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オイストラフ・ラスト・リサイタル

Friday, April 28th 2006

20世紀を代表する偉大なヴァイオリニスト、ダヴィド・オイストラフ(1908-1974)の、最後のリサイタルのライヴ録音。非常に充実したヴァイオリンを聴かせています。
 大家らしく堂々して、オイストラフの持ち味である旨みたっぷりの豊かさがたっぷりしみこんでいながら、同時にバドゥラ=スコダのピアノに感化された新鮮さも加味されているようです。この20歳近くも離れた2人が頻繁にデュオを組んでいた理由もよく分かります。とりわけシューベルトのD.574は感嘆するほどの美しさ。録音状態も極めて良好なステレオ。多くのヴァイオリン好きに歓迎されることでしょう。
 なお、ライナーノートは当日の伴奏者バドゥラ=スコダが執筆しています。(業者から日本語訳が送られて参りましたので、ご参考までに下記に掲載致します。)

モーツァルト:
・ヴァイオリン・ソナタ第33番ヘ長調 K.377
シューベルト:
・ヴァイオリン・ソナタ イ長調 D.574
ベートーヴェン:
・ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調 Op.30-2
モーツァルト:
・『泉のほとりで』による6つの変奏曲ト短調 K.360
シューベルト:
・ヴァイオリン・ソナタ ト短調 D.408〜アレグロ・ジュスト
ベートーヴェン:
・ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調 Op.24『春』〜スケルツォ

 ダヴィド・オイストラフ(ヴァイオリン)
 パウル・バドゥラ=スコダ(ピアノ)

 ライヴ録音:1974年5月29日 ウィーン、ムジークフェラインザール[ステレオ]

【ボーナス・トラック】
モーツァルト:
・ヴァイオリン・ソナタ第41番変ホ長調 K.481〜アダージョ(1972年録音)

 ダヴィド・オイストラフ(ヴァイオリン)
 パウル・バドゥラ=スコダ(ピアノ)


【ダヴィド・オイストラフと過ごした時間】
               パウル・バドゥラ=スコダ 2005年10月

親愛なるダヴィド!私はあなたに愛を告白しなくてはなりません。あなたとの出会いは私の人生で最も美しい人間的・芸術的経験の一つです。あなたが世を去られてから今30年以上になるのに、私の心の目の前ではつい昨日のことのように思われます。あなたの愛想の良い微笑、自然で自由な態度、親切、ユーモアの感覚、信じ難いチェスの試合、何よりもまず、すばらしい、最高の、感動的な演奏、それは常に高貴で、決して感傷的でも効果をねらったものでもありませんでした。あなたがヴァイオリンを当てる堂々としたしぐさがまだ目に浮かびます。

 私たちは最初に共演する前から既に出会っていました。ダヴィド・オイストラフが大成功を収めた最初のアメリカ演奏旅行と、その後オイストラフのオーストリアでの最初の演奏会(1961年ウィーンでのデビュー)です。ウィーンの音楽家たちが落ち合う有名な場所はドブリンガー楽譜店で、そこでほとんどの楽譜やスコアを見つけることができます。彼が入り口の前で「あなたのモーツァルトの楽譜をたった今買いました」と(あなたのドイツ語は完璧でした)私に話しかけたのをまだはっきりと思い出します。私は驚いて、この楽譜はピアニストのために書かれたのではないかと言うと、彼独特の微笑を浮かべて「でもそこにはヴァイオリニストにとっても興味深いものがたくさんあります!」と答えました。

 1961年3月15日のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との演奏会は私にとって忘れ難いものです。プログラムには3つのヴァイオリン協奏曲がありました。まず父と息子がバッハの二重協奏曲ニ短調で非の打ち所のない共演を行い、イーゴリのもっと明るい音は父のビロードの音と、ほとんど気づかない程度の対照をなしていました。その後イーゴリがベートーヴェンの協奏曲の卓越した演奏を行い、最後にダヴィドがブラームスの協奏曲を聴いたことのないほど美しく演奏しました。
 1970年にオイストラフとモーツァルトのソナタの夕べを開催したいかという電話を受けた時、私の喜びはどんなに大きかったでしょう。もちろん約束しましたが、巨匠が長年の卓越した伴奏者フリーダ・バウアーをこのプログラムに選ばなかったことにすっかり驚きました。後にダヴィドは、これらのソナタは「ピアノとヴァイオリン」用に書かれたため、「真の」対話の相手を探していたから、モーツァルトのためのピアニストとして私を望んだのだと説明しました。明らかにオイストラフは共同の練習のために丸1週間を希望していると知らされ、その条件に私は大喜びで同意しました。集中的な、細部にまでわたる練習に関しては、特に、完全主義者の偉大なチェリスト、エンリコ・マイナルディと既に経験を積んでいました。マイナルディとの練習はたとえば次のように進みました。6小節目の後「親愛なるバドゥラさん、左手のcisは大き過ぎました。」15小節目の後「このフレーズは十分に歌っていません。クライマックスは(彼は歌いました)やはり14小節で、13小節ではありません!その上、あなたの左手は私のチェロより強いです!」29小節目の後「でも、でも、チェロ・ソナタでは、チェロがピアノに圧迫されるほどフォルティッシモが強くてはいけません!…」

 要するに、私はすべてを覚悟していました。オイストラフと私はまずソナタ変ホ長調KV481を練習しました(これは録音としては残念ながら、1972年ウィーンでの総練習の短いけれど美しい断片しか保存されていません)。周知のように、主題はまずピアノで演奏され、それからヴァイオリンで反復されます。ダヴィドが私が弾いたのより少し速く弾き始めたのに気づき、もちろん彼のテンポに従いました。反復の所に来た時、私はいくらか遅く始め、それに彼は微笑で答えました。第1楽章が終わった後、私はマイナルディ風の注釈を待ちました。その代わりにダヴィドは「今度は第2楽章を弾きましょう!」と言いました。互いに譲り合い、権威の痕跡もなく、「そう演奏しなくてはならないのです!」と言いました。このように進展したのです。テンポ、音楽の内容、議論の余地のあるいくつかの装飾音の演奏について討議しました。けれども、ニ長調ソナタK.306のフィナーレの大変扱いにくいカデンツァにおいても決して、骨の折れる練習は一度もありませんでした。そこには、確かに一致した作業を必要とする共通の的確なルバートがなくてはなりません。オイストラフのユーモアは素敵でした。大規模な変ロ長調ソナタのロンド主題が復帰する前の特色のある行進曲の動機は、彼の若い時のロシアの行進曲と同じだったので、彼の微笑を誘いました。

 それで、おおよそ2日の練習の後、練習することがもうほとんどなくなりました。私たちはお茶を飲み、チェスをし、音楽にかかわるとは限らない現実の個人的な問題について語り合いました。1970-71年当時、ソルジェニーツィン事件が新聞で報じられていました。ソルジェニーツィンは、彼より前のパステルナーク同様、ノーベル賞を受賞することを許されませんでした。ソルジェニーツィンという名は最後の音節を強調するべきか、最後から2番目かと尋ねると、(私が後にとても好きになった)ずるい微笑を浮かべて、「プーシキンと言うのが一番いい!」と答えました。

 ザルツブルクのモーツァルト週間における1971年1月29日の私たちの最初の演奏会は大成功で、続いて私たちはウィーン、ケルンテン(訳注:オーストリア南部の州。英名カリンティア)の夏の音楽祭、パリ、モスクワなどでの演奏会に招かれました。一緒の長い旅行によって意見を交換する機会を得、更に親密になりました。20世紀のいかに多くの重要なヴァイオリン作品が彼のために書かれたでしょうか。プロコフィエフについて彼は、この人はチェスが大好きだが、作曲家としてほどうまくないと語りました。「最後の一勝負で彼を勝たせてあげました。そうしないと彼はそれを分析して自分の欠点を探すことに一晩を費やしますから。」ソナタかヴァイオリン協奏曲に印刷ミスがあり得るか、AsとAのどちらの音が鳴るべきかという問題に直面した時のプロコフィエフとショスタコーヴィチとの対照についての彼の記述は貴重です。ショスタコーヴィチはピアノの所へ行き、その場所を調べ、それから2度、3度弾いて、「Asだと思う」と言いました。これに対してプロコフィエフは、その場所を注視し、躊躇せずに「Aのはずだ!」と言いました。けれどもオイストラフはまばたきして、「でも正しい音はAsでした!」と私に言いました。

 ケルンテンの夏の音楽祭における1972年8月30日の私たちの演奏会は、オシアッハの町の美しいバロック様式の司教座聖堂で行われました。空の聖堂での総練習の間に突然ダヴィドは「だれも私たちを見ていませんか」と尋ねました。「確かに、ここには私たちだけです!」それから彼は説教壇に上り、神のためにソロで弾き始めたのです。
 私たちの共演の絶頂は1973年4月12日モスクワでの演奏会でした。オイストラフが住んでいたここで、私は彼と妻タマラから豪奢なもてなしを受けました。何度も昼食や夕食に招かれただけでなく、彼は自分の車で総練習に私を連れて行くとさえ主張しました。その演奏会は、比較的年配のモスクワの音楽愛好家たちが今でも熱中して語る出来事となりました。けれども私にとって最も印象深いのは、明らかに、比較的うまく克服した心筋梗塞の後の予防手段として、夕食前に6個の様々な錠剤を飲んだ時の短い独白でした。「ねえ、パウル」と彼は言いました。「医者は、私がヴァイオリンの演奏や指揮をやめなければ長くは生きられないと言いました。でも、音楽のない人生が私にとってどんな意味があるでしょう。それなら早く死んだ方がいい!」

 しかし、積極的な演奏活動の緊張に、残念ながら更に授業が加わりました。ソヴィエトの人たちは巨匠に一息つく間も与えませんでした。オイストラフは実際卓越した教師でした。体力を消耗させる旅行から帰ってすぐ、彼は生徒たちのために尽力しました。私がモスクワに滞在した間に、ダヴィドのマスター・クラスの生徒たちの演奏会が音楽院の小ホールで行われ、それは最高水準にありました。最後に若いギドン・クレメルが、レオポルド・アウアーの恐ろしく難しいヴァイオリン独奏曲を魅惑的な名人芸で演奏しました。この演奏会に感激して、私はホテルに歩いて帰りました。この演奏会の後にオイストラフは、私をホテルに連れて帰るために音楽院の廊下をたっぷり30分探したと翌朝聞いて驚きました…

 それぞれの演奏会のための練習期間の予定は短くなりました。パリの演奏会のためには2日しかありませんでした。けれども、1972年夏ザルツブルク近くのクレスハイム城では最良のレコード録音とヴィデオ録画ができました。その時、3枚目のLP用の私たちのプログラムが15分ほど短いことがわかりました。「ところでパウル、何を演奏しますか。美しいト長調ソナタをほかにすぐ演奏しましょう!」「練習なしで?」「ええ、練習なしで!」

 ちょうどこのヴィデオ撮影の時、何か不都合な事が起きました。3時間ほどの録画の後、製作者たちの驚いた叫びを聞きました。何が起きたのか。音響専門家が録音帯とフィルムを確実に同時にするボタンを押し忘れたのです。パイロットと呼ばれるこのスイッチがないと、音と映像がもはや容易に一致しません。(ただ4分の1秒でも悲惨な結末になります。ピアノが鳴っている間にピアニストの手はひょっとすると空中にあるかもしれません。)私たちはとても良い演奏をしました…その後ダヴィドは大変冷静に言いました。「あなたたちの機械のパイロットが役に立たなくても、飛行機のパイロットの故障ほどは悪くありません。すぐもう一度演奏しましょう!」そして驚くべき事が起き、私たちは2回目には初めよりもっと美しく演奏したのです。
 私たちの芸術家としての友情についてなお多くを語ることができます。オイストラフの妻タマラの心に触れる親切な配慮は忘れられません。ダヴィドの健康を大変案じていたので、演奏会の間決してホールに行かず、彼のもっとそばにいるために舞台の後ろにとどまっていました。

 ウィーン・モーツァルト週間における1974年5月29日の私たちの演奏会に、彼は純粋にモーツァルトだけのプログラムではなく、それまで別の伴奏者としか演奏していなかったシューベルトとベートーヴェンの作品を希望したのは、特別な栄誉と感じます。非常に長く、心から歓迎する拍手(このCDでは短縮されています)だけでも、ウィーンの聴衆がいかにオイストラフに愛着を持っていたかを示しています。それが私たちの最後の共演だけでなく、そもそもダヴィド・オイストラフの最後のソナタの夕べとなる運命だったことをだれも予想しませんでした。アムステルダムでブラームスのプログラムを指揮して大成功を収めた後、10月24日に心臓発作で死去しました。多くの苦痛に耐えたこの心臓は彼に仕事をすることを許しませんでした。それは私にとってだけでなく、音楽界全体にとって喪の日でした。しかし、彼が望んだようにこの世を去ったことには、何か慰めを与えるものがあります。彼の魂の平安を!

ユーディ・メニューインは彼について次のように書きました。
「私は最初に会った瞬間から彼を好きでした。彼はすべての人の中で最も親切で、温情があり、信頼できる人であるだけでなく、更に控え目で賢かったのです。決して彼は自分自身以上のものや自分以外のものを望まず、決して他人より賢く見えることを望まず、常に他人を率直に迎え、他意を持たず、自然で、虚飾がありませんでした。真の人間でした。」(訳:西川留美子)
                                

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