モーツァルト(1756-1791)

CD Sym.38, 39: Harnoncourt / Concertgebouw.o

Sym.38, 39: Harnoncourt / Concertgebouw.o

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    松浦博道  |  静岡県  |  不明  |  2019年05月21日

    18世紀という時代において、極めて時代の先を行く先見的で多彩な才能を開花させ、当時のヨーロッパ人を、そして、死後の後世の作曲家たちにも、多大な影響力を持った天才モーツァルト。彼の音楽を聴くと、言いようのない深い人間的親しみと、感動を覚えることが多々ある。わけても、彼の才能は、純粋な管弦楽作品としてのシンフォニーや、ピアノ・コンチェルトといった形式の中において、その生き生きとした活力の古典的躍動美と、その自由奔放で永遠なる時間が流れる空間に包まれた、誰が聴いても飽きることのない、深い詩情味・ポエジーを感じるのだ。彼の繊細でいて多彩な交響曲やピアノ協奏曲を聴く時、その生前、ウォルフガング・アマデウスなる人物は、どの様な生活を送り、後年、ウイーンという音楽の聖地で呼吸・思考し創造したのか、という大きな疑問を投げかけているようでならない。特に、彼が生誕の地ザルツブルクを追われて後にし、ウイーンへ活動の拠点を移すことになった晩年期の円熟の極みにあった頃に生れ出た珠玉の賜物揃いである作品たちの数々の世界をいろいろと聴き進めていく中で、小生は、この普通ではない非凡な才能、それも、当時世界最高の創造力・クリエイションを持っていたと言っても大袈裟ではない、その傑出した明晰な頭脳と知恵から生れ出た高度な音楽からは、「孤独だが自由に(=frei,aber einsam )という19世紀的思想哲学と、精神性の愉悦感や悲哀感、喜怒哀楽の表現の過不足のなさといった我々、人間ならば誰しもが毎日の単調な生活を送る上で考える理性・知性や、その対極にある要素である感情の自由な呼吸を身に染みて深く一考させられるファンタジー・幻想美に満ちた音楽なのだという、限りなく神に近い存在でありながらも、所詮は一人の人間・男にすぎなかったモーツァルトという個性的創造主、楽園のミューズの18世紀的美学の世界を真に追体験・再現させられるのを、この巨匠アーノンクールの描く1枚のアルバムに収められた、交響曲第38番ニ長調<プラーハ>と、それに続くトリプテークである三大交響曲を形成する第一作目に当たる交響曲第39番変ホ長調の名演奏から、深く学び感じ取ったのである。  ここまでの表現力の豊かさ、想像力の才気煥発さを見せる内容的にも充実した交響曲、いうなれば「管弦楽のための自由なソナタ」とも言うべき世界の魅力ある光彩美と陶酔力、さらには18世紀という過去の一時代という枠と規模を超えて、現代の我々の時代にまでも普遍的に相通ずる音楽作品を書きえたモーツァルトの和声・響きには、ハイドンやベートーヴェンとは似ている様で全く性格の異なるキャラクターのユニークな創意工夫性・オリジナリティの光の彩を感じるのだ。そう思うのも決して小生一個人だけではあるまい。  彼モーツァルトの最も円熟した作曲語法の真骨頂とそこから生まれる驚くべきの想像力の爆発の拡散力といった普遍性や、古典的な均整美は、聴くものをしてヨーロッパ史以前の太古のギリシア時代の太陽神アポロンや最高神ゼウスの神々しい理想・イデアや、様々なエロスを生んでいるのを聴くたびに、その深い造形力とバランスの取れたプロポーション、決して音楽の自由な表現という次元にとらわれない、発想転換力の機敏性、21世紀の我々にも不足している生きる上でのエネルギーの活力みなぎる響きの鮮烈さに深く魅せられるのである。ハイドンでは少々暗く趣味が悪く、ベートーヴェンの音楽世界では余りにも巨大・長大すぎる、といった不満やバランス感覚の不均衡さを指摘し、抱く向きの音楽ファンには聴いていて肩に力の入らない、理想的な響きを構築している音楽世界の英知を知るに違いない。基本的に、モーツァルトは永遠の子供・神童であったという従来から言われてきた考え方・伝説に横槍を刺す様なことはしたくないが、あえて言うのならば、彼モーツァルトにしか書けない超個性的名旋律の轟を聴くことができる点に変わり映えはないわけだと言いたいものだ。メヌエットなしの交響曲第38番<プラーハ>の持つ18世紀古典世界の洗練された響きと、それをさらに追い求め試行錯誤した結果できあがったであろう南ドイツのバイエルン風な響きを持つ交響曲第39番のカップリング・アルバムとしては、これまで市場に出た音源の中でも優れた秀演に属するべき、古楽の大家アーノンクールの解釈で酔わされる大人の魅力をたたえた至福でいて飽きの来ない「決定盤」と言うべき価値・バリューと、音楽をすることの無類のない楽しさが溢れているのが聴いていてよく琴線の様に伝わってくる親しみやすさを覚えるのだ。これまでに数えきれないほど演奏・録音されてきた既存で周知の作品だが、古楽の権威として名をはせたアーノンクール流の解釈を通して聴くとまた全く違った魅力ある響きを生んでいるのに気付かさせられるのだ。演奏・解釈とは、この様な指揮者や、オケによっても全く千変万化して違ってくるという無限のヴァリエーションが効く相違性にも気付かさせられるものがある。生前、アーノンクールは当音源を含め、3種ものモーツァルト最晩年期の交響曲群の録音を遺したが、その記念すべき最初を飾った当アルバムの内容は、最初とは言えども、最初からちゃんと天才モーツァルトの本質像を突く革新的な名演が実現しているのを聴き直すたびに勉強させられる不思議と嫌味のないが、古楽演奏らしく、鮮烈でいて、モダン楽器演奏と一味も二味も違った絶妙な加減と抑制の効いた充実の内容味を帯びていて堂々と誇ってもいる究極と呼んでさしつかえのない文句なき自由でいて、自然体なよくまとまりのあるモーツァルトに仕上がっている。交響曲第38番<プラーハ>第1楽章アレグロに流れ込む前に置かれた堂々とした意表を突く序奏部分アダージョの響きは、この作品が書かれた頃の作曲者モーツァルトの円熟の晩年期特有の特徴がよく表れてもいる。続く第2楽章のアンダンテの美しいロマン主義的明暗を秘めた豊な響き、メヌエット楽章を欠いているが、それは当時のプラーハの人々の趣味に合わせて、あえて書かなかったとも伝えられる。そして終楽章フィナーレの活力あふれる楽想展開の爆発は、思わず息をのむ緊張感に満ちている。この時期のモーツァルトにしか書けない最上・最高の開放的音楽だ。続いて交響曲第39番変ホ長調の演奏に入るが、これもまたアーノンクールの学術的解釈の鋭さが前面・前景に強く押し出された力演であり、この作品でも、古代ギリシャの遺跡を見んばかりの、崇高でいて、モーツァルトの最晩年期特有の鋭さが如実に表れている意欲作だ。第1楽章冒頭のアダージョのティンパニを伴う力強いオーケストラの大胆な響き、そこから派生して流れ込むアレグロの自由闊達な躍動する世界の響きの妙には、聴いていて、思わず息をのむ緊張感が支配している。第2楽章のアンダンテ・コン・モートのやるせない官能的なエロスを描写したともおぼしき旋律の陰影美は筆舌に表しがたい複雑な心理状態にさせられる、なにかそれまでのモーツァルト作品にはない新たな次元域に到達したと言わんばかりの陶酔的情緒に心を奪われる。第3楽章のバイエルン風な雄渾なメヌエット主部と、一転してクラリネットによるのどかで田園的・牧歌的なトリオ部分の対比による響きは聴いていて心地よい。そしていよいよフィナーレの第4楽章アレグロ。この楽章も無窮動風な楽想に一貫して貫かれており、アーノンクールは途中の展開部と再現部分をリピートして演奏しており、この辺りも指揮者の腕の見せ所、およびオケの実力の聴かせ所といった内容にもなって、響きの自在な奥行きを生んでいる。  総じてみるに、このアルバムは単なるモーツァルト晩年期のオーケストラ音楽と呼ぶべき軽い意味合いのものではなく、そこには深いえもいわれぬ最晩年の円熟でいて孤高の境地・心情下におかれていたであろう、紛れもなき天才モーツァルトその人の心の分身を見るような魂の響きが詰まった聴き所の多い重厚でいて意味深長な有意義な労作となってもいる。当アルバムの演奏でも、指揮者として古楽の権威として実力をふるったアーノンクールの解釈が従来の指揮者の解釈にはない特別でいて新鮮なモーツァルト演奏であることかを、よく捉え、体現しえた決定的な代表名盤と言ってよいだろう。。ここまでの豊かで尽きることのない魅力に富んだオケの色鮮やかな世界・底力を見せつけた演奏もそう世界に多くはない希少な名演がこうして実現したのを改めて知ったのだ。  

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    yass  |  大分県  |  不明  |  2006年03月28日

    モーツァルト=癒しの音楽だという世間の誤解に決然と挑戦状を叩きつける名演である。鋭いアクセントかつ抒情性にも欠けてない個性的な解釈は好みが分かれるが、聴いていて爽快だ。癒しを求める人にはお薦めできないけれどね・・・。

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