プッチーニはその生涯を通じて、実に、何千通という手紙を書いている。その内容は、プライベートなことから音楽や、彼の創り上げてきた作品に関することまで幅広い内容となっている。
私が本書を書こうとしたきっかけは、彼の三大オペラ《ラ・ボエーム、トスカ、蝶々夫人》を彼の手紙を中心に楽曲解説をしていくことで、スコアの裏側に秘められた、創作の過程や意図を読み解くことができるのではないかと思ったからだ。そしてまたそこに、プッチーニについての新たな発見があるのではないかとも思ったからだ。
ところが、膨大な量の手紙を見進めていくうちに、プッチーニという大作曲家の華々しいデビューに隠された、様々な苦悩についても語らなければならないような、そんな思いが心に湧いてきた。
彼の最初のオペラである《レ・ヴィッリ》は、私自身が藤原歌劇団で日本初演を振らせていただいたことがある。私にとって、実に思い出深い作品である。彼の作曲家としての誕生を書くとなれば、当然に最後の作品、《トゥーランドット》の劇的な初日のことまで触れるのは必然であろう。
プッチーニの全ての手紙を掲載することはもちろん出来ない。しかし、一部の手紙を通して見えてくる、彼の作曲家としての軌跡も少し追ってみたいとも思った。
それから本書では、曲目の解説の後に、「星出の雑談」として、公演の思い出、あるいはオペラの楽しみを、音楽家とはちょっと離れたところで書かせていただいた。
特に《バタフライ》においては、喜波貞子さんという、日本ではあまり知られていないが、ヨーロッパで活躍したソプラノ歌手の話も織り込ませていただいた。
ご協力いただいた方のお名前は、その都度、ご紹介させていただこうと思う。
こうして書き始めたこの本である。実際のところ、大芸術家の作品についてあれこれ書くのは失礼ではないかと思ったりもしたが、彼に電話で聞くことが出来るわけではないので、彼の我がままと、私の我がままとを思い切きりぶつけてみることにした。
因みに2004年は《バタフライ》初演から100周年を迎える。それを記念するとともに、《レ・ヴィッリ》初演でご一緒させていただいた、故・粟國安彦氏、東敦子女史、山路芳久氏……若くして亡くなられた皆様に、感謝を持ってこの本を捧げることができたら幸いである。
--------------------------------------------------------------------------------
●目 次
プッチーニオペラの世界
レ・ヴィッリ、日本初演(藤原歌劇団)の記録 …… 口絵1
ボエームの舞台芸術 …… 口絵2
トスカの舞台芸術 …… 口絵4
蝶々夫人、喜波貞子とワルシャワ国立劇場 …… 口絵6
はじめに ……2
第1章 天才劇場音楽家
プッチーニの軌跡 ―Storia della vita di Puccini― ……8
プッチーニの手紙 −Lettere di Puccini− ……19
プッチーニの十戒 −Il decalogo di Puccini− ……36
第2章 オペラ初作品の成功と影響
レ・ヴィッリ −Le Villi− ……50
星出の雑談 −レ・ヴィッリ ……68
第3章 愛と死の原点
ラ・ボエーム −La Boheme− ……72
ラ・ボエーム楽曲解説 ……87
星出の雑談 −ラ・ボエーム ……133
第4章 ヴェリズモ・オペラへの展開
トスカ −Tosca− ……138
トスカ楽曲解説 ……148
星出の雑談 −トスカ ……170
第5章 東方世界との融合
蝶々夫人 −Madama Butterfly− ……176
蝶々夫人楽曲解説 ……182
星出の雑談 −バタフライ ……214
トゥーランドット −Turandot− ……225
あとがき ……236
著者プロフィール
星出 豊(ほしで ゆたか)
1941年東京生まれ。指揮者。昭和音楽大学教授。
東京声専音楽学校オペラ科修了(現:昭和音楽芸術学院)後、1969年渡独。ニュルンベルグ歌劇場にコレペティとして務め、1970年ウェーバー作曲「魔弾の射手」でヨーロッパ指揮デビュー。
日本では、新星日本交響楽団正指揮者及び財団理事を6年間務めるなどの傍ら、藤原歌劇団で「秘密の結婚」「妖精ヴィッリ」「イル・カンピエッロ」等の日本初演を行い、また日本オペラ協会では「綾の鼓」「祝い歌が流れる夜に」「天守物語」「あだ」他10本の初演を、さらに他団体を含めると52本の本邦初演を指揮するなど精力的な音楽活動を展開している有数な指揮者として知られており、とくに日本オペラ界への貢献では計りしれない実績を築きつつある。
近年、新国立劇場設立委員を務め、オープニングで團伊玖磨作曲「タケル」の指揮をし、また同劇場の研修所の設立に協力する傍ら、初代統括主任講師を務めたことなどは、その一端である。
Qui...amor...sempre con te!ここで…あなたと…ずっと一緒に!プッチーニが、台本作家の反対を押し切ってまで、自ら書き加えた死の直前の…ラ・ボエーム…ヒロイン;ミミのこの詞。…何故。
目次 : プッチーニオペラの世界/ 第1章 天才劇場音楽家/ 第2章 オペラ初作品の成功と影響/ 第3章 愛と死の原点/ 第4章 ヴェリズモ・オペラへの展開/ 第5章 東方世界との融合
【著者紹介】
星出豊 : 1941年東京生まれ。指揮者。昭和音楽大学教授。東京声専音楽学校オペラ科修了(現:昭和音楽芸術学院)後、1969年渡独。ニュルンベルグ歌劇場にコレペティとして務め、1970年ウェーバー作曲「魔弾の射手」でヨーロッパ指揮デビュー。日本では、新星日本交響楽団正指揮者及び財団理事を6年間務めるなどの傍ら、藤原歌劇団で「秘密の結婚」「妖精ヴィッリ」「イル・カンピエッロ」等の日本初演を行い、また日本オペラ協会では「綾の鼓」「祝い歌が流れる夜に」「天守物語」「あだ」他10本の初演を、さらに他団体を含めると52本の本邦初演を指揮するなど精力的な音楽活動を展開している有数な指揮者として知られており、とくに日本オペラ界への貢献では計りしれない実績を築きつつある。近年、新国立劇場設立委員を務め、オープニングで団伊玖麿作曲「タケル」の指揮をし、また同劇場の研修所の設立に協力する傍ら、初代統括主任講師を務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
(「BOOK」データベースより)