『エフゲニ・オネーギン』全曲 ホルテン演出、ティチアーティ&コヴェント・ガーデン、キーンリーサイド、ストヤノヴァ、他(2013 ステレオ)(日本語字幕付)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2013年11月09日
ヘアハイム演出と同じ全回想形式。冒頭シーンはオネーギンがタチャーナに手紙を渡した直後、すなわち最終場冒頭で、そこから二人の回想に入ってゆく。回想部分と現実との相互浸食がスリリングなヘアハイムに比べると、主役二人の若い頃の「分身(ダブル)」を一貫して使うホルテン演出はやや凡庸ではあるが、あくまで天才ヘアハイムと比べてのこと。決闘の後、若いオネーギンが現在のオネーギンにピストルを渡す場面などは秀逸。それに続くポロネーズの振付も面白い(死体と踊るコンヴィチュニー演出を少し上品にしたパクリか)し、ラーリナ家の本、レンスキーの死体など過去の残滓が舞台に残ってゆく仕様も良い(幕切れまで退場できないレンスキー役は大変だが)。演奏陣はきわめて強力。キーンリーサイドは期待通りの演唱で、ヘアハイム版のスコウフスと甲乙つけがたい。見た目が老けて見えてしまうのが難点のストヤノヴァも分身を使った演出にうまく救われている。ブレスリクのレンスキーも素晴らしい。ティチアーティの指揮は繊細かつ尖鋭。ヤンソンスに完全に勝っている。ちなみに、演出家自身が語るオーディオ・コメンタリーは、隅々までネタばらししてしまうとはいえ、確かに面白いことは面白い(この部分の英語音声のみ日本語字幕なし)。6人の方が、このレビューに「共感」しています。
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