『美しき水車小屋の娘』 イアン・ボストリッジ、サスキア・ジョルジーニ
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うーつん | 東京都 | 不明 | 2020年12月12日
T.アデスとの「冬の旅」に続く「水車屋の娘」。2018年収録のあの盤の続編ゆえ早速聴いたが、期待にたがわぬ濃い内容に満足。内田光子と共演した2番目のディスクでは内田のピアノに触発され(ボストリッジの歌唱に内田が引き込まれていった相乗効果もあろう)、息をすることも憚れるような緊迫したそして劇的な水車屋が展開されていた。そこから比較すれば穏当な表現に聴こえる。しかし今回の水車屋は以前の2回のディスクより「語り」に近い孤独な若者の心象への切りこみがされていると思う。持ち前の美声を多少犠牲にしてでも若者の「変化」を語りつくそうとしているボストリッジの執念を感じてしまう。 G.ジョンソンとの1回目が若者の繊細さ、内田光子との2回目が激的な心象表現を特徴とすると、S.ジョルジーニとの3回目である当盤は若者の内面に同一化した物語性と、冷徹に若者が「壊れていく」情景を客観的に追跡するような詩の朗読が混在した、いわば矛盾を内包したようなアンバランスな危うさを感じてしまう。そこがこのディスクを聴く醍醐味になっていると考えている。1人の方が、このレビューに「共感」しています。
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