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HMV レビュー
カラヤン&VPOとの録音以来、15年ぶりとなるムターのチャイコフスキー。第1楽章冒頭から最近のムターならではの濃厚な表情付けが度肝を抜きます。ロシアの哀愁というよりも、もっとロマンティックで濃密な情感に支配された表現は、美しい旋律は自らの感性の赴くまま存分に歌わせ、独奏やオケと協調して進む部分では速めのテンポでたたみ込むという、振幅の大きさが特徴的。聴きものはカデンツァで、曲に没入した集中力の高い演奏は、強靭かつスケール大きく、豊麗なヴァイオリンの音色とも相まって圧巻です。また、陰影に富んだ第2楽章「カンツォネッタ」では、消え入らんばかりの弱音で弾かれる妖艶な美しさを湛えたヴァイオリンが聴くものを魅了します。活気あふれる第3楽章でも、随所で緩急の激しい表現が聞かれ、曲全体をムターが強力に主導。まさに「女王」というにふさわしい強さと美しさを兼ね備えた名演です。
カップリングは、バックを支える夫君プレヴィンがその紹介に力を注ぐ作曲家、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。ウィーン生まれながらもユダヤ人であったため、戦争中はハリウッドで映画音楽を作曲していたコルンゴルトが、戦後、再び純粋なクラシック音楽として作曲した作品です。全編にわたって奏でられる美しい旋律と後期ロマン派風のシンフォニックな響きを特徴とするこの曲は、彼が作曲した映画音楽作品から選りすぐった素材が、あらゆる作曲技巧を駆使して移殖された傑作で、初演者ハイフェッツの愛奏曲としても知られます。
プレヴィンは1980年にピッツバーグ交響楽団を指揮してパールマンとEMIにレコーディングをおこない、さらに、1993年には、今回と同じロンドン交響楽団を指揮して、ギル・シャハムの独奏でやはりDGにレコーディングをおこなっていました。
ムターとの今回の録音は、第1楽章冒頭から映画の一場面を想起させる甘く切ないメロディを、むせかえるほどに濃厚なロマンの香気で包み込み実に見事。クールなロマンを湛えたハイフェッツとは異なるものの、後期ロマン派の爛熟美を余すところなく表現した演奏は、ハイフェッツ以来の新たな決定盤の登場といえましょう。
・チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 OP.35
アンネ=ゾフィー・ムター(Vn)
アンドレ・プレヴィン(指揮)ウィーン・フィルハーモニー
録音:2003年9月 ウィーン《4Dオーディオ・レコーディング》
・コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 OP.35
アンネ=ゾフィー・ムター(Vn)
アンドレ・プレヴィン(指揮)ロンドン交響楽団
録音:2003年10月 ロンドン《4Dオーディオ・レコーディング》
内容詳細
曲目リスト
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1ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35 (アドルフ・ブロズキーに献呈): : 第1楽章 : Allegro Moderato
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2第2楽章 : Canzonetta (Andante)
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3第3楽章 : Finale (Allegro Vivacissim)
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4ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35 (アルマ・マーラー=ヴェルフェルに献呈): : 第1楽章 : Moderato Nobile
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5第2楽章 : Romance : Andante
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6第3楽章 : Finale : Allegro Assai Vivace
商品ユーザーレビュー
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つよしくん | 東京都 | 40代 | 2011年07月31日
本盤におさめられたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、ムターによる15年ぶり2度目の録音になる。最初の録音は、最晩年のカラヤン、そしてウィーン・フィルとの演奏(1988年ライヴ)であった。当該演奏においても、ムターは決してカラヤンの言いなりになっていたわけではなく、むしろ、自由奔放とも言うべき個性的な演奏を展開していた。したがって、当該演奏については、巨匠カラヤンによる枯淡の境地をも感じさせる味わい深い名演奏とも相まって、現在においても燦然と輝く名演であると言える。これに対して、本演奏は、ムターの個性が更に深まったと言っても過言ではあるまい。ムターのヴァオリンは、いささかも線の細さを感じさせない骨太の音楽づくりが際立っていると言えるが、これによって、同曲の演奏に必要不可欠な強靭な迫力や豊麗さが過不足なく表現し尽くされていると言えるだろう。そして、同曲の特徴でもあるロシア風の民族色豊かな美しい旋律の数々を、ムターは格調の高さをいささかも不足することなく濃密に歌い抜いており、その妖艶な美しさには聴き手を酔わせるほどの抗し難い魅力に満ち溢れていると言える。また、粘ったような奏法や、土俗的とでも言うべき思い切った表情づけを、いささかの格調の高さを失うことなく随所において行っており、楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした演奏を展開している。このように、音楽のスケールは一段と大きくなるとともに、表情づけなども格段に濃厚になってきており、これはムターの円熟の至芸と言ってもいいのではないだろうか。このような超個性的なムターのヴァイオリンを下支えしているのが、夫君であるプレヴィンとウィーン・フィルであるが、ムターのヴァイオリンを巧みに引き立てるとともに、聴かせどころのツボを心得た名演奏を展開しているのが素晴らしい。他方、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲はプレヴィンの十八番であり、何度も録音を繰り返してきた楽曲ではあるが、現代音楽にしては親しみやすい旋律に満ち溢れた同曲を、ムターは格調の高さを保ちつつ、濃厚なロマンティシズムに満ち溢れた情感豊かな名演奏を展開しているのが素晴らしい。録音は本従来盤でも十分に満足できる音質であるが、ベストの音質はマルチチャンネル付きのSACD盤であると言える。各楽器の位置関係も明瞭になるような臨場感溢れるマルチチャンネル付きのSACDの極上の高音質は、本演奏の価値を更に高めるのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。4人の方が、このレビューに「共感」しています。
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ぶひ | 東京都 | 不明 | 2011年02月04日
これは好みで評価が真っ二つに分かれるかもしれない (近いところでツィマーマンのショパンP協奏曲) 濃くてロマンチックな個性的ナ演奏である。 私の感想は スマートな演奏が増える中で中々嬉しい演奏です。 二楽章の儚い美しさは特に印象的です。 コルンゴルトは曲自体が”みせる曲”なので このムターの演奏とあっている感じがします。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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影の王子 | 大阪府 | 40代 | 2010年09月23日
初演(このCDと同じウィーン・フィル)を聴いたハンスリックは「悪臭を放つ音楽」と言った。ハンスリックがこのCDを聴いたら同じことを言うかもしれない。しかし、この「泥臭さ」こそがこの曲の真骨頂だと私は思う。 「正統」的名演ではないが、聴き応えは十二分。しかし、カット無しの完全版ではないので★一つ減点。庄司もハーンも(あっ、3人ともDGだ)完全版で録音しているのに・・・コルンゴルドは完全に「演奏が曲を上回っている」。録音当時の亭主の口車で録音したのか?サン-サーンスの第3とか録音すべき作品は多くあるはずだ。なのでさらに★一つ減点。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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