyperion-CDH55020)で聴くことができます。