Norwegian Song

　『Time Enough』と同メンバーでのノルウェイの歌曲を採り上げたピアノ・トリオ・アルバム。透明感溢れるその演奏は北欧の空気を反映した感性が宿っている。
　今回は一般には馴染みの薄い楽曲ながら、「The Trio」ともいうべきユニットとしての完成度で見事な演奏を繰り広げる。

ティエリー・ラングの大ヒット以来、1990年代半ばを超えてから日本でも爆発的な人気を得てきたヨーロッパ系ピアニストの中にあって、一本芯の通った演奏で耕はジャズファンをもその魅力で虜にしてきたダグ・アルネセン。
今回もリソナント・レーベルのオーナーでもあるテリエ・ゲヴェルトの、時に攻撃的なまでのベ−スがこのトリオに拡張と芸術性を維持させている。

日本人は馴染みがないはずの地元のメロディもこの３人が醸し出すユニットというフィルターを通ると見事に耳に沁み込んで来る。
太く芯の通ったベース音も含めて、ハウス・スタジオならではの音作りなされ、聴くものを魅了する。

アルネセンの「音楽のルーツを旅」ともいえる本作の選曲。幼少時に聴いたメロディ、ピアノを練習したときに気になっていたフレーズ、そうした断片がコラージュのようにアルネセンの中で結晶し、昇華し、本作となった。
“心の動きで曲を作る”と語った西山瞳の言葉が頭に中に浮かぶ�G。

トラッド・ソングのほか、祖国の有名な作曲家、グリーク（1843−1907）の２曲、そして、１５歳でグリークを見出した師匠のオレ・ブル（1810-1880）の作品が１曲とアルネセンのレッスン材料だったのかと思いを馳せてしまう。
しかし、演奏は見事なコンテンポラリー・ジャズ。モダンな響きは、ビル・エヴァンス以降のリリカル派全てを超えた優しい響を持っている。


Dag Arnesen (p) Terje Gewelt (b) Pil Thowsen (ds,perc.)
Recorded and Mixed at Resonant Studio Oslo, Norway on October 2006