MARILYN MANSONのあの日、あの時9

2012年7月27日 (金)


『MECHANICAL ANIMALS』とは実はこういう作品…
文●有島博志(GrindHouse)

 絶版で極めて入手困難ゆえ、こう書いてもなんの参考にもならないかもしれない。下記に紹介する『MECHANICAL ANIMALS』('98年)からの2ndシングル『I DON’T LIKE THE DRUG(BUT THE DRUGS LIKE ME)』2種それぞれのBサイドには、タイトル曲のエレクトロ・リミックスが計4パターンも収められている。当時マンソンがインダストリアル・ミュージックの、ある意味さらなる進化・成長・発展形とも言えるエレクトリック・ミュージックに傾倒していたことが窺える。うち1曲は、当時飛ぶ鳥を落とすかのような勢いを放っていた元BLACK GRAPEで、プロデューサー、リミキサーとしてケタ違いのセンスのよさを発揮しまくっていたダニー・セイバー・リミックスだ。

MANSON'S SINGLE COVER GALLERY

「I DON’T LIKE THE DRUG(BUT THE DRUGS LIKE ME)」 (1998)
『MECHANICAL ANIMALS』からの2ndシングル2種。赤文字がパート1、黒文字がパート2で同日発売だった。前シングルと同方向のアート調のジャケ。表題曲はけっこうショッキングなタイトル、歌詞の内容ながら曲調はめちゃキャッチーで、さらなる世界的大ヒットに貢献した。絶版。

 で、実は『MECHANICAL ANIMALS』は、大御所エレクトロ・グループ、THE CHEMICAL BROTHERSの前身DUST BROTHERSと結託し、曲作りを行い、制作も一緒にやり、数曲作業も終えた、と報道もされた。が、しかし、それらは結局世に出ることはなかった。なんらかの理由で、両者の関係が途中でとん挫してしまったのだ。よって今作はRED HOT CHILI PEPPERSSOUNDGARDENHOLEほかとの仕事で高名なマイケル・ベインホーン、NINE INCH NAILS人脈に名を連ねるショーン・ビーヴァン、そしてマンソンの3者共同プロデュース作となった。THE SMASHING PUMPKINSのビリー・コーガン(vo,g)が音楽的方向性について数多くの助言をした作品とも言われている。また、ジム・ザムの後任に迎えられたジョン5(本名:ジョン・ロウリー)のMARILYN MANSONの一員としてのデビュー作にもあたる。ジョンは実はマンソンのオーディションを受けるまでは、JUDAS PRIESTロブ・ハルフォード(vo)が一時的にやっていたリーダー・バンド、2wo(twoと読む)の構成員だった。

 ご存知のとおり、今作は連載前回にも書いたように“3部作”の第二部だ。全体を織りなすストーリーは発売順とは逆の、続く第三部『HOLY WOOD(IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』(2000年)から始まり、今作、そして前作『ANTICHRIST SUPERSTAR』('96年)で締めくくられるという一風変わったものだ。この頃バンド名は、“MAR1LYN MAN5ON”と英文字アルファベットに数字を組み入れたもので表記された。

 今作は、明らかに前作とは音楽的方向性も作風も異なる。託され、デフォルメされた世界観も180度違う。前作は痛み、苦しみ、怒りなどの“負の感情”を攻撃性をむき出しにしたアプローチに乗せて炸裂させたけど、今作にその攻撃性はない。宗教的なテーマを持たせた歌詞も姿を消している。初期DAVID BOWIEROXY MUSICからマンソンが浴びた70’sグラム・ロックの影響を素直にあらわにし、どこかロック・オペラっぽくもあるのが今作で、当時のロックの音作りのトレンドの、一歩、イヤ一歩半先に進んだ、実にモダンでややフューチャリスティックな内容だ。そこに、ひとつの“美学”すら感じられる。個人的には、前作と肩を並べるくらいのフェイバリット作。発売当初、正直連日/連夜聴いていたほど。「The Dope Show」「I Don’t Like The Drugs(But The Drugs Like Me)」「Rock Is Dead」といったわりとノリのいい楽曲がシングル・カットされ、ヒットしたけど、自分はむしろそれらとは趣の違う、スロー、もしくはミッドテンポめでダークでメランコリックな「Great Big White World」「Mechanical Animals」「Disassociative」「Fundamentally Loathsome」「Coma White」が好きだ。意外かもしれないけど、1番好きなのは物悲しい“半”アコースティック・チューン「The Speed Of Pain」だったりする。連載前回に書いた対面取材で、マンソンは今作についてこう語っている。

「新作の音楽は、これまでよりもっと周囲から攻撃を受けるようなものだと思う。音楽的にも歌詞の面でも。孤独の寂しさを表現しているんだ。言うなれば空虚感を表しているっていうかね。前作が自分にとっての、天国から追放されたルシファーのように、神の恩恵からの追放を意味するものだとしたら、今作はいま地球で起こっていることを示すもの。社会に適合させようと人間は無感覚にされる。人間にはさまざまな感情があるのに、社会が人間を麻痺させようとしている。オレはそれに立ち向かっているんだよ」

 マンソンが創造上のキャラクターを二役担っているのも、今作の特徴だ。ひとつはマンソン自身を反映させたアルファ。もうひとつは、グラム・ロッカーで両性具有のエイリアン、オメガ(今作のジャケをよく見るとわかるけど6本指)。全14曲中7曲はオメガと彼が率いるTHE MECHANICAL ANIMALSの視点で歌われ、あとの7曲はアルファの視点で歌われる。そういったことから、CDブックレットにはオメガの楽曲の歌詞と、アルファの楽曲の歌詞がわけて掲載されている。

 ジャケや歌詞の内容に不適切な表現がある、という理由から、アメリカ三大小売店であるK-Mart、Wal-Mart、Targetは、今作の店頭販売はしないことを発売1ヵ月前の時点ですでにNothing RecordsとInterscope Recordsに通達していた。それでも、今作は発売初週で23万枚弱を売り、USチャート初登場1位を奪取した。ここに、当時のMAR1LYN MAN5ONの人気のすごさと、期待のデカさがもろに出ている。本国以外で初登場トップ10圏内に飛び込んだのはイギリス、オーストラリアを含む9ヵ国で、日本はオリコン総合チャートで25位だった。

 ジンジャー・フィッシュ(ds)が単核白血球増加症を発症したため開始が当初の予定より遅れたものの、今作発売に伴うヘッドライン・ツアー、Mechanical Animals Tourは’98年10月25日のUS中西部カンザス州ローレンスよりスタートした。同月31日のミネソタ州セント・ポール公演を観るべく、再びマンソンに対面取材するべく日本から現地に飛んだ。そこでは思わぬハプニングが待ち構えていた…。



MARILYN MANSON 関連タイトル!

KILLING JOKE / 『PANDEMONIUM』('97年)
今年5月開催予定だったイベント、MOTORAMA01参戦で4度目の来日をする予定だったけど、直前に来日キャンセルをしたKILLING JOKE。’80年に『KILLING JOKE』でデビュー。“ポスト・パンク・ロック旋風の旗頭”として頭角を現し、後のゴシック・ロック、パンク・ロック、メタル、インダストリアル・ミュージックなどに絶大な影響を及ぼした、まさに“重鎮”だ。長いキャリアにおいて何度か活動休止、または解散を繰り返してきた彼らだけど、今作は’90年からの4年もの活動休止を経て発売された通算10枚目だ。音楽性がそれまでとは打って変わってグッとエレクトロに傾斜し、ケヴィン・“ジョーディー”・ウォーカーのギターに初めてメタル的エッジとヘヴィネスが伴った作品で、発売時かなり話題になった。インダストリアル・メタルに近いヴァイブ、テイストを濃厚に放ち、そのファン層に特に愛聴された。タイトル曲をはじめ「Exorcism」「Millennium」、テクノ×メタル的チューン「White Out」とカッコいいチューンも多い。今作もまた、彼らの“名作”の1枚だと思う。聴くべし聴くべし!
文●有島博志(GrindHouse)

MARILYN MANSON 最新作ニュース

■■■ 有島博志プロフィール ■■■

 80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
※ ※ ※ ※ ※

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