『オテロ』全曲 アントニオ・パッパーノ&聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団、ヨナス・カウフマン、カルロス・アルバレス、他(2019 ステレオ 2CD ハードブック仕様)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2020年07月27日
今や珍しくなったオペラ全曲のセッション録音だが、こういうことをやる意義はまだあると感じさせてくれる素晴らしい成果。まずはやはりパッパーノから誉めよう。スコアを隅々まで掘り起こした本当に凄い指揮。第1幕冒頭や第2幕幕切れなどは勢いに任せてもう少し速いテンポをとることも可能だろうが、彼はテンポを動かさず、巨大なスケールを実現している。このオペラ、第3幕末尾のコンチェルタートが頂点で、終幕はエピローグのように聞こえることも少なくないが、この演奏ではオテロがデズデモナを殺す場面以後がちゃんとクライマックスになっている。コヴェントガーデンのオケも今では非常に質が高く、ヴァーグナーでもヴェルディでもほとんど不満を感じないが、聖チェチーリア音楽院管を起用した効果もちゃんと出ている。 カウフマンに対しては、様々なテクニックを駆使した人工的な役作りを認めるかどうかが好悪の分かれ目。かつてのデル・モナコ、近年ではグレゴリー・クンデのようなストレートな歌い方を好む人は認めないだろう。でも私は全面的に肯定。なぜなら、原作戯曲ではイアーゴのオテロに対する同性愛もほのめかされるようなホモソーシャルな社会の人物とはいえ、この人、あまりにも直情径行、女性不信がひどく、私には理解も共感もしにくいキャラクターだから。人種差別、女性差別のせいでこのオペラが上演しづらい時代にならないよう祈るばかりだ。一方、イアーゴは、私にはその考えが手にとるように分かる実に魅力的な人物。カルロス・アルバレスは現代最高のイアーゴ歌いだと以前から思っていたが、今回はたとえばティーレマン指揮のイースター音楽祭ライヴなどに比べると多彩な表情を抑制して、ストレートに歌っている。カウフマンとの対比に配慮したのだろうが、これはこれで結構。デズデモナだけはちょっと不満。フレーニあたりから彼女はかなりしっかりした、強い女性として性格づけされてきたが、ロンバルディは若々しい声で歌の表情も美しいが、キャラとしてはどうも「お人形さん」的だ。慣例通り、第3幕のバレエ音楽は録音されていない。4人の方が、このレビューに「共感」しています。
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