Heartstrings

Serph。
そもそもその出現時から突出した才覚を響かせていた彼だが、ここにきていよいよSerphのある種バケモノ的な音楽力が、現時点での完成形を迎えようとしている。
楽曲制作を始めてわずか3年で作り上げた1stアルバム『accidental tourist』を2009年に、2010年には2ndアルバム『Vent』を発売。意外なところでは、平井堅のカップリング・ベストアルバム『裏歌バカ』（初回限定盤）でRemixを披露、そして『Vent』の熱がいまだ覚めやらぬまま、早くも3rdアルバム『Heartstrings』をリリースする。この楽曲密度にしてご覧のとおりのハイペースなリリース、おそらくは彼の中に沸々と起こる創作欲求が今もなお爆発しているに違いない。

ストリングスやピアノのクラシカルな響きやキュートな電子音、跳ね回るドラム。過去、アルバムを紹介するごとにジャズやエレクトロニカ、プログレなどを引き合いに出してきたが、もはやジャンルで形容することすらもままならないほど、エレクトロニックな手法を用いて自由に無邪気に組み上げられたそれらは、時には絵画を眺めているようであったり、そうかと思えば次の瞬間には遺跡を旅していたりと、聴き手を目まぐるしく移り変わる景色の中へと放り込む。
アルバム冒頭を飾る、力強いストリングスのフレーズが印象的な「luck」（現在自身のマイスペ、nobleレーベルサイトでも公開中）を始め、これまでにないポップさを覗かせるヴィヴィッドな色使いの「leaf」、チェンバロがメランコリックに響く「cityscape」など、全13編の物語を収録。
前作に引き続き、河野 愛によるアートワークとも抜群の相性を魅せている。