(こちらは新品のHMVレビューとなります。参考として下さいませ。中古商品にはサイト上に記載がある場合でも、封入/外付け特典は付属いたしません。また、実際の商品と内容が異なる場合がございます。)
Brilliant Classics Opera Collection
シノーポリの『エレクトラ』!
ウィーン・フィルの雄弁な演奏!
アレサンドラ・マークの熱唱!
シノーポリ&ウィーン・フィルの傑作『エレクトラ』が、大好評の『ナクソス島のアリアドネ』に続いて、ブリリアント・クラシックスからライセンス・リリースされることとなりました。
【シノーポリのライフワーク】
シュターツカペレ・ドレスデンを中心に、リヒャルト・シュトラウスのオペラや管弦楽曲をドイツ・グラモフォンとワーナーに継続的にレコーディングして高い評価を得ていたジュゼッペ・シノーポリ[1946-2001]が、ウィーン・フィルを指揮して取り組んだのがこの『エレクトラ』。シノーポリはシュトラウスのすべてのオペラをレコーディングする予定でしたが、2001年の『アイーダ』公演中の急死により計画は頓挫してしまいます。しかし、残された『サロメ』、『ナクソス島のアリアドネ』、『影のない女』、『平和の日』(廃盤)の録音と、『サロメ』の映像はどれも高水準なもので、シノーポリとシュトラウスの相性の良さを証明するものとなりました。
【シュトラウスの意欲作『エレクトラ』】
『エレクトラ』といえば、大成功した『サロメ』の3年後に書かれた、より過激な作風のオペラとして有名です。巨大編成オーケストラが大活躍するこの作品では、劇的な歌唱を要求される歌手と並んで、指揮者とオケのコンビネーションが非常に重要になります。
『エレクトラ』は、“実母とその愛人によって実父を殺された兄弟たちによる残忍な復讐劇”という様相を呈する、血の匂いに満ちた残忍なオペラではありますが、ワーグナーの『指環』を上回る編成のオーケストラは、凶暴一辺倒ではない音楽の魅力を多彩な表現で浮かび上がらせています。なにしろ弦楽セクションだけで、ヴァイオリン3部、ヴィオラ4部、チェロ2部、コントラバス1部の計10声部という凝った編成になっており、その精妙をきわめた音楽は、大音響だけがこの作品の持ち味でないことを如実に示していますし、不思議な官能美と高揚感、そして陶酔の果ての歓喜の死というユニークな表現も大いに注目されるところです。
【ウィーン・フィルと『エレクトラ』】
そうした事情もあってか、これまでウィーン・フィルによる『エレクトラ』の演奏には話題になったものが多く存在します。
古くはミトロプーロスのライヴ盤(1957)や、カラヤンのライヴ盤(1964)、そして、強烈なショルティのセッション録音(1966-67)と、オペラ映画用に音声がセッション収録されたベーム最晩年の録音(1981)も見事だったほか、ウィーン国立歌劇場管弦楽団を指揮したアバドのライヴ映像(1989)も印象深い仕上がりで、それらはどれもウィーン・フィルの並外れた表現力がよく生かされているのがポイントになっています。
【シノーポリの『エレクトラ』】
シノーポリとウィーン・フィルによる演奏は、作品のオーケストレーションの魅力を徹底的に追求し、混沌とした響きから繊細な音楽まで鮮やかに示すことによって克明なドラマ構築をおこなったもので、歌手と一体になったトータルな表現の豊かで複雑な味わいに富んでいます。
【豪華な歌手陣】
エレクトラ役のアレッサンドラ・マークは、ドイツ系のアメリカ人歌手で、シノーポリとはシェーンベルクやベルク作品でも共演しており、そのドラマティックな歌唱は迫力十分。妹のクリソテミス役は同じくアメリカ人ドラマティック・ソプラノのデボラ・ヴォイトで、シノーポリとはシェーンベルクやベルクのほか、『アリアドネ』や『影のない女』でも共演。これに弟オレスト役のサミュエル・レイミーもドラマティックなアメリカ人バスということで、まさにドラマティック三兄弟の趣。レイミーはシノーポリとは『カルメン』でも共演していました。
一方、母親クリテムネストラ役は、バイロイトのフリッカ役で知られ、シノーポリとは『影のない女』で共演していたドイツのアルト、ハンナ・シュヴァルツが務め、情夫エギスト役は同じくドイツのヘルデン・テノール、ジークフリート・イェルザレムが歌っているので、主役級は全員ドラマティックな表現のできる歌手が選ばれているということになります。
脇役の第4の下女役に、10年後のビシュコフの『エレクトラ』でクリソテミス役を歌っているアンネ・シュヴァネヴィルムスの名があるのも興味深いところです。
【収録情報】
・R.シュトラウス:『エレクトラ』Op.58
エレクトラ:アレッサンドラ・マーク(ソプラノ)
クリソテミス:デボラ・ヴォイト(ソプラノ)
クリテムネストラ:ハンナ・シュヴァルツ(アルト)
エギスト:ジークフリート・イェルザレム(テノール)
オレスト:サミュエル・レイミー(バス)
オレストの扶養者:ゴラン・シミッチ(バス)
クリテムネストラの腹心の女:クリスティアーネ・ホスフェルト(メゾ・ソプラノ)
クリテムネストラの裾持ちの女:カリン・ヴィーザー(ソプラノ)
若い下僕:マイケル・ハワード(テノール)
年老いた下僕:ヴァルター・ツェー(バリトン)
監視の女:ヘルガ・テルマー(ソプラノ)
第1の下女:アネッテ・ヤーンス(メゾ・ソプラノ)
第2の下女:ガブリエレ・シーマ(ソプラノ)
第3の下女:エリーザベト・ヴィルケ(アルト)
第4の下女:アンネ・シュヴァネヴィルムス(ソプラノ)
第5の下女:カテリーナ・ベラノワ(アルト)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ディートリヒ・D・ゲルファイデ(合唱指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)
録音時期:1995年9月
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインサール
録音方式:デジタル(セッション)
原盤:ドイツ・グラモフォン