『皇帝ティートの慈悲』全曲 グート演出、ロビン・ティチアーティ&エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団、クロフト、他(2017 ステレオ)(日本語字幕付)
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好事家 | 千葉県 | 不明 | 2022年08月10日
まず指揮のティチアーティに喝采を贈りたいと思います。モーツァルト晩年の作品としては密度が薄い、台本が稚拙などと酷評されることも多いですが、この演奏を聴くと大変充実した傑作であると感じました。声楽陣は健闘していて不満はありません。演出・美術・衣裳については他の方が詳しく述べておられる内容に同感です。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2018年09月25日
序曲や二つの管楽器オブリガート付きアリアなど力作ナンバーもあるが、現代人としてはモーツァルトのこの作曲で数度目のおつとめとなるメタスタージオの大時代的でトロい台本におよそリアリティを感じられないのが、このオペラの難点。昨年夏のザルツブルクのセラーズ演出/クルレンツィス指揮のようにモーツァルトの他作品を大量にぶち込まないと、音楽的にも聴き応えに乏しいのは事実(幾らなんでも、あれはやり過ぎだけど)。人物たちをほぼ現代の衣装にしているグート演出は舞台をはっきりと二層に分けていて、一方はススキの繁る草原、自然あるいは子供時代のイメージであろう。もう一つは現代風の機能的だが冷たい感じのオフィスで、猜疑と欲望にまみれた大人の世界といったところ。リーフレット所収のインタビューでも演出家自身がはっきりそう語っている。この二分法を補強するように、序曲ほか要所要所では少年時代のセストとティートの映像が投影されるし、ついには子供の二人(分身)まで舞台に出てくるのではあるが、映像の中の子供たちはなぜかスリングショット(パチンコ)で鳥を撃って殺しているのだ! 野原もひどく箱庭的で私にはユートピア的な自然の表象には見えない。私の感性がヨーロッパ人のそれとは違うので、演出を深読みし過ぎている可能性もあるが、私には少年時代=単なる無垢ではないよと言っているように感じられる。全体主義国家でおなじみのマスゲームのように画一的な動きをする民衆たち(合唱)に対しても強いアイロニーが向けられているようだ。結果として2006年ザルツブルクのクーシェイ演出ほどには登場人物たちに共感することができなかったが、演出家の狙いはむしろ共感を拒む異化効果か? 演奏自体の水準はきわめて高い。ティチアーティは現代楽器オケ(スコットランド室内管)でもブラームスに至るまでHIP的センスにあふれた好演を披露しているが、ここではピリオド楽器オケを率いて、尖鋭かつみずみずしいモーツァルトを聴かせてくれる。歌手陣ではセスト役のステファニーが抜群。当分、ズボン役で世界の歌劇場を席巻するのではないか。クート(ヴィテッリア)のドスの効いた悪女ぶりもなかなかだし、渋いおじさんになった(20年前のグラインドボーンでは素敵なペレアスだったけど)クロフトのティートも悪くない。葛藤の末に誰も彼も許してしまうというよりは、最後はヤケになっているようにしか見えないが。4人の方が、このレビューに「共感」しています。
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