Dear Tokyo

ヒットメイカー、笹路正徳プロデュースによる新生渡辺香津美の作品。オーケストラをバックにアコースティックな魅力一杯の香津美の新しい魅力を感じる作品。映画『ディアハンター』のテーマ“CAVATINA”、バートバカラック作の“ワン・レス・ベル・トゥー・アンサー”、そして、香津美ファンにとっては忘れられない思い出の作品“ロンサム・キャット”の「2001年版」が聴ける。この曲ではかつての若々しさに変わって、円熟したメロディの美しさが光る。
　今までの香津美ファンのみならず、多くの音楽ファンに聴いて欲しい作品。
　参加ミュージシャンは、プロデューサーの笹路正徳(kb)、山木秀夫(ds)高水健司(b)数原晋(tp)中川昌三(fl)ほか、渡辺香津美＆KAZUMI BIGBANDとフルオーケストラとの“スタジオ一発録り”という「ジャズ的な」録音方法から生まれたテンションが、アルバム全体を覆うハイレベルな作品に仕上がっている。
　収録曲は、前述作のほか、ミンガスの“グッドバイ・ポークパイ・ハット”、ローラ・ニーロの“エリズ・カミン”、そして、映画ファンお馴染みのフランシス・レイの『白い恋人たち』から“デサント”、さらに笹路のオリジナル作品“フォー・トウキョウ”が最後に収録された。
　特に最後の曲は、サウンド・メイカー、笹路の才能を感じさせる、メロディアスなメロディが心地良い作品。香津美のギター、そして、アンサンブルと相まって、素晴らしくロマンティックなサウンドに仕上がっている。さすが、笹路＝渡辺という日本が誇る最高のレベルの2人の邂逅が生んだ演奏だ。
　香津美のオリジナル曲“ボナペティ”は、フレンチな雰囲気を感じさせるギターのオーバーダビングによるデュオ。朝食のテーマ・ソングにしたくなる軽やかで清々しい作品だ。

★初SA-CD化