
全盛期の姿を伝える貴重な録音
ヴェーグ四重奏団の芸術(14CD)
ベートーヴェン、バルトーク、ブラームス、モーツァルト、他
【概要】
◆英スクリベンダム・レーベルからの発売。録音はどれもモノラル後期にセッションを組んでおこなわれており、鑑賞には問題の無い音質水準が確保されているため、結成からまだ十数年という時期のヴェーグ四重奏団の魅力を十分に楽しむことができます。
◆シャーンドル・ヴェーグ(1912-1997)は、1935年、23歳のときにブダペストで「ハンガリー四重奏団」を結成、2年後にバルトークと親しかったヴァイオリニストのゾルターン・セーケイ(1903-2001)が同団に加わると、セーケイが第1ヴァイオリン、ヴェーグが第2ヴァイオリンとなり、ソリストとして名の知れたヴァイオリニスト2人を擁する体制となります。結成5年目の1940年、ハンガリーが枢軸国だったこともあってか、「ハンガリー四重奏団」は、ドイツによって併合されたオランダに活動拠点を移すことになるのですが、ヴェーグはハンガリーに残る道を選んで退団、リスト音楽院の教授となる一方、自らの名を冠したヴェーグ四重奏団を結成。1946年にはジュネーヴ国際音楽コンクールで第1位を獲得し、以後、国際的な名声を築いて1980年まで活動することになります。
【収録内容】
◆モーツァルト:弦楽四重奏曲6曲(仏ディスコフィル・フランセ/1951&1952年)
◆ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全曲(仏ディスコフィル・フランセ/1952年)
◆ブラームス:弦楽四重奏曲全曲(英デッカ/1952&1954年)
◆シューベルト:弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」(英デッカ/1952年)
◆スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」 (英デッカ/1953年)
◆コダーイ:弦楽四重奏曲第2番(英デッカ/1953年)
◆バルトーク:弦楽四重奏曲全曲(英コロンビア/1954年)
【演奏】
◆ヴェーグ四重奏団(第1ヴァイオリン:シャーンドル・ヴェーグ、第2ヴァイオリン:シャーンドル・ゼルディ、ヴィオラ:ジョルジ・ヤンツェル、チェロ:パウル・サボー)
【仕様】
◆ボックスの仕様は一般的な左に開くタイプで、ブックレットは付属せず、トラックリストや演奏・録音データは、それぞれの紙ジャケット裏側に記載されています。
Scribendum
収録内容
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
録音
1952年にパリで録音。マイク近めの凝縮された音響空間の中で、ヴェーグ四重奏団の最も鋭利で活力に満ちた姿を明晰に捉えています。
演奏スタイル
時に自由で即興的なルバートも含むヴェーグ四重奏団の演奏は、構造を重視すれば音楽が硬直化し、歌を重視すれば構造が弛緩するという相反する要素を見事に解決し、ベートーヴェンの音楽に説得力を持って寄り添っています。
ヴィブラートの使い分けも巧みで、緩徐楽章でのヴィブラートの抑制はテクスチュアを浮き彫りにし、後の古楽演奏にも通じるような透明感をもたらしてもいます 。
初期作品(第1〜第6番)(CD1〜2)
Op.18の6曲では、古典派四重奏曲の様式に従いながらも、若きベートーヴェンが込めた情熱と斬新さを瑞々しく表現。軽快な躍動感だけでなく、随所にみられる後年のベートーヴェンに通じる要素なども印象的。
中期作品(第7〜第11番)(CD3〜5)
中期の傑作群では、各楽器の対話が極めて有機的に編み上げられており、特にラズモフスキー第3番の終楽章に見られるリズムの制御は、音色的な単調さに陥ることなく、ドラマティックな緊張を維持して圧巻といえます。
後期作品(第12〜第16番)(CD5〜7)
ヴェーグ四重奏団の真骨頂は、やはり後期の弦楽四重奏曲にあります。第15番の第3楽章「リディア旋法による病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」では、彼らは淡々とした中に深い感動を込め、旋法の性格にふさわしいアプローチを採用。
「大フーガ」では、旋律表現に重きを置いて、メロディが複雑に絡み合いながらも各声部が十分に歌いこむ美しい演奏を展開しています 。

モーツァルト:弦楽四重奏曲集
録音
パリのスタジオ・デ・シャンゼリゼで、1951年10月に第18番(K.464)と第23番(K.590)、1952年10月に
第14番(K.387)、第15番(K.421)、第17番(K.458)、第21番(K.575)を収録。マイク近めの凝縮された音響空間ですが、モーツァルトに必要な伸びやかさも十分に感じられます。
弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K.421 (ハイドン・セット第2番)(CD8)
悲劇的なトーンを持つこの作品で、ヴェーグの第1ヴァイオリンは内省的な音色を聴かせます 。特に第2楽章アンダンテでのため息のような憂鬱なフレーズは印象的。
弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K.387 「春」(ハイドン・セット第1番)(CD8)
第4楽章でのフーガ的な処理は、ヴェーグ四重奏団の真骨頂。各声部が独立した生命力を持ちながら、全体として一つの巨大な推進力を形成する様子は圧倒的です。
弦楽四重奏曲第17番 変ロ長調 K.458 「狩」(ハイドン・セット第4番)(CD8)
軽快な狩猟のモティーフで始まる第1楽章でも、ヴェーグ四重奏団はリズムの刻みの鋭さと、展開部でのシリアスな表情の変化によって重みを与えています。
弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K.575(プロシャ王第1番)(CD9)
チェロの名手でもあったプロシャ王に献上すべく書いたセットの第1曲。チェロの役割が拡大されているため、チェロのサボーによる朗々としながらも気品あるソロが随所で光ります。
弦楽四重奏曲第18番 イ長調 K.464 (ハイドン・セット第5番)(CD9)
ベートーヴェンが賞賛したとされる作品。第3楽章の変奏曲で、ヴェーグ四重奏団は声部間の受け渡しを、単なるフレーズのやりとりを超えて、まるで会話のように入念に仕上げている点が印象的。
弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調 K.590 (プロシャ王第3番)(CD9)
第1楽章冒頭のユニゾンの一体感から終楽章三連符パッセージでの会話のような軽やかさまで、作品の自在さに見事に対応した演奏 。
ブラームス:弦楽四重奏曲全集
録音
第1番が1952年4月にジュネーヴのヴィクトリア・ホールでのffrr録音。プロデューサーはヴィクター・オロフ。第2番と第3番が1954年8月にロンドン、ウェスト・ハムステッドのデッカ・スタジオで収録。プロデューサーはピーター・アンドリー。2人とも音楽家出身でのちにEMIに転職する有名プロデューサー。モノラルですが自然な距離感の音。
弦楽四重奏曲第1番 ハ短調 Op.51-1(CD10)
◇第1楽章の冒頭、18小節に及ぶ主題で、ヴェーグ四重奏団は推進力を維持しながらも、一音一音にきめ細かなニュアンスを込めており、推進力が単なる速さではなく、内面から湧き上がる衝動として表現されています。
◇第2楽章:息の長い旋律が身を浸らせるような深い味わいを持って奏でられ、ハンガリー楽派特有のポルタメントを伴う表情豊かな奏法が、ブラームスの孤独感をより切実なものとして表現。
◇第3楽章:ふんぎりの悪いメロディの扱いには、ブラームス特有の屈折した感情が巧みに捉えられており、終楽章の暗い情熱と切迫感は、聴き手の胸に迫る圧倒的な力強さを持っています 。
弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.51-2(CD10)
◇第1楽章:特に美しい音を駆使した旋律の受け渡しが聴きどころで、曲の魅力に改めて気付かされるような新鮮な感興に満ちています。
◇第2楽章:情緒の深さが素晴らしく、ヴェーグの第1ヴァイオリンが自己主張を抑えながらも雄弁に語る姿勢により、ブラームスの内省的な世界を見事に浮き彫りにしています。
◇第3楽章以降の民族舞曲的な躍動感は特筆もので、彼らのハンガリー人としての血が騒ぐのか、喜びと哀しみがめまぐるしく入れ替わるような情熱的な激しさが聴きものとなっています。
弦楽四重奏曲第3番 変ロ長調 Op.67(CD11)
◇第1楽章:狩猟信号を思わせる主題は、軽快でありながらも決して軽薄に陥ることなく、古典的な気品を保っています。
◇第3楽章:ヴィオラが主役となりますが、ヤンツェルの独特の音色はブラームスがこの楽章に込めた不安感と幻想的な雰囲気にぴったりです。
◇第4楽章:変奏曲では、各変奏の性格を明確に描き分けつつ、最後には冒頭主題の回想へと至る構造を、説得力を持って示しています。
シューベルト:弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」
録音
1952年4月にジュネーヴのヴィクトリア・ホールでのffrr録音。プロデューサーはヴィクター・オロフ。モノラルですが自然な距離感の音。
弦楽四重奏曲第13番イ短調「ロザムンデ」(CD11)
◇第1楽章:冒頭、16分音符の刻みに対して彼らは単なる背景としての伴奏ではなく、あたかも運命の歯車が回り始めたかのような推進力を与えています。主題はシューベルトの歌曲「糸を紡ぐグレートヒェン」D.118の伴奏音型に基づいているとされますが、ヴェーグ四重奏団の演奏からは、その回転する糸車の音が、同時に死へのカウントダウンであるかのような不気味な緊張感も漂います。展開部では各楽器が対等に語り合い、複雑に絡み合うフレーズがうねりとなってクライマックスへ向かうプロセスが見事です。
◇第2楽章:「キプロスの女王ロザムンデ」間奏曲の主題に基いていますが、甘美な子守歌というよりも、まるで遠い記憶を辿るかのように、あるいは二度と戻らない時代への挽歌のように、慈しみ深くも孤独な響きを湛えています。ヴェーグ四重奏団の演奏では、再現部でのヴィオラとチェロの織りなす中低域の響きが、明るい調性の中に潜む不安感を生々しく浮き彫りにします。
◇第3楽章:シューベルトは歌曲「ギリシャの神々」の中の「美しい世界よ、お前はどこに?」という一節を引用していますが、ヴェーグ四重奏団は、この問いかけを、音楽的なアクセントと独特の間(ま)によって表現。メヌエットでありながら舞曲としての性格は希薄で、むしろ失われた楽園を彷徨うような足取りが強調されています。
◇第4楽章:明るい民俗舞曲風の趣ですが、ここでもヴェーグ四重奏団は、安易な幸福感に流されることはありません。彼らの演奏が「土の香り」と評される所以は、たとえばこの楽章のリズムの刻み方にあります 。ハンガリー出身の彼らならではの、拍の頭をわずかに強調しつつ、後に続く拍を軽やかに放るような独特のアーティキュレーションは、シューベルトの音楽に潜む中欧の民俗的性格を呼び覚まします。
スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」
録音
1953年7月27〜31日にロンドン、ウェスト・ハムステッドのデッカ・スタジオでのffrr録音。モノラルですが自然な距離感の音。
弦楽四重奏曲第1番ホ短調「わが生涯より」 (CD12)
◇第1楽章:ヤンツェルのヴィオラは、単なる伴奏楽器の役割を超え、スメタナの「運命の叫び」を重厚かつ情熱的に歌い上げています 。ヴェーグ四重奏団は、この楽章に見られる理想と運命の対立を、鋭いクレッシェンドと緊張感あふれるアンサンブルで表現。神経質さと気分の揺れが聴き手をスメタナの内面世界へと引き込みます。
◇第2楽章:ヴェーグ四重奏団の持つリズムの表現力が最大限に発揮されています。ポルカのリズムは微妙な揺らぎを伴い、中間部ではヴェーグ四重奏団ならではの立体的で彫りの深い響きが印象的。
◇第3楽章:チェロのサボーによるラプソディックな導入部から始まり、第1ヴァイオリンのヴェーグへと引き継がれる旋律は深い抒情性を湛えており、さらに再現部ではドラマティックな高揚を極限まで高めています。
◇第4楽章:ヴェーグ四重奏団の演奏は、祝祭的な前半から突然の転調を経てホ短調へと暗転する場面の緊迫感が比類ないものとなっています。特に、耳鳴りを象徴する高音の出現と、その後の回想シーンでの深い沈黙への移行は、ヴェーグの統率力によって、単なる音響的な効果ではなく、絶望的な悲劇として表現されているかのようです。
コダーイ:弦楽四重奏曲第2番
録音
1953年7月27〜31日にロンドン、ウェスト・ハムステッドのデッカ・スタジオでのffrr録音。モノラルですが自然な距離感の音。
弦楽四重奏曲第2番(CD12)
◇第1楽章:ソナタ形式を基盤としながらも、フランス印象主義の影響とハンガリー的な旋法が交錯する音楽で、拍子は6/8拍子と9/8拍子が揺れ動き、シチリアーナのようなリズム特性を持ちます。ヴェーグ四重奏団は印象主義的なパッセージで音色を薄く塗り重ねるのではなく、個々のラインに強い意志を持たせていますが、これは、コダーイが追求したハンガリー的なアクセントを伴うガリシズムの体現ともいうべきものです。
◇第2楽章:叙唱風の自由なアンダンテから、活気あふれるハンガリー舞曲の組曲へと移行する構造を持つ音楽で、バグパイプ風のオスティナートや、民俗楽器の響きを模したピッツィカートが多用されます。ヴェーグ四重奏団は、静謐なアンダンテ部分と、野性味ある民俗舞曲的な部分の対比を鮮やかに描き出しています。
バルトーク:弦楽四重奏曲全集
録音
1954年9月と10月にロンドンで収録。モノラルですが自然な距離感の音。
弦楽四重奏曲第1番 Sz.40(CD13)
ヴェーグ四重奏団の演奏で聞くとベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲、特に第14番からの影響が感じられます。冒頭の「不気味な二重奏」から始まり、楽器が収束して巨大なハーモニーを形成していく過程は、カフカ的な迷宮を彷徨うような不穏さも。
◇第1楽章:沈鬱なフーガで始まり、ベートーヴェンの影響や個人的な情念が交錯する、後期ロマン派的な余韻を残した楽章 。
◇第2楽章:第1楽章のモティーフを反転させた主題を用い、全音音階などの印象主義的な色彩と、打楽器的な響きが加わります 。
◇第3楽章:チェロの独奏による導入に続き、ハンガリー民俗音楽特有の鋭いリズムが爆発する、野性味あふれる終楽章。
弦楽四重奏曲第3番 Sz.85(CD13)
最も急進的な語法が横溢する第3番は「音楽的なカンディンスキー」と評され、スル・ポンティチェロ(駒寄り奏法)やハーモニクス、打撃的なピッツィカートを駆使して原始的な音響を創出した4部構成の作品。
◇第1部:クラスターが支配的で、幻想的かつ不協和な響きが作り出されます 。
◇第2部:特殊奏法を多用した激烈なリズムと、対位法が衝突するセクション 。
◇第3部:冒頭の素材が簡略化・変容され、透徹した響きを持って回帰 。
◇第4部:第2部の素材がさらに加速され、熱狂的に曲を締めくくります 。
弦楽四重奏曲第5番 Sz.102(CD13)
第5番の演奏でヴェーグ四重奏団はバルトーク本人とのリハーサルの記憶を投影させているかのようです。1935年のハンガリー初演に際し、ヴェーグらは作曲家を交えた個人宅でのコンサートを行い、そこでバルトークの意図を直接吸収したという逸話が残っています 。この1954年盤では、複雑な追い込みが線的に混濁することなく、明晰に示されています。
◇第1楽章:呈示部と再現部が鏡像関係(順序逆転・反転)にある、緻密な鏡像ソナタ形式です 。
◇第2楽章:時間的な対称性を追求した「夜の音楽」で、一つの巨大な音響体として呼吸します 。
◇第3楽章:全曲の中心軸にあり、ブルガリアの複雑な不規則リズム(アクサク・リズム)の集大成です 。
◇第4楽章:第2楽章と対をなし、ピッツィカートやグリッサンドを多用した幻想的で不安な風景を描きます 。
◇第5楽章:活発なロンド形式で、終盤には「安っぽい回転木馬」のような旋律がアイロニーとして現れます 。
弦楽四重奏曲第2番 Sz.67(CD14)
第1ヴァイオリンとヴィオラの緊密なインタープレイが素晴らしい聴きもの。終楽章での重いため息のような表現は、第1次世界大戦期の絶望的な世相を反映したものとして高く評価されています。
◇第1楽章:ソナタ形式に基づき、跳躍する7度の音程を持つ主題が、経済的かつ現代的な手法で展開されます 。
◇第2楽章:アルジェリアで収集した音楽の影響を受けた、狂乱のスケルツォです 。
◇第3楽章: 「苦しみ」を象徴する極めて静的な楽章で、深い孤独と虚無の中に消え入るように終わります 。
弦楽四重奏曲第4番 Sz.91(CD14)
第3楽章を中心とした完全な対称形(アーチ形式)のなかで、絶え間なく変化する色彩感が重要視されます。特に中間楽章でのグリッサンドは、自然界の息吹を感じさせる神秘的なものとして扱われているかのようです。
◇第1楽章:半音階的で不協和なエネルギーに満ち、強烈な「ぶつかり合い」による摩擦音が特徴です 。
◇第2楽章:弱音器を用いた極めて速いテンポにより、微細な音響が蠢く「影のスケルツォ」です 。
◇第3楽章:全曲の核であり、自然の物音や民俗歌唱を模した「夜の音楽」の至高の表現です 。
◇第4楽章:全編がピッツィカートで演奏され、弦を指板に叩きつける「バルトーク・ピッツィカート」も登場します 。
◇第5楽章:第1楽章と対をなし、狂暴で祝祭的なリズムによって壮大なアーチを完結させます 。
弦楽四重奏曲第6番 Sz.114(CD14)
第6番はバルトークの「遺言」とも言える悲劇的な作品。ヴェーグ四重奏団は、各楽章に現れる「Mesto(悲しげに)」の指示に対して、単なる感傷ではなくストイックさをもって描き出しています 。第3楽章のブルレッタ(道化)での「酔いどれチェロ対バンジョー・ヴィオラ」のようなグロテスクな描写も、内容本位の表現によって裏打ちされています 。
◇第1楽章: 「Mesto(悲しく)」という嘆きのテーマで始まり、それが主部の活発な音楽にも浸透しています 。
◇第2楽章:ファシズムを皮肉ったグロテスクな行進曲で、中間部には郷愁を誘うジプシー風の哀歌が現れます 。
◇第3楽章:自嘲的で攻撃的な「滑稽曲」であり、微分音的なスライドが理性の崩壊を表現します 。
◇第4楽章:母の死を受けて計画を変更し、全編が深い嘆きに支配された「沈黙への移行」で幕を閉じます 。
演奏者情報
ヴェーグ四重奏団
1940年にブダペストで結成されて以来、約40年間にわたりほぼ不動のメンバーで活動を継続したこのアンサンブルは、ハンガリーが誇る「フバイ・スクール」の演奏伝統を世界に広める重要な役割を果たしました 。彼らの芸術的核心は、作曲家の意図に対する厳格な忠実さと、人間的な温かみを感じさせる歌心あふれる音色の融合にあります 。特にベートーヴェンとバルトークの全集録音は、数ある歴史的録音の中でも最高峰の解釈として、今日でも世界中の音楽愛好家や批評家から絶大な支持を受けています。
トラックリスト
CD1
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第1番 ヘ長調 Op.18-1 [27:30]
1. 第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ [7:15]
2. 第2楽章 アダージョ・アフェットゥオーゾ・エ・アッパッショナート [11:04]
3. 第3楽章 スケルツォ(アレグロ・モルト) [3:25]
4. 第4楽章 アレグロ [5:46]
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第2番 ト長調 Op.18-2 [22:12]
5. 第1楽章 アレグロ [5:55]
6. 第2楽章 アダージョ カンタービレ;アレグロ [6:29]
7. 第3楽章 スケルツォ(アレグロ) [4:39]
8. 第4楽章 アレグロ・モルト、クァジ・プレスト [5:09]
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第3番 ニ長調 Op.18-3 [22:05]
9. 第1楽章 アレグロ [6:00]
10. 第2楽章 アンダンテ・コン・モト [8:30]
11. 第3楽章 アレグロ [3:01]
12. 第4楽章 プレスト [4:34]
CD2
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 Op.18-4 [21:32]
1. 第1楽章 アレグロ、マ・ノン・タント [6:53]
2. 第2楽章 スケルツォ [5:50]
3. 第3楽章 メヌエット(アレグレット) [4:21]
4. 第4楽章 アレグロ、プレストッシモ [4:28]
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第5番 イ長調 Op.18-5 [27:06]
5. 第1楽章 アレグロ [5:17]
6. 第2楽章 メヌエット [6:14]
7. 第3楽章 アンダンテ カンタービレ [10:51]
8. 第4楽章 Allegro [4:44]
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第6番 変ロ長調 Op.18 No.6 [24:50]
9. 第1楽章 Allegro Con Brio [4:58]
10. 第2楽章 Adagio, Ma Non Troppo [7:09]
11. 第3楽章 スケルツォ(アレグロ) [3:29]
12. 第4楽章 ラ・マリンコニア [8:44]
CD3
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第7番 ヘ長調 Op.59「ラズモフスキー第1番」 [36:41]
1. 第1楽章 アレグロ [10:29]
2. 第2楽章 アレグレット・ヴィヴァーチェ・エ・センプレ・スケルツァンド [8:23]
3. 第3楽章 アダージョ・モルト・エ・メスト [11:47]
4. 第4楽章 テマ・ルッソ - アレグロ [6:02]
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 Op.59「ラズモフスキー第2番」 [33:55]
5. 第1楽章 アレグロ [7:36]
6. 第2楽章 アダージョ・モルト [12:21]
7. 第3楽章 アレグレット [8:24]
8. 第4楽章 フィナーレ(プレスト) [5:34]
CD4
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第9番 ハ長調 Op.59「ラズモフスキー第3番」 [30:49]
1. 第1楽章 アンダンテ・コン・モート [8:40]
2. 第2楽章 アダンテ・コン・モート [10:09]
3. 第3楽章 メヌエット・グラツィオーゾ [5:29]
4. 第4楽章 アレグロ・モルト [6:31]
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 Op.74「ハープ」 [31:22]
5. 第1楽章 ポコ・アダージョ;アレグロ [8:51]
6. 第2楽章 アダージョ、マ・ノン・トロッポ [9:50]
7. 第3楽章 プレスト [6:02]
8. 第4楽章 アレグレット・コン・ヴァリアツィオーニ [6:39]
CD5
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 Op.95「セリオーソ」 [20:07]
1. 第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ [4:20]
2. 第2楽章 アレグレット [6:57]
3. 第3楽章 アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ [4:07]
4. 第4楽章 ラルゲット・エクスプレッシヴォ [4:43]
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第12番 変ホ長調 Op.127 [36:42]
5. 第1楽章 マエストーソ:アレグロ [7:15]
6. 第2楽章 アダージョ、マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ [14:05]
7. 第3楽章 スケルツァンド・ヴィヴァーチェ;プレスト [8:35]
8. 第4楽章 フィナーレ [6:47]
大フーガ 変ロ長調 Op.133
9. アレグロ [17:00]
CD6
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130 [42:29]
1. 第1楽章 アダージョ、マ・ノン・トロッポ;アレグロ [13:41]
2. 第2楽章 プレスト [1:59]
3. 第3楽章 アンダンテ・コン・モート、マ・ノン・トロッポ [6:14]
4. 第4楽章 アレグロ・ダンツァ・テデスカ(アレグロ・アッサイ) [3:31]
5. 第5楽章 カヴァティーナ [6:59]
6. 第6楽章 フィナーレ [9:05]
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調 Op.131 [37:17]
7. 第1楽章 アダージョ [7:02]
8. 第2楽章 アレグロ [3:13]
9. 第3楽章 アレグロ・モデラート [0:48]
10. 第4楽章 アダンテ [12:45]
11. 第5楽章 プレスト [5:29]
12. 第6楽章 アダージョ [1:52]
13. 第7楽章 アレグロ [6:28]
CD7
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第15番 イ短調 Op.132 [41:37]
7-1. 第1楽章 アッサイ・ソステヌート [8:53]
7-2. 第2楽章 アレグロ [8:52]
7-3. 第3楽章 ヘリガー・ダンクゲザング [14:29]
7-4. 第4楽章 マーチ風 [2:17]
7-5. 第5楽章 アレグロ・アパッショナート [7:06]
ベートーヴェン(1770-1827)
弦楽四重奏曲第16番 ヘ長調 Op.135 [26:40]
7-6. 第1楽章 アレグレット [6:44]
7-7. 第2楽章 ヴィヴァーチェ [3:27]
7-8. 第3楽章 レント・アッサイ [7:10]
7-9. 第4楽章 グラーヴェ [9:19]
CD8
モーツァルト(1756-1791)
弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K.421 (ハイドン・セット第2番) [23:08]
1. 第1楽章 Allegro Moderato [5:42]
2. 第2楽章 Andante [6:15]
3. 第3楽章 Menuetto [4:25]
4. 第4楽章 Allegro, Ma Non Troppo [6:46]
モーツァルト(1756-1791)
弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K.387 「春」(ハイドン・セット第1番) [27:11]
5. 第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ [6:13]
6. 第2楽章 メヌエット [9:06]
7. 第3楽章 アンダンテ・カンタービレ [7:43]
8. 第4楽章 アレグロ・モルト [4:09]
モーツァルト(1756-1791)
弦楽四重奏曲第17番 変ロ長調 K.458 「狩」(ハイドン・セット第4番) [23:04]
9. 第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ [6:54]
10. 第2楽章 メヌエット(モデラート) [4:25]
11. 第3楽章 アダージョ [7:16]
12. 第4楽章 アレグロ・アッサイ [4:29]
CD9
モーツァルト(1756-1791)
弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K.575(プロシャ王第1番) [21:36]
1. 第1楽章 アレグレット [5:33]
2. 第2楽章 アダンテ [4:32]
3. 第3楽章 メヌエット(アレグレット) [5:55]
4. 第4楽章 アレグレット [5:36]
モーツァルト(1756-1791)
弦楽四重奏曲第18番 イ長調 K.464 (ハイドン・セット第5番) [26:58]
5. 第1楽章 アレグロ [5:51]
6. 第2楽章 メヌエット [6:47]
7. 第3楽章 アンダンテ [9:45]
8. 第4楽章 アレグロ [4:35]
モーツァルト(1756-1791)
弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調 K.590 (プロシャ王第3番) [20:29]
9. 第1楽章 アレグロ・モデラート [6:31]
10. 第2楽章 アンダンテ [5:03]
11. 第3楽章 メヌエット [4:07]
12. 第4楽章 アレグロ [4:48]
CD10
ブラームス(1833-1897)
弦楽四重奏曲第1番 ハ短調 Op.51-1 [:]
01. 第1楽章 アレグロ [8:33]
02. 第2楽章 ロマンツェ [7:15]
03. 第3楽章 アレグレット・モルト・モデラート・エ・コモド [7:52]
04. 第4楽章 アレグロ [6:25]
ブラームス(1833-1897)
弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.51-2 [:]
05. 第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ [8:54]
06. 第2楽章 アンダンテ・モデラート [9:39]
07. 第3楽章 クワジ・メヌエット、モデラート [4:55]
08. 第4楽章 フィナーレ [6:57]
CD11
ブラームス(1833-1897)
弦楽四重奏曲第3番 変ロ長調 Op.67 [:]
01. 第1楽章 ヴィヴァーチェ [07:40]
02. 第2楽章 アンダンテ [08:08]
03. 第3楽章 アジタート [07:39]
04. 第4楽章 ウン・ポコ・アレグレット・コン・ヴァリアツィオーニ [09:52]
シューベルト(1797-1828)
弦楽四重奏曲第13番イ短調「ロザムンデ」 [:]
05. 第1楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ [09:19]
06. 第2楽章 アンダンテ [07:44]
07. 第3楽章 メヌエット [06:49]
08. 第4楽章 アレグロ・モデラート [06:42]
CD12
スメタナ(1824-1884)
弦楽四重奏曲第1番ホ短調「わが生涯より」 [30:16]
01. 第1楽章 アレグロ・ヴィーヴォ・エ・アパッショナート [08:25]
02. 第2楽章 アレグロ・モデラート・ア・ラ・ポルカ [05:32]
03. 第3楽章 ラルゴ・ソステヌート [10:05]
04. 第4楽章 ヴィヴァーチェ [06:14]
コダーイ(1882-1967)
弦楽四重奏曲第2番 [16:53]
05. 第1楽章 アレグロ [05:41]
06. 第2楽章 アンダンテ [11:12]
CD13
バルトーク(1881-1945)
弦楽四重奏曲第1番 Sz.40 (1908) [31:07]
01. 第1楽章 レント [09:49]
02. 第2楽章 アッチェレランド・ポコ・ア・ポコ・アラグレット [08:53]
03. 第3楽章 イントロドゥツィオーネ(アレグロ) [01:22]
04. 第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ [11:03]
バルトーク(1881-1945)
弦楽四重奏曲第3番 Sz.85 (1927) [15:35]
05. 第1部 モデラート [04:21]
06. 第2部 アレグロ [05:58]
07. 第3部 モデラート [03:04]
08. 第4部 アレグロ・モルト [02:12]
バルトーク(1881-1945)
弦楽四重奏曲第5番 Sz.102 (1934) [29:06]
09. 第1楽章 アレグロ [07:26]
10. 第2楽章 アダージョ・モルト [05:25]
11. 第3楽章 スケルツォ [04:34]
12. 第4楽章 アンダンテ [04:52]
13. 第5楽章 フィナーレ [06:49]
CD14
バルトーク(1881-1945)
弦楽四重奏曲第2番 Sz.67 [26:17]
01. 第1楽章 モデラート [09:40]
02. 第2楽章 アレグロ・モルト・カプリッチョーゾ [07:42]
03. 第3楽章 レント [08:55]
バルトーク(1881-1945)
弦楽四重奏曲第4番 Sz.91 [23:00]
04. 第1楽章 アレグロ [06:17]
05. 第2楽章 プレスティッシモ、コン・ソルディーノ [02:51]
06. 第3楽章 ノン・トロッポ・レント [05:22]
07. 第4楽章 アレグレット・ピツィカート [02:54]
08. 第5楽章 アレグロ・モルト [05:36]
バルトーク(1881-1945)
弦楽四重奏曲第6番 Sz.114 [29:11]
09. 第1楽章 メスト・ピウ・モッソ、ペザンテ;ヴィヴァーチェ [07:44]
10. 第2楽章 メスト;マルチャ [08:17]
11. 第3楽章 メスト;バルレッタ [07:24]
12. 第4楽章 メスト [05:46]
ヴェーグ四重奏団
└シャーンドル・ヴェーグ(第1ヴァイオリン)
└シャーンドル・ゼルディ(第2ヴァイオリン)
└ジョルジ・ヤンツェル(ヴィオラ)
└パウル・サボー(チェロ)
録音 ベートーヴェン:1952年、モーツァルト:1951&1952年、シューベルト:1952年、スメタナ:1953年、ブラームス:1952&1954年、コダーイ:1953年、バルトーク:1954年