晩年様式集

大江健三郎

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784062186315
ISBN 10 : 4062186314
フォーマット
出版社
発行年月
2013年10月
日本
追加情報
:
331p;20

内容詳細

3.11後の緊迫状況を舞台に選んで語る新しい物語。一見“私小説”、しかし実は・・・老境の円熟を拒否してカタストロフに挑む傑作。

おそらく最後の小説を、私は円熟した老作家としてでなく、フクシマと原発事故のカタストロフィーに追い詰められる思いで書き続けた。しかし70歳で書いた若い人に希望を語る詩を新しく引用してしめくくったとも、死んだ友人たちに伝えたい。――(著者)

2011年3月11日後の緊迫した状況を背景に2年近くにわたって「群像」に連載。タイトルは、老境を迎えても円熟を拒否し、前途に予想されるカタストロフを回避しないという芸術家の表現スタイルの態度についての、エドワード・サイード(大江さんの親友)の言葉「イン・レイト・スタイル」から採られる。「話者≒著者」の、表現者としての全人生を批評的に捉え直すような内容と構造になっている。
「語り手の置かれた状況を3月11日後の荒れ果てた日本に設定した。日本が今生きている大災害と同時にわたしの内省の旅が始まった。わたしは一市民がどのように感じているかを表現しようとしている。この作品から見えるのはわたし自身の人生だ」と仏ルモンドのインタビューに答えている。
私(古義人)は「3.11後」大きく動揺していたが。ようやく恢復して「晩年様式集 イン・レイト・スタイル」という文章を書き始めた。アサ(妹)と千樫(妻)と真木(娘)は「三人の女たち」というグループを結成し、私の今までの小説に対する反論を送ってきた。私は自分の文章とその反論を合わせて私家版の雑誌を作ることにした。
一方ギー兄さんの息子であるギー・ジュニアは、「カタストロフ」委員会という名称の団体を作り、その研究対象として自らの父ギー兄さん、自殺した映画監督・塙吾良。そしてその証言者として私のインタビューを開始する。
千樫の発病を機に真木が上京し、代わりに私が四国の森のへりでアカリとの共同生活を始める。ギー・ジュニアもアカリのために働くことになった。
過去の対立を乗り越えた私とアカリは、アカリ作曲、真木選曲のCD「森のフシギの音楽」を森の中で聴くことにする……。

【著者紹介】
大江健三郎 : 1935年1月、愛媛県生まれ。東京大学文学部フランス文学科在学中の1958年、「飼育」により23歳で芥川賞を受賞。1994年、ノーベル文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • 優希 さん

    3.11を内包しながら、その思いの中で私小説として自らの作家人生を振り返ることで改めて大江文学の描いてきた文学というものを見つめ直せた気がします。著作の登場人物と共に、自分も作品の登場人物とすることで、今までの作家人生の集大成にしているのが何とも言えない余韻のある世界を作り出していると感じました。何気ない雑文ではあるのですが、今まで描こうとしてきたものが全て詰まっていることでおそらく書くべきことは書いたという感じなのでしょう。最後の小説として上梓し、文筆家として筆を置くにふさわしい名作を残していった。

  • メタボン さん

    ☆☆☆☆☆遡ること二十数年、私の日常は文学現代音楽に支配されており、その日々で常に寄り添い続けたのは大江健三郎の文体であった。今でも「新しい人よ眼ざめよ」でイーヨーが語る太字のセリフを懐かしく思う。「懐かしい年への手紙」を最後に、いとしくも難解な大江の世界そしてブンガクゲンダイオンガクから遠ざかってきた。人生の折り返し地点を過ぎた今、大江との再会(大江を再開)を果たし、光=イーヨー=アカリ、長江古義人などの変遷は私に空白の長さ重さを想起させる。しかしその文体は通奏低音としてやはり私の底に流れていたはず。

  • 1.3manen さん

    自分らみなについても、国じゅうの原発が地震で爆発すれば、この都市、この国の未来の扉は閉ざされる。自分らみなの知識は死物となって、国民というか市民というか、誰もの頭が真暗になる、滅びてゆく(79頁)。脱原発を訴える作家として高く評価される大江先生。原発に囲まれた地震国に生きている以上、カタストロフィーと無縁だとは思えません(130頁)。

  • 百太 さん

    大江健三郎、初読み。・・・・こっ困った・・・。挫折感。やたらと後期高齢者だからが出てくるわ、状況解らずでイラっとする。今まで大江作品を読んでいなかったら辛いのね(苦笑)。“震災・小説”で検索したら出てきたので読んでみたけど。。。反省と後悔。トホホッ。

  • かふ さん

    3.11のカタストロフィからどう生きればいいかを模索した作品か。大江健三郎のそれまでの小説が死者たちとの対話で成り立っていたのだが、生者である女三人からの批評を受けて改編を余儀なくされる。それは障害のある息子が自殺をほのめかす発言をしたことから、女たちアサ(妹)と千樫(妻)と真木(娘)から古義人(作中の私)は批評される。それは『ドン・キホーテ』のサンチョ・パンサのような役割。大江健三郎は世界文学として詩に多く親しんできたのだが、それは彼岸(西洋だとダンテ『神曲』とか)の世界であり、

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人物・団体紹介

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大江健三郎

1935年1月31日〜2023年3月3日。愛媛県喜多郡大瀬村(現・内子町)生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。1958年「飼育」で芥川龍之介賞、’64年『個人的な体験』で新潮社文学賞、’67年『万延元年のフットボール』で谷崎潤一郎賞、’73年『洪水はわが魂に及び』で野間文芸賞、’83年『「雨の木」を聴

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