1961年、当時『ニューヨーク・タイムズ』誌でスタッフ・ライターとして働いていたロバート・シェルトンは、初めてディランを観て記事を書いた。それを読んだコロンビア・レコードが契約をオファーして、伝説が始まる。この約900頁の大著は、ディラン本人はもとより、その家族や友人、ガールフレンド、マネージャーなど、多くの関係者へのインタビューを交えつつディランの素顔に迫ったもので、執筆に20年もの歳月をかけ、1986年に発表された。その待望の翻訳版だ。コーヒー・ショップでギターを弾き語っているディランを観る客は、その歌よりも曲間のウィットに惹かれていたなど、現場にいた人ならではの描写が生々しい。ディランの信頼がいたるところに感じられるものの、ジャーナリストの筆者はつねに一定の距離を保つ。伝記の決定版。(CDジャーナル Book Review)