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Schubert (1797-1828)

SACD Piano Sonata No.21, Impromptus D.899 : Yuka Morishige (Hybrid)

Piano Sonata No.21, Impromptus D.899 : Yuka Morishige (Hybrid)

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    今本 秀爾  |  大阪府  |  不明  |  05/May/2023

     若いピアニストが、ソロCDの初リリースでシューベルト晩年の大曲を2曲収録したのには大きな意義がある。  シューベルトの晩年は死の予兆が常に差し迫り、作曲された楽曲のテーマにもメロディーにも、独り死に向かう絶望感や虚無感、孤独感がみなぎっていると言われる。そして今回収録された2曲も、いわば作曲者が人生の終焉を迎え諦念に満ちた雰囲気を醸しだすかのような悲哀感漂う演奏が多い中、守重のピアノはそうしたオーソドックスな解釈上の前提を取り払い、若々しく凛とした作曲家シューベルトの音楽を再生させることに成功している。  その演奏には、たえず前進する推進力に溢れ、生き生きと瑞々しさがほとばしり、絶望感よりもむしろ 生きる希望や瞬間の喜びや望みすら感じさせられるような、溌剌とした新鮮な雰囲気を醸しだしているからである。  即興曲集D899の演奏は、第1番から軽快でリズミカルで聴き手を休ませることのない左手の伴奏に乗っかりシューベルトらしい歌曲風の旋律が浮かび上がり、強弱のコントラストが実にクリアに演奏される。第2番も明るく軽やかな長調のアルペジオと、フォルテで激しい短調の中間部の切迫感が見事なまでに対照的に奏でられ、曲全体のスピード感が最後まで持続される。第3番はそれと正反対にノスタルジックなメロディーが控えめにゆったりと演奏され、この曲の悲壮感を増幅させている。最後の第4番の演奏も、有名な下降系のアルペジオのメロディーが軽やかに始まり、次第にクレッシェンドしながら、これでもかと念を押すかのようにメロディーが前へ前へと切迫しつつ蔽いかぶさってゆく。  かわってシューベルトの最後のソナタ(第21番D960)は、第1楽章冒頭の絶望感に満ちたテーマも、テンポ感よく淡々と演奏され、楽章全体に若々しさや凛々しさを窺うことができる。第2楽章は終始ゆったりとしたテンポで曲の孤独感に満ちたモチーフが強調されるが、第3楽章は正反対に軽やかなタッチに支えられ曲が生き生きとリズミックに奏でられる。そして終楽章は冒頭の軽やかな長調のテーマと中間部の短調の激しい部分とのメリハリが見事に表現されている。 全楽章を通して、この曲のフレーズごとのテンポ設定が実に良く、曲の構造が聴き手につぶさに汲み取れる秀逸な演奏となっている。  今回収録された全曲を通じ、守重のピアノはその軽やかなタッチと推進力、強弱のダイナミズムに加え、とりわけ高音部のメロディーの美しさが特筆すべき魅力である。シューベルトは31歳という若さで亡くなったことを加味すれば、この演奏はまさに作曲者の晩年の実際の姿を再現した演奏と言えるかもしれない――それほど筆者には彼女の演奏が新鮮に感じられた。

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