SACDハイブリッド盤。スウェーデンの音楽シーンでは、ロック、即興音楽、民俗音楽といったジャンルを背景にもち、情感に強く訴えかける音楽を作る、『バーバンクの変わり者』のアルベット・シュネルツェルに代表される1970年代生まれの作曲家たちが注目を集めています。イェスペル・ヌーディンもそのひとり。スウェーデン放送交響楽団が初演した『Roster: trilogy for orchestra(声:管弦楽のための三部作)』(2015)のような北欧のアンサンブルのための作品のほか、ストラスブールの「フェスティヴァル・ムジカ」で初演された『Visual exfor-mation』(2016)など、海外の音楽祭やオーケストラの委嘱作も手がけています。2010年には「独創性と不屈の好奇心をもち、アコースティック空間を探求し拡大する音の魔術師」として王立スウェーデン音楽アカデミーの賞も受けました。
ヌーディンの『Emerging from Currents and Wave(潮流と波浪の間から出現する)』は鬼才クラリネット奏者マルティン・フレスト(マッティン・フロースト)、指揮者エサ=ペッカ・サロネンのコラボレーションから生まれた作品。「ソーシャル・メディア、バーチャル・リアリティ、AIの出現は、われわれの文化にかぎらず社会の全体に変化をもたらしている・・・そうした変化の真っただ中にいるわれわれは、どんなやり方をすれば、芸術と芸術表現とその実践に新しいテクノロジーの力を利用することができるのか・・・」とヌーディンは語っております。大編成の管弦楽、ソロ・クラリネット、指揮者とライヴ・エレクトロニクスのために書かれた本作は、コンサートではリアルタイムのヴィジュアル効果も用いられました。サロネンに献呈された『Currents(潮流)』と『Waves(波浪)』の間にフレストに献呈された『Emerging(出現する)』をはさむ3つの部分による構成。クラリネット協奏曲の『Emerging(出現する)』では、作曲者のデザインした対話式(インタラクティブ)音楽ツール「Gestrument(ジェストルメント)=gesture instrument(ジェスチュア・インストルメント)」をクラリネット奏者と指揮者が「演奏」するようスコアに指定されています。
2018年8月31日にストックホルムのベールヴァルドホールで行われた初演には「IRCAM」のサウンド・マネージャーとしてカイヤ・サーリアホたちのコンサートに協力したマルタン・アンティフォンと作曲家のセバスチャン・リヴァスの技術チームが参加。「無限の可能性をもつように見えるテクノロジーが、伝統への架け橋としても使えるのか」という問いへの答えが探られました。(輸入元情報)