戦後、ハリウッドで一、二を争う名作曲家に際立って早く君臨したエルマー・バーンスタインは、ヘンリー・マンシーニと並んで、映画音楽にジャズを取り入れた、アメリカを代表する偉大なる作曲家です。”荒野の七人”、”黄金の腕”など代表作を中心に紹介してゆきます。

1922年4月4日、ニューヨーク生まれ。幼年期はダンサーへ憧れるが、12歳の頃から音楽の魅力にとりつかれるように、のめり込んでゆきました。ピアニストとして才能を発揮し、ニューヨーク大学を卒業後、ジュリアード音楽院でアーロン・コープランドの門下生ロジャー・セッションズらから作曲法を学びました。第二次世界大戦中に軍のラジオ放送などのテーマ曲や音楽を手掛けるようになり、それをきっかけに作曲家としても活躍、映画スコアとしての初めて手がけた作品は”Saturday Hero”。

その後、バーンスタインの名声を高めたのが、ソール・バスによるタイトル・バックが印象的な、1955年”黄金の腕”という作品でした。この映画のサントラ版は1956年の4月にアメリカで発売、サウンドトラックとしては、異例の大ヒットとなり、その後もリチャード・マルトビー楽団によるカヴァー・ヴァージョンもヒット・チャートとなった程でした。シェリー・マン、バド・シャンクによる切れ味の良い名演はウェスト・コースト・ジャズを知る上でも重要作、歴史的作品として語り継がれている名盤です。

そしてその翌年、”黄金の腕”に続いて、翌年の1956年、”十戒”でその才能とセンスが世界中で高く評価され、バーンスタインはアメリカ、当時最も人気のある作曲家の仲間入りを果たしました。この”十戒”はセシルB.デミル監督による大スペクタル映画。これまでの壮大で格式高いハリウッド式のスコアの形を打ち破り、独自のスコア作曲法でアプローチをしました。

その後、50年代から60年代にかけて勢力的に作曲活動をこなしてゆきました。代表作として挙げれば、”黄金の腕”、”十戒”、チコ・ハミルトンとフレッド・カッツのグループを起用した”成功の甘き香り”、そして”楡の木の陰の欲望”、”アラバマ物語”などの文芸ドラマなどでしょう。この”アラバマ物語”は、言葉では表現しがたいほどの、恍惚とした雰囲気をかもし出すピアノとハープには、底知れぬ魅力があります。是非ご一聴を。それから、”荒野の七人”。この作品で西部劇には欠かせない存在となった歴史的な作品です。そして再発が待たれる”モダン・ミリー（67年）では、アカデミー作曲賞を受賞しています。

60年代のバーンスタイン作品の中でも異色作としてCD化が切望されているのが、"サイレンサー沈黙部隊”。マット・ヘルムのスパイ・シリーズ映画でスパイ映画ファンには人気の作品として御存知の方も多いのでは？CD化が望まれる珍盤です。

1970〜80年代に入ってからも精力的に作曲活動を続けていますが、CDで聴ける作品は希少なのが残念です。数多くの作品郡の中でも、CDで聴けるのは、名盤”ブルース・ブラザーズ”、”ゴーストバスターズ”、”マイ・レフト・フット”など。”サボテン・ブラザース”もバーンスタインによるものなのですね。

そして1980年代〜90年代も、勿論現役で活躍。”ケープ・フィア”、”エイジ・オブ・イノセンス”、”青いドレスの女”、”レインメーカー”、”ディープ・エンド・オブ・オーシャン”など、幅広く手掛けています。そしてバーンスタインの最新作は、ウィル・スミス主演の人気映画”ワイルド・ワイルド・ウェスト”。「これは西部劇だ」と劇中でもウィル・スミスが言っていましたが、西部劇へのオマージュも随所で見受けられ、それゆえ、音楽もバーンスタインの曲を使ったのでしょう。ウェスタン調な楽曲が中心に作られています。

映画音楽作曲家として50年のキャリアを積んだバーンスタインは82歳でこの世を去りました。アカデミー賞ノミネートが14回、受賞が1回。また、最後の映画音楽となったは2002年の『エデンの彼方に』です。