平成音楽史
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座頭 | 兵庫県 | 不明 | 2021年04月23日
思想史・音楽評論の片山杜秀、演奏史に詳しい山崎浩太郎が、「平成のクラシック音楽」を熱く語り合った。元号で区切ってはいるものの、話題は世界を見据える。「帝王」カラヤンの死去、古楽運動など代表的な現象をカバー。教養や権威の象徴だったクラシック音楽がサブカルチャー化し、スタンダードとは一線を画した「オレの巨匠」「オレの名盤」が出現するまでの流れは、興味が尽きない物語となっている。 注目すべき話題の一つは「朝比奈隆のブルックナー」現象。長大な交響曲で知られる作曲家が昭和の終わりに人気を博したのには、指揮者・朝比奈の貢献が大。本書は平成に入ってからの大ブームを「信者の広がり」と捉え、東京から大勢のファンが関西公演に足を運んだ平成前期の様子を紹介。朝比奈によるブルックナー演奏の価値をいち早く説いた評論家・宇野功芳氏を「預言者」と呼ぶなど、さえわたる表現で笑いを誘うとともに、鋭く本質を突く。 佐村河内守のゴーストライター騒動を巡る記述も興味深い。創造的な作曲が難しくなっている音楽界の状況、東日本大震災後の重いムード、佐村河内氏の天才的とも言えるプロデュース能力など、騒ぎが大きくなった背景を、新鮮な視点も交えつつ解説。クラシック音楽がサブカルチャー化した流れの総決算的な出来事と位置付ける。 音楽ジャーナリズムの多様化についても言及される。音楽関連の書籍などを出版する「音楽之友社」が権威であった時代から、その後の批評家批判へ。ここでも、サブカルチャー化が事象を読み解く鍵となっている。 このほか、神戸出身で戦前から1950年代初頭に活躍した名作曲家・大澤壽人(おおさわ・ひさと)の復活劇など、縦横無尽の音楽談議が続く。2氏の音楽への愛の深さが、本書を格段に面白くしている。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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