シューマン:交響曲第2番、第4番、ヴェーバー:『オベロン』序曲 セル&クリーヴランド管(限定盤)
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つよしくん | 東京都 | 不明 | 2011年08月06日
セル&クリーヴランド管弦楽団の演奏は、「セルの楽器」との称されるように、オーケストラの各セクションが一つの楽器のように響くという精緻なアンサンブルを誇っていた。したがって、その演奏の精密な完璧さという意味では比類のないものであったと言えるが、その反面、1980年代半ば以前のショルティの多くの演奏のように呼吸の浅い浅薄さには陥っていないものの、いささか血の通っていないメカニックな響きや、凝縮化の度合いが過ぎることに起因するスケールの小ささなど、様々な欠点が散見されることは否めないところだ。もっとも、1960年代後半になりセルも晩年に差し掛かると、クリーヴランド管弦楽団の各団員にもある種の自由を与えるなど、より柔軟性のある演奏を心掛けるようになり、前述のような欠点が解消された味わい深い名演を成し遂げるようになるのであるが、本演奏が行われた当時は、一般的には晩年の円熟とは程遠い演奏を繰り広げていたと言える。ただ、そのようなセルも、シューマンとドヴォルザークの交響曲に関しては、これらの楽曲への深い愛着にも起因すると思われるが、晩年の円熟の芸風に連なるような比較的柔軟性のある演奏を行っていたと言えるのではないだろうか。本盤におさめられたシューマンの交響曲第2番や第4番、そしてウェーバーの「オベロン」序曲においても、いわゆる「セルの楽器」の面目躍如とも言うべき精緻なアンサンブルを駆使して極めて引き締まった演奏を展開しているが、いささかもメカニックな血も涙もない演奏には陥っておらず、各フレーズの端々から滲み出してくる滋味豊かな情感には抗し難い魅力に満ち溢れていると言える。また、格調の高さにおいても比類のないものがあり、いい意味での知情バランスのとれた素晴らしい名演に仕上がっていると高く評価したい。セル独自の改訂もいささかの違和感を感じさせない見事なものであると言える。もっとも、第2番はシノーポリ&ウィーン・フィルによる演奏(1983年)、第4番はフルトヴェングラー&ベルリン・フィルによる演奏(1953年)がベストの名演であり、「オベロン」序曲は、セルの死の年の来日時のコンサートライヴ(1970年)の方がより優れた名演であることから、本演奏は名演ではあるもののそれぞれの楽曲演奏史上最高の名演とは言い難いが、シューマンの交響曲全集として見た場合においては、サヴァリッシュ&ドレスデン国立管(1972年)やバーンスタイン&ウィーン・フィル(1984、1985年)による全集と同様に、最大公約数的には極めて優れた名全集と評価するのにいささかの躊躇をするものではない。録音は今から50年以上も前のものであり、従来盤では良好とは言い難い音質であったが、シングルレイヤーによるSACD化によって見違えるような鮮明な音質に生まれ変わった。数年前にBlu-spec-CD盤も発売され、それもなかなかの高音質ではあるが、SACD盤には到底敵し得ないところだ。SACD盤は現在では入手難であるが、セルによる素晴らしい名演でもあり、是非とも再発売をしていただくことをこの場を借りて強く望んでおきたい。2人の方が、このレビューに「共感」しています。
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