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Daisuke Ashihara

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ワールドトリガー 1 ジャンプコミックス

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  • ★★★★☆ 

    みぎももチャイ  |  東京都  |  不明  |  27/August/2013

    「賢い犬リリエンタール」の作者によるSFアクション…かな。 個人的には前作で生まれた期待を裏切らない面白さだが、ひいき目で見ても好悪がまっぷたつに別れる作品であり、その「ジャンプらしくなさ」で好き派をやきもきさせる点もリリエンタールと同様である。 「ある日突然、異次元よりの大型甲殻異生物の侵略を受けた街を舞台に、異生物討伐組織の見習いである主人公オサムが、異次元出身を名乗るもう一人の主人公ユーマと出会って…」というのがストーリー。 アクション漫画の面白さというのは敵を倒した時のカタルシスであろう。 登場人物を読み手の感情移入させる側を味方・させない側を敵に仕立て、敵の憎らしさや強さを描き、味方をピンチに陥らせて読み手に鬱憤を溜めさせてから主人公が圧倒的な力でばったばったと敵を粉砕する。読み手はその強い主人公に自分を投影してすかっとする。 「ワールドトリガー」にはこれがない。というよりできない。 この漫画の面白さはキャラ同士の価値観がぶつかり合った時に読み手に迫る気づきである。その気づきは作品の枠をとびだして読み手である自分自身の 価値観について再考を迫ってくる。(狭い鑑賞経験からではあるが、映画「ダークナイト」のジョーカーから受ける問いかけに同じようなものを感じる。) その気づきは従来のジャンプ型ヒーローの言動がいかにカタルシスに向けて都合よく非現実的かという批判にまで踏み込みかねない。 たとえば1巻では「みんなを守る!」という理想に燃えるオサムは実力がまったく足りないのにも関わらず異生物襲撃の場面で矢面に立とうとする。 他のジャンプ的作品の場合、この「自分より強い敵が目前にいる」はピンチの表現でしかなく、現実世界で取られるような合理的な解決策が描かれることはまずない。 そういった”言文不一致”な漫画文法を深く考えずにやりすごすことにいつしか慣れきっていたため、自己の生存優先とする現実主義者であるユーマのいう「…いや もう一回言うけど オサム死ぬぞ?」が非常に新鮮だった。自分は漫画の言文不一致さに鬱憤を溜めていたのだなと気づかされた瞬間だ。 1巻はその他にもユーマが異文化出身であるがゆえの齟齬がくりかえし描かれる。カタルシスを得られるかどうかはその齟齬を面白いと感じられるかどうかにかかっている。 要するに、この漫画を面白いと思う人は普段からこちゃこちゃ小難しいことを考えるのが好きな人に限られるように思う。つまり大人だ。 2巻では討伐組織内の社内政治が描かれる場面があることになるが、ジャンプがターゲットとするちびっこ受けがどうかと考えてみると、いろいろと落ち着かない気持ちにさせられる。 この漫画の欠点も挙げると、作者が悪い意味で「厨二的でない」点である。 作品を読んでいると、勝手に作者はこういう人に違いないという性格が頭に浮かぶ。おそらくは恬淡としていて、論理的で、ハイテンションになることが滅多にないような人ではないのか。 そういう邪推が自然に浮かぶほど作品にもナルシシスティックなコマがなく、押し流されるような勢いや情熱といったものを汲み取りにくく、ケレン味が足りない。キャラが「見得を切る」シーンが少ない上に、他の漫画と比べるとテンポが違うところに置いてある。 キャラクターの造形にもこのテンションの低さが現れている。他作品にあるような「かっこよいだけの造形」がない。 なので画面がたいへん地味である。 単純なデッサン力としても人の身体が固く、関節まわりが苦手なように見受けられる。異生物のほうが崩れがないぐらいである。 同じようにデッサンが苦手と見受けられる「ベルゼばぶ」は続いているのだが、弱みは一つ一つなくしていってほしい。 リリエンタールよりも長く続いてほしいものである。

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