【中古:盤質B】 The Antiphonal Music: Various Brass Ensemble

Ｇ．ガブリエリ；アンティフォン作品集
フィラデルフィアｏ、クリーヴランドｏ、シカゴｓｏ各オーケストラの金管セクション
Ｇ．ガブリエリ＆フレスコバルディ；オルガンと金管楽器による作品集
Ｅ．パワービッグス（Ｏｒｇ）ボストンｓｏの金管セクション
（ＳＯＮＹ　Ｃｌａｓｓｉｃａｌ／ＭＨＫ６２３５３）
アメリカ最強の金管セクションを誇る３つのオケの奏者たちが共演した贅沢な１枚（６８年録音）と、やはり強力なボストン響の金管セクションと当時人気絶頂のオルガニスト、パワービッグスが共演したこちらも贅沢な１枚（５９年録音）。さらにＣＤ化に当たってこの２枚が１枚になったという、とんでもなく贅沢なアルバムです。一度に聴くのはもったいない気までしてしまいます。
　前半は金管アンサンブルの基本、ガブリエリの作品集。アンティフォンというのは、教会の左右・前後などに独立したクワイア（合奏体）を設け、２つ３つ（あるいはそれ以上、５０声部を越えるものあり）に分かれたクワイアが掛け合いながら進行する作品です。それぞれのパートに明確な楽器指定は無く、作曲当時はサックバット、ツィンク、コルネットを始め弦楽器なども交えて演奏されたようですが、現在ではその曲想やエコー効果などから金管楽器の主要レパートリーとなっているものです。
　このアルバムではフィラデルフィアのメンバーを中心に、クリーヴランドもしくはシカゴのメンバーとの掛合いで録音されている曲が多く、４曲だけは３つの団体の共演になっています。そのサウンドはまさしく“ザ・アメリカン・ブラス”と言えるもので、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの、燦々キラキラと輝かんばかりの音色でなければだめだ、という方にはあまり面白くないかもしれません。しかしこの、まさに鉄壁と呼びたい職人芸的アンサンブル、そしてブ厚いサウンドは一聴の価値ありと言えるでしょう。１つ例を挙げるとすれば、有名な『ピアノとフォルテのソナタ』で初めてフォルテの記号が出る部分。第２クワイアのトロンボーンに導かれて鳴り響く和音には、思わず溜め息が出てしまいます。どの曲も右左（あるいは中央も含め）のクワイアがはっきりとした対比を持って録音されているのが時代的ともいえますが、曲想からいってもそれが非常に面白い効果を生んでいるのも聴きどころです。またそれぞれの曲に詳しく演奏者の名前が表示されており、ハーセスやクレヴェンジャーの元気な音が確認出来るのも楽しみの１つ。　華麗なオルガンの響きで開始される後半は、ボストン交響楽団からの２本ずつのトランペット、トロンボーンの４人という簡素なアンサンブルとオルガンとの共演（１曲だけハープシコードも参加）で進められます。オルガンのみの曲もありますが、約半分が、金管のクワイアとオルガンの対比によるものです。直管金管楽器のみのアンサンブルとオルガンとの相性は良く、曲そのものの地味な印象と演奏者の人数に反して非常にゴージャスな響きのするアルバムです。