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ベートーヴェン(1770-1827)

CD 未発表録音集〜ピアノ・ソナタ第21番『ワルトシュタイン』、第23番『熱情』 ルドルフ・ゼルキン(1986、1989)

未発表録音集〜ピアノ・ソナタ第21番『ワルトシュタイン』、第23番『熱情』 ルドルフ・ゼルキン(1986、1989)

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    てつ  |  東京都  |  不明  |  2023年11月22日

    一聴してとにかく、驚いた。お宝どころではなく、これは至宝である。DG125周年記念、「The Lost Tape」第一弾、ルドルフ・ゼルキン最後の録音が日の目を見た。ワルトシュタインは彼が83歳、熱情は同じく86歳の録音。ゼルキンは熱情録音の2年後、この録音が行われたバーモント州のギルフォードというところで亡くなっているから、この熱情の録音は彼の本拠地、(もしかしたら自宅のスタジオ?)で行われていたと思われる。 曲ごとに特徴を述べると、ワルトシュタインは「精緻な計算により、この曲のイメージを新たにした」演奏であり、熱情は「今まで誰も成し得なかったこの名曲の別の面を発見した」演奏である。 ワルトシュタインは、曲自体が前進するエネルギーに溢れており、今までの演奏家は、前進ベクトルを活かしリズム中心とするか、または同じくベクトルは維持しつつも、声部ごとに強弱をつけて、メリハリ中心の演奏だったと思う。ところがゼルキンはどちらにも与しない。第一楽章提示部は、冒頭から音量をしっかりコントロールし、重くならないよう細心の注意を払いながら、曲の構造を見せ、第二主題で冒頭主題と対比を優しく醸し出し、終結部の74小節にピークが来るよう綿密に計算されている。この楽章はベートーヴェンならではの「リズムとメロディの融合」という素晴らしい楽章だが、ゼルキンは、もちろん技巧の衰えもあるのかもしれないが、闇雲にアクセルを吹かすのではなく、重要な音をしっかり鳴らす事で、曲に推進力をもたらした。言い換えればリズムを奏でる低音部はあくまで伴奏であり、あくまでメロディを主役として、音楽に生気を与えた。第二楽章になるとまさにオアシスのような音楽を作り、第三楽章は、あえてゆっくりと、かつ7割から8割くらいの力で、大きな音楽を造った。 もしかしたらこのワルトシュタインはすごい演奏ではないかと気が付いて、過去の名演奏を改めていくつも聴いてみたが、唯一ゼルキンに比肩すると思えたのは、同じ方向を目指していたギレリスだった。特に第三楽章は、ゼルキンもギレリスもあえて力を抜くことで逆に大きな世界を見せる点で共通している。 また、ゼルキン白鳥の歌である熱情は、ワルトシュタイン同様曲想を前面に出すような演奏とは一線を画し、落ち着いた表現だが、24小節あたりからシューベルトを思わせる寂寥感が漂う。第二主題も暗い。50小節以降もあえて重い足取りだ。聴いていて、後ろ髪を引かれるような、とても悲しい情熱が聴こえる。そうか、86歳のゼルキンは、この曲に晩秋のような、過ぎ去ったものを見出したのだ。展開部終了部分で、失った情熱を嘆き、慈しむ。第一楽章コーダに至っては、あえて、リズムを遅らせるようにして、嘆きの歌を歌う。そして第三楽章の冒頭を聴けば、どれだけゼルキンが悲しみを湛えているか、聴いている心に沁みてくる。 だから、このジャケだったのか。ゼルキンは微笑みは讃えているものの、後ろは漆黒である。沈潜である。ここでもまた、ギレリス最後のベートーヴェン30、31番のジャケと重なる。熱情から哀しみを引き出したこの演奏、誰も成し得なかったこの曲の別の面を引き出したゼルキン。白鳥の歌はやはり悲しく夜空に響いた。 このディスクは類稀な存在価値を持つ名盤である。「お宝発掘」とか「The Lost Tape」なんて表現はこの名盤の価値を下げる。ましてや日本で「お宝」と言えば、あの番組の影響で玉石混合のイメージすらある。もっと堂々と「ゼルキン至高の演奏」とか「A miracle appeared」くらいの表現を使って欲しい。このディスクに文句をつけるとしたら、それくらいしかないのである。

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    げたんは  |  鹿児島県  |  不明  |  2023年11月19日

    ゼルキンはゼルキンであった。やや硬質ではあるが、年齢を感じさせず、あいまいな部分のない立派な演奏であると感じた。特に熱情の第3楽章は、遅めのテンポでじっくりと弾かれており、早く弾かれがちな昨今の演奏とは一線を画すもので、感銘深いものであった。

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