許 光俊 「超必見、バレエ嫌いこそ見るべき最高の『白鳥の湖』」
2006年4月21日 (金)
特別寄稿 許光俊の言いたい放題 第10回「超必見、バレエ嫌いこそ見るべき最高の『白鳥の湖』」
私の知る限り、クラシック・ファンの、特に男性の多くはバレエに興味を持たない。理由はいろいろあるだろうが、ひとことで言えば、目より耳の快楽を喜ぶ人々だからだろう。
実は、私もクラシック・バレエのほとんどが嫌いである。超一流はよい。素直にすごい、美しいと思わせてくれるから。が、二流、三流のものなんて、グロテスク、醜悪、滑稽・・・とまで感じてしまうのだ。しょせん本質を理解しないままのマネっこに終始しているお嬢さんのお稽古ごとを連想してしまうのだ。
また、一般的なバレエの鑑賞態度にも問題がある。細かなテクニックのいちいちに感心してみたり、文句を言ってみたり。おまえらは、オリンピックの審査員か? そのくせ、ドラマのキモにまったく注意を向けない、完全に末端肥大的鑑賞に終始しているのだ。 このふたつが重なり、「私、昔バレエを習ってたの」女性たちが「じょうずー!、きれいー!」と楽しむのが普通のバレエ上演なのである。
だが、最近渋谷オーチャードホールで上演されていた「白鳥の湖」は絶対に違う。これは、今まで私をはじめ多くの人々がバレエに対して漠然と抱いていた違和感を完璧に払拭してくれる上演だ。
まず、基本的な解釈がきわめてしっかりしている。気の弱い王子が、宮廷という閉じられた世界で窒息しあえいでいる。しかも母親が強すぎ。ああ、外の世界に出てみたい。
そこへ登場するのが白鳥なのだ。この美しい白鳥は男によって踊られる。もちろんそこに同性愛的な感覚はある。が、なぜ男が、それもなよなよした王子様タイプではないアダム・クーパーが躍るのか。それはこの白鳥こそ、王子が渇望する自由のシンボルであり、厳しいルールの外への逸脱であり、エネルギーの発散であり・・・だからだ。よって、優雅なだけのバレリーナではダメ。王子様タイプで上品なだけの男性ダンサーでもダメ。困難と戦えるだけの力強い男が自由奔放に踊らねばならないのだ。それだからこそ、王子は白鳥を見て激しく憧れるのである。
最後のシーンでは、壮大で悲壮なチャイコフスキーの音楽とシンクロして感動的なエンディングが訪れる。普通のクラシック・バレエの振付けでは、ここが超つまらなかった。音楽はどんどん高まっていくのに、踊りがまったくついていかなかったためだ。ましてや、最後「王子様と白鳥はいっしょに天国の幸福へ旅だっていきました」と馬車でも登場した日には、子供だましのような愚かしさに激しく罵りたくなった。けれども、この上演では、音楽に合わせてものすごい葛藤が表現される。そして、驚きの結末!
サブ・エピソードも現代風になっていて、とても楽しい。私がこのところ熱中しているオペラのペーター・コンヴィチュニー演出みたいだ。 (きょみつとし 慶応大学助教授、音楽評論家)
アドヴェンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズ/チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」
ADVENTURES IN MOTION PICTURES/TCHAIKOVSKY'S SWAN LAKE
1. プロローグ:王子の寝室
2. 第一幕第1場:同じく寝室
3. 第一幕第2場:宮殿の大ホール
4. 第一幕第3場:同じく大ホール
5〜9. 第一幕第一幕第4場:国立劇場
10. 第一幕第5場:王子の寝室
11〜12. 第一幕第6場:ソーホーのクラブ
13〜14. 第一幕第7場:クラブの外
15〜23. 第二幕:セント・ジェームズ公園
24〜37. 第三幕:宮殿の舞踏室
38〜39. 第四幕:王子の寝室
40〜44. エピローグ
配役 白鳥:アダム・クーパー
王妃:フィオーナ・チャドウィック
王子:スコット・アンブラー
報道官: バリー・アトキンソン
王子:スコット・アンブラー
王子のガール・フレンド : エミリー・ピアシー
演奏 ニュー・ロンドン管弦楽団
指揮 デイヴィッド・ロイド=ジョーンズ
映像監督 ピーター・マムフォード
●'99年トニー賞受賞、'96年ローレンス・オリヴィエ賞受賞作!
●収録:1996年 ロンドン、ウエストエンド公演
●監督・振付・脚本 :マシュー・ボーン
●美術 :レズ・ブラザーストン
●収録時間:117分/カラー
●作品紹介
世紀末の今、現代人の共感を呼ぶもうひとつの「白鳥の湖」がバレエ史上に残るべく誕生!クラシック・バレエとしては異例のウエストエンド(ロンドン)進出、ロングランを記録しました。また、'98年10月8日から'99年1月末までの4ヶ月間の期限付き公演で、ミュージカルの大プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュ(代表作に「キャッツ」など)による久々のブロードウェイ作品として大成功を収めました。
その公演に関して、地元ニューヨーク・タイムズ紙は、珍しいことに劇評とダンス評を同時に載せ、芸術欄の第一面を飾りました。劇評では『良質な無声映画と同じ感動を与える』、『クーパーのスワンは肉感的だが、肉欲を超えている。夢に現れる抽象的で純粋なエロティシズムを体現している』と絶賛し、ダンス評では『振付は賢く、のびのびしていて、洗練されたエンターテイメントだ』と誉めちぎっています。
本公演の目玉、王子の理想の化身“白鳥”役を当時英国ロイヤル・バレエのアダム・クーパーが妖しく演じています。彼はこの公演でマシュー・ボーンと意気投合し、海外公演でこの役をやりたいがために英国ロイヤル・バレエを退団し、この役に打ち込みました。ブロードウェイ公演でも、『彼のダンスを見ているだけでもこの舞台の価値がある』と絶賛されました。
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2.音声は2ストリーム。Dolby Digital 5.1ch サラウンド音声も追加。
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*監督・振付師:マシュー・ボーンのインタビュー掲載ブックレット付き(WMJ)
⇒評論家エッセイ情報
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