
ショスタコーヴィチと弟子たち VOL.2
ワインベルク、スヴィリードフ、レヴォリ・ブーニン作品集
フェルナンダ・ダミアーノ(ピアノ)
【概要】
◆ショスタコーヴィチはモスクワとレニングラードの音楽院で長年に渡って指導をおこなっていたほか、作曲家同盟の一員としても多くの音楽家と関わっていました。イタリアのピアニストで教育者でもあるファエルナンダ・ダミアーノが取り組むのは、ショスタコーヴィチと関わりのあった作曲家の音楽を
シリーズで紹介するという企画です。
【演奏者】
◆フェルナンダ・ダミアーノは、ロシア・ソビエト音楽の解釈に定評があるイタリアの若手ピアニスト。彼女の鋭いパーカッシヴな打鍵から内省的な表現までを自在に描き分ける柔軟性を備えています。
【録音】
◆2025年1月にイタリア北部ロンバルディア州のベルナレッジョにあるバルトーク・スタジオで収録。
【製品仕様】
◆装丁はデジパック仕様で、差し込みブックレット (英語・12ページ)には、イタリアの作曲家、リュート奏者、オルガン奏者で、パヴィアのヴィッタディーニ高等音楽院で作曲の教授を務めていたウーゴ・ナストルッチ[1953- ]による解説などが掲載。EU製で、ディスクはメジャー・レーベルでもおなじみの独オプティマル・メディアが製造。
Piano Classics ・
Brilliant Classics ・
Berlin Classics ・
Neue Meister
作品情報
トラックリスト
CD [55'55]
ワインベルク(1919-1996)
◆ピアノ・ソナタ 第2番 Op.8(1942)
ワインベルクはワルシャワに生まれ、1939年9月、20歳の時にドイツが侵攻してきたため約300q歩いてソ連のミンスクに移り住んでミンスク音楽院で学びますが、約2年後の1941年6月、卒業試験の翌日に突然ドイツが条約を破棄してミンスク空爆を開始したため、ワインベルクはウズベキスタンのタシケントに疎開。
タシケント歌劇場のコレペティートアの職を得て作曲もおこなっていたワインベルクは、1943年、戦況が好転して疎開者の帰還も進む中、モスクワのショスタコーヴィチ宛に交響曲第1番の楽譜を送付(ミンスクはまだドイツが占領中)。
ショスタコーヴィチは同曲に感銘を受け、10月にワインベルクをモスクワに招待し、以後、ワインベルクは53年間に渡ってモスクワを拠点に暮らすことになります。
ワインベルクはショスタコーヴィチの弟子だったことはありませんが、長く同じアパートに暮らすなどして親しかったことや、自分の最大の擁護者でもあったことから、13歳年長のショスタコーヴィチを師のように思っていたということです。
ピアノ・ソナタ第2番はタシケントで1942年に作曲。初演はショスタコーヴィチに招かれた1943年10月にモスクワでエミール・ギレリスによっておこなわれています(第2番もギレリスが初演)。
1. 第1楽章 アレグロ [4'24]
ト長調。4/4拍子。明快なリズムと華やかなテクスチャを持つソナタ形式。陽気な開始が次第に緊急性を帯び、戦時下の不穏な空気を反映した終結へと向かいます。
2. 第2楽章 アレグレット [2'48]
2/4拍子。「機械時代」を思わせるリズミカルな舞曲。新古典主義的な明晰さと、どこか皮肉めいた表情が共存しています。
3. 第3楽章 アダージョ [6'28]
3/4拍子。バロック風の舞曲(サラバンド等)を想起させる、装飾の多い緩徐楽章。遠愛的で内省的な美しさを湛えています。
4. 第4楽章 ヴィヴァーチェ [3'25]
6/8拍子。祝祭的な勢いを持つフィナーレ。一貫した推進力が曲を支配し、高度な技巧を要求されます。
ワインベルク(1919-1996)
◆ベルスーズ(子守歌)Op.1 (1935)
作曲当時ワインベルクは16歳であり、ワルシャワ音楽院でヨゼフ・トゥルチンスキに師事していた時期にあたります。
5. [5'01]
穏やかな揺らぎを持つ拍子構造がとられ、伝統的な「子守歌」の形式に従いながらも、その雰囲気は個性的。若き日の繊細な感性が反映されています。

スヴィリードフ (1915-1998)
◆ピアノ・ソナタ (1944)
作曲当時、スヴィリードフは師ショスタコーヴィチの音楽語法、特に戦時下の悲劇性を描く手法を吸収しながら、自身のルーツであるロシア的な属性の表現にも注力し、このソナタにも成果が現れています。
6. 第1楽章 アレグロ・ヴィーヴォ・エ・リゾルート [6'01]
力強く、決然とした開始を持つソナタ形式。鋭いリズムと、ロシア的な旋律線が交錯します。
7. 第2楽章 ラルゴ [4'07]
瞑想的で重厚な緩徐楽章。スヴィリードフが得意とした、教会の鐘の響きや聖歌を思わせる和声感覚が現れています。
8. 第3楽章 アレグロ・ヴィーヴォ [4'48]
極めて技巧的で、推進力のあるフィナーレ。しばしば「プロコフィエフの戦争ソナタ」との類似性が指摘されるほど、スリリングで強大なエネルギーに満ちています。
レヴォリ・ブーニン (1924-1976)
◆ソナチネ(1939)
レヴォリ・ブーニン(スタニスラフ・ブーニン、ヴラジーミル・ブーニンとは無関係)は、ショスタコーヴィチが最も初期に教えた弟子の一人であり、その鋭い音楽的センスと大胆な語法で師を驚かせた人物です。彼は後にルドルフ・バルシャイらと協力し、ヴィオラ協奏曲などの傑作を残しましたが、ピアノ曲においてもその個性的な感覚を遺憾なく発揮しました。
9. アレグロ [3'05]
自由な三部形式。跳躍的な第1主題と穏やかな第2主題、展開的な中間部と、性格が変容した2つの主題の再現により構成。

ショスタコーヴィチ(1906-1975)
◆8つの前奏曲 Op.2(1920)
ショスタコーヴィチがペトログラード音楽院に入学したばかりの時期に書かれた、早熟な天才の記録。この作品は当初、音楽院の学友であるグリゴリー・クレメンツ、パヴェル・フェルトらと共に「24の前奏曲」を完成させるというプロジェクトの一環として書かれましたが、プロジェクト自体は未完に終わりました。
ショスタコーヴィチはその際に書いた自分の8曲をOp.2としてまとめ、まだ13歳だった1920年5月8日に、ペトログラード(現・サンクトペテルブルク)の「芸術の家」で自身の演奏により初演。
10. 第1番 アジタート [1'50]
ト短調。激しく、不安げな動き。画家のボリス・クストーディエフに献呈。
11. 第2番 アンダンテ [1'16]
ト長調。旋法的な響きを持つ抒情的な小品。実姉のマリアに献呈。
12. 第3番 アレグロ・ノン・トロッポ・エ・フリオーゾ [1'11]
ホ短調。激情的で荒々しい表情。実姉のマリアに献呈。
13. 第4番 アレグレット [0'35]
変ロ長調。軽快で皮肉めいた性格。実姉のマリアに献呈。
14. 第5番 アレグロ・モルト [0'49]
イ短調。急速なテンポによる練習曲的な性格。実姉のマリアに献呈。
15. 第6番 アンダンテ [1'36]
ヘ短調。深い悲哀を感じさせる緩徐曲。ナターリャ・クーベに献呈。
16. 第7番 モデラート [1'28]
変ニ長調。落ち着いた、思索的な響き。ナターリャ・クーベに献呈。
17. 第8番 アレグレット [0'48]
変ニ長調。軽やかな終曲。ナターリャ・クーベに献呈。

ショスタコーヴィチ(1906-1975)
◆グリンカの主題による変奏曲より (1957)
グリンカ没後100周年を記念するオマージュ作品として、ソ連作曲家同盟の主導で企画。ショスタコーヴィチを含む8名の作曲家(カップ、シェバリーン、エシュパイ、シチェドリン、スヴィリードフ、レヴィチン、カバレフスキー)が参加し、グリンカのオペラ「皇帝に捧げし命(イワン・スサーニン)」のアリアを主題とした変奏曲を完成。
全体は主題と11の変奏から成りますが、ここではショスタコーヴィチの担当した第8変奏、第9変奏、第11変奏を収録しています。
18. 第8変奏、第9変奏、第11変奏 [6'06]
トラックが1つなので参考までにラップ・タイムを記しておきます。
0’01- 第8変奏 アダージョ:内省的で深い瞑想。
1’51- 第9変奏 アレグレット:軽快かつ諧謔的。
3’54- 第11変奏 フィナーレ:曲を締めくくる壮大なフィナーレ。

フェルナンダ・ダミアーノ(ピアノ)
録音:2025年1月17〜19日
場所:イタリア北部、ロンバルディア州、ベルナレッジョ、バルトーク・スタジオ
演奏者情報
フェルナンダ・ダミアーノ(ピアノ)
【生地】
◆1995年、南イタリアのターラントに誕生。
【学業】
◆17歳でバーリのピッチンニ音楽院を優秀な成績で卒業。
◆パヴィアのヴィッタディーニ高等音楽研究所で学位を取得。
【賞歴】
◆内外の多くのコンクールで入賞。
【仕事】
◆ソロのほか、室内楽でも演奏。
◆2017年からは母校のヴィッタディーニ高等音楽研究所で指導。
【録音】
◆CDは、Piano Classicsなどから発売。

トラックリスト
CD [55'55]
ショスタコーヴィチと弟子たち VOL.2
ワインベルク(1919-1996)
◆ピアノ・ソナタ 第2番 Op.8(1942)
1. 第1楽章 アレグロ [4'24]
2. 第2楽章 アレグレット [2'48]
3. 第3楽章 アダージョ [6'28]
4. 第4楽章 ヴィヴァーチェ [3'25]
ワインベルク(1919-1996)
◆ベルスーズ(子守歌)Op.1 (1935)
5. [5'01]
スヴィリードフ (1915-1998)
◆ピアノ・ソナタ (1944)
6. 第1楽章 アレグロ・ヴィーヴォ・エ・リゾルート [6'01]
7. 第2楽章 ラルゴ [4'07]
8. 第3楽章 アレグロ・ヴィーヴォ [4'48]
レヴォリ・ブーニン (1924-1976)
◆ソナチネ(1939)
9. [3'05]
ショスタコーヴィチ(1906-1975)
◆8つの前奏曲 Op.2(1920)
10. 第1番 アジタート [1'50]
11. 第2番 アンダンテ [1'16]
12. 第3番 アレグロ・ノン・トロッポ・エ・フリオーゾ [1'11]
13. 第4番 アレグレット [0'35]
14. 第5番 アレグロ・モルト [0'49]
15. 第6番 アンダンテ [1'36]
16. 第7番 モデラート [1'28]
17. 第8番 アレグレット [0'48]
ショスタコーヴィチ(1906-1975)
◆グリンカの主題による変奏曲 (1957)
18. [6'06]
フェルナンダ・ダミアーノ(ピアノ)
録音:2025年1月17〜19日
場所:イタリア北部、ロンバルディア州、ベルナレッジョ、バルトーク・スタジオ
Track list
DMITRI SHOSTAKOVICH 1906-1975
AND PUPILS, VOL. 2
Mieczysław Weinberg 1919-1996
Sonata No.2, Op.8
1 I. Allegro 4'24
2 II. Allegretto 2'48
3 III. Adagio 6'28
4 IV. Vivace 3'25
5 Berceuse, Op.1 5'01
Georgi Vasiljevitsj Sviridov 1915-1998
Sonata (1944)
6 I. Allegro vivo e risoluto 6'01
7 II. Largo 4'07
8 III. Allegro vivo 4'48
Revol Bunin 1924-1976
9 Sonatina 3'05
Dmitri Shostakovich 1906-1975
Eight Preludes, Op.2
10 I. Agitato 1'50
11 II. Andante 1'16
12 III. Allegro non troppo e furioso 1'11
13 IV. Allegretto 0'35
14 V. Allegro molto 0'49
15 VI. Andante 1'36
16 VII. Moderato 1'28
17. VIII. Allegretto 0'48
18 Variations on a Theme by Glinka 6'06
Fernanda Damiano piano
Recording: 17, 18, 19 January 2025, Bartók Studio, Bernareggio (MB), Italy