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細川俊夫 (1955-) レビュー一覧

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商品ユーザーレビュー

20件
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  •   舞台は原発の燃料棒を思わせる無機質に光るオブジ...

    投稿日:2020/05/24

      舞台は原発の燃料棒を思わせる無機質に光るオブジェが上から吊り下がるシンプルなつくり。歌は前作「松風」と比べてもかなり直情的で激しい表情付けがされている。地震などの衝撃を、家族を亡くした感情の揺れを伝えるためだろうか。打楽器による激しい出だしも今までにないやり方。動きも抑制され逆に激しい歌いぶりが余計に目立つことになる。 母親クラウディア役の表情は能の物狂いにも似た感じで痛切にその哀しみを突き付けられた。クラウディアの義姉ハルコ役の藤村実穂子も役柄にはまっていた。人間の悲劇が繰り広げられる中、それでも海は静かにそこにある。最後はみな海のかなたに目線を送りながら様々な想いを心にひめ、幕は下りていく。   東日本大震災、その津波によって引き起こされた原発事故…現在に生きる日本人が決して忘れることができない悲劇。 福島、隅田川…突然の悲劇で子供と離ればなれになってしまった母親の哀しい狂気。  こういう括り方は不謹慎かもしれないが、悲劇であれ芸術であれ日本という地をきちんとした形で発信し理解の一端にしてもらうことは必要なことだと思う。オペラという形式で細川俊夫が伝えた「日本」。日本という国が、大震災のあった地であり、原発事故のあった地であり、「彼岸」という祖先または故人と交流する文化風習を持つ地であり、「能」という芸術が育まれた地でもある、ということを広く知って考えてもらえるようになればよいが。   2020年に当盤を入手し視聴したためかもしれないが、放射能を防ぐ防護服のシーンなどは本年の病院内で防護服を着用し苦闘する方々のシーンにかぶって見えてしまった。2011年のあの事故だけでなく2020年に起きている災厄にも通じるような感覚をもって観ることにもなるかもしれない。

    うーつん さん

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  •   ヴィヴァルディと細川俊夫、バロックと現代音楽が...

    投稿日:2020/04/07

      ヴィヴァルディと細川俊夫、バロックと現代音楽がこうも相性が良いとは思わなかった。絶妙なマリアージュ!   ヴィヴァルディの本拠地であるヴェネツィアを触媒として両者の音楽が交差する面白さ。ヴェネツィアの入り組んだ水路や曲がりくねった小径を彷徨い歩く私たち。ふと振りむいたり、はたまた水路の向こうから、それとも道の曲がり角からヴィヴァルディが現れてくるような錯覚を楽しませてくれる細川俊夫の曲づくり。   ヴィヴァルディの活気を感じさせる音楽は往年の、活況を呈したヴェネツィアの人々の往来を想像させてくれる。時代と町と人間とがクロスした面白い企画で愉しめる。バロック好きな方、現代音楽に興味ある方の両方におすすめし、その交差を楽しんでもらいたい。

    うーつん さん

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  •    細川俊夫の新譜は「庭gaeden」に題をとった作品...

    投稿日:2019/11/20

       細川俊夫の新譜は「庭gaeden」に題をとった作品集。いつもの細川節で強さと深さ、そしてしなやかさを併せ持った音楽が終始している。庭にちなんだ曲が多くあるのは知っているがこうしてまとめて一枚に収まっているのは初めてではないだろうか。 そしてこのディスクを聴いていてふと思い出したのは、武満徹も庭に題をとった曲を多く書いていたなあ、ということ。両氏の間では少なからず交流があったと記憶しているが、「庭」についての話がでたことはあるのだろうか?    武満徹の庭に関した曲への私の印象は絵画的・文学的であること。色彩感があり、雨や空気の湿り気のような感覚も感じられる面白さが好きである。 対して細川俊夫の本作で感じるのは能舞台。そこで演じられるのは水墨画のような色合いで秋の寒さを感じるような舞い。両氏の著作や対談集を読んで、二人とも日本らしさを意識的に表現するタイプでないと解釈している。「日本らしさ」をあからさまに出してきたり海外受けするために日本を「ダシ」に使うことを戒めている二人だが、それでもその根本には日本の文化や歴史思想が離れ難くついている気がする。    両者の庭の曲を聴いて私がイメージするのは日本の庭園であり、その空気。バラの花がかぐわしい西洋の庭ではない。バックボーンとして古来からの日本文化や芸術思想、精神構造が本人の意思に関わらず出るのであろう。その表出の方向は異なるとしても。   だからこそ世界中でTakemitsu・Hosokawaが「日本出身の、独自の作風(声)を持つ作曲家」として聴かれるのだと思う。特に(テレビで面白おかしくやる類の)日本自慢をする気はないが、その文化に尊敬の念とプライドを持つべきであろう。その意味で当盤は、作曲者である細川俊夫、そして武満徹の二人の関係や役割、作品思想について考えるよいきっかけになった。       

    うーつん さん

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  •  1999年、ハノーファー現代音楽祭におけるライヴ収録...

    投稿日:2019/06/01

     1999年、ハノーファー現代音楽祭におけるライヴ収録とのこと。細川俊夫の作品も作曲されたのがたまたま現代というだけで、伝統楽器のために作られ、演奏されると「ゲンダイオンガク」に聴こえないのが面白い。ほかの収録曲も新鮮で、現代音楽祭の聴衆にも「フレッシュな音楽」として聴こえるのだろう。     日本では絶滅危惧種的なローカルな音楽になっており、かく言う私も進んで聴きに行くとは言えない。これらの曲もこのようにして聴くと、なるほど実に面白い。三味線でも琴などの伝統楽器による音の粒立ち、強靭さにも感心させられる。    現在の日本でほとんど聴かれない音楽、使われない楽器と唄を聴くために海外の現代音楽祭に行かないと耳にできないというのは日本人として少し考えさせられる。「新しい」「古い」というカテゴリーで区切り、「古い」から聴かない・目を向けない考え方に反省を促す教材でもある気がする。たとえ作られた時期が古くても、それは「作品が古い」と同義にはならない。当盤の演奏後、聴衆が送った拍手がそれを物語っている。  個人的な意見だが、今のニホンで「最新のミュージックシーン」として湯水のごとく流されていく音楽よりも音楽が締まっており、メッセージは強いとさえ思う。

    うーつん さん

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  •  笙のための雅楽作品と細川俊夫の作品(笙とアコーデ...

    投稿日:2018/12/23

     笙のための雅楽作品と細川俊夫の作品(笙とアコーディオンのための)が交互に演奏される。そこから感じられるのは古くから奏される雅楽の作品も現代に細川によって創られた楽曲も同じように感じられることだ。      雅楽は古い曲にあらず、現代作品と並んでもひけをとることがない「先鋭的」な作品でもあることに気づかされる。ここに収められた雅楽作品の由来に明るいわけではないが、雅楽で表されたものも細川作品も「水平に流れている時間の中から刹那の時を感じ取り、垂直方向に深く聴きこんでいく」というスタンスは同じものなのだろうか。     私の素人考えで、お気軽な陽気な楽器というイメージのアコーディオンがこれだけ深い音楽を奏でられることに気づくことができたのもこのCDのおかげであり、笙との相性の良さも学ぶことができた。難しいことを考えずに、閑に時間の深みを推察したい方におすすめしたい。常に気ぜわしく時間に追い立てられ、時計の回転が速くなってしまった現在において、この手の音楽に浸ることはおそらく必要なことのように思える。

    うーつん さん

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  •  我々日本人にとって、自然の牙が剥き出しになって襲...

    投稿日:2018/09/12

     我々日本人にとって、自然の牙が剥き出しになって襲い掛かった2011年3月11日は忘れることができない「分岐点」となることであろう。 「体験」が「記憶」になることが将来的に何をもたらすのかまだ判らないが、音楽を通してその痛みや喪失、そしてそこから立ち上がる再生を考えるのも一つの方法と思う。   このディスクに収録された曲はすべて軽い気持では聴けないものばかり。ただ、それでも聴かずにはいられない。そして、あの震災に、自然の驚異に想いを馳せずにはいられない。   音楽の語法は細川俊夫らしいものであるが、そのパレットに描かれた風景の激しさといったら…。 氏の既存の作品とは一線を画す、圧倒的に痛烈な自然の凶暴さをそのままに表現していく。対して小さな存在である人間は、か細い声でしかその存在を表現できない。   「嘆き(2013 ver.2015)」はディスク化を切望していたものだけに真っ先に聴いたが、他の曲も聴くうちに「4曲全体でひとつの作品」と思えるようになった。先の震災をテーマにしてはいるが、もっと根本では「自然への畏れ」でつながっているからだ。   ライナーノートからの引用を行わせてもらうが、「嘆き」の曲冒頭に歌われるこの一節をご覧いただければこのディスクのメッセージが少しでもご理解いただけると思う。   『・・・最近、恐ろしい出来事があり、私はもはやその影から逃れることができない。敬愛する友よ、私の人生はわずか数日の間に筆舌に尽くしがたいほど無残に壊された。そして痛みをも拒む無言の苦悩だけが残っている・・・ 』 (ゲオルく・フォン・トラークルが友人に宛てて書いた手紙の一節、当盤解説ノートより)

    うーつん さん

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  •  2018年2月、新国立劇場での「松風」にも村雨役で熱...

    投稿日:2018/05/03

     2018年2月、新国立劇場での「松風」にも村雨役で熱演していたS.ヘレカントのすばらしい歌唱が光るモノドラマ。テキスト(邦訳をネットで探して参照しながらですが… )が深遠で、だからこそ音による表現が多様に行えるのか音楽の重力が大きい。実際に舞台作品として上演したのかはわからないが、面白い演目になるのではないだろうか。松風のように能をベースにしても物語が活きてきそうだ。むしろ実際の能舞台の上で上演するとこれはかなり刺激的で重層的な作品になるような気がする。能舞台の橋掛かりがかなり重要なスペースとして使われそうな演出が望ましいと思う。少なくとも当盤を聴けばその手の想像が各々に働くのではないだろうか。   朗読が最初のトラックに入っているのでそこでじっくり「予習」して音楽に臨むこともできるのはうれしいところ。   文章で追うだけだと只の文学になる所に、細川俊夫の音を入れることで現実と夢幻が徐々に入り混じって自分が果たして「現実」にいるのか「夢幻」に来てしまったのか、解らなくなる様なドラマが展開されていく。大鴉とは、本当に家の扉の外から来たのか、それとも心の中の扉に潜んでいたものなのか…それを考えていくのは、これを聴いてもらい各々が感じてもらえれば。と思う。

    うーつん さん

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  •  ドイツを中心としたヨーロッパを活動拠点とする細川...

    投稿日:2018/01/20

     ドイツを中心としたヨーロッパを活動拠点とする細川俊夫の音楽思想・音楽を紡ぐ際のバックボーン、ランドスケープを対談形式で著している。 今、最も注目されていると思われる氏の作品ができる過程を知るうえで非常に面白い本となっている。日本を出る前、そしてヨーロッパに渡った後の活動と作品紹介を中心にわかりやすく、丁寧に書かれている。 今年(2018年)2月にはオペラ「松風」の日本初演も予定されているし、今後も日本での作品紹介が増えると思うが、それを「世界のホソカワ」的な話題先行のブームに終わらせないためにもこういった書籍からもきちんと知ることが必要と思う。そういったきっかけとしておすすめの一冊。

    うーつん さん |40代

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  •  うれしい再発売。   私にとって細川俊夫の作品に...

    投稿日:2016/01/05

     うれしい再発売。   私にとって細川俊夫の作品に出逢った初めてのCDがこれだった記憶がある。静謐なのだが、(昔はやった)ヒーリング音楽とは全く違う強さと厳しさを感じたのが最初の印象だ。    他のCDのレビューにも書かせてもらったが、この人の曲は緊張感を含んだ張り、垂直・水平への音の強さと持続(印象としての曖昧な表現ですみません)が彼独自の書法として明確になっているのが好きな理由だろうか。今(2016年)にしてみれば細川俊夫の「初期」作品集となってしまっているが、前述の特徴が萌芽としてしっかり出ているのでこれをきっかけに彼の作品に身をひたしてみてほしい。彼の曲は現代曲と違い、理論を頭で考えるよりも響き(ストーリー)に身をひたす方が良いと思う。

    うーつん さん

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  •   特に好きな曲は2曲目の『夜の響き』(1994)。少...

    投稿日:2016/01/04

      特に好きな曲は2曲目の『夜の響き』(1994)。少ない音ながらその表現や研ぎ澄まされた響きと音の持続はいつ聴いても身が引き締まる。「夜」がもつイメージ −私の考えでは、暗闇の向こうに潜む緊張感やそこに現れる空気感や突如現れる光の斬新さ− をピアノという鍵盤楽器兼打楽器的な思想も含めて表現していると感じた。    思うに音の強さというか強度が強いのにしなやかといったらよいだろうか。垂直方向への強さと水平方向への持続がうまくミックスされているのが彼の作品のすごいところだと思っている。もちろん、同盤の他曲やフォンテック・レーベルの他のCDも同じ観点からお勧めしたい。

    うーつん さん

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