デイジー・ケネディ/英コロンビア&デュオフォン録音集
ヴァイオリンの歴史的音源を精力的に復刻する「Biddulph」、最近は100年余り前の録音にまでアンテナを広げています。デイジー・ケネディは1893年1月にサウス・オーストラリアに生まれ、7歳からヴァイオリンを始めました。15歳の時にオーストラリアを訪れたヤン・クーベリックの目に留まり、彼が自らの師オタカール・シェフチークに推薦してプラハとウィーンで学ぶことになりました。1911年にウィーンとロンドンでデビューして成功を収め、その後はロンドンを拠点に活動。卓越した技巧に加え、彼女のステージでのパフォーマンスが強く人を惹きつけるものであったと伝えられています。第1次世界大戦前後の英国楽壇で、聴衆・作曲家・演奏家から最も人気のあった人物のひとりでしたが、人気ゆえの過密スケジュールがたたり、家庭の事情も相まって1937年に引退。1981年にロンドンで亡くなると、遺灰は故郷オーストラリアのアデレード・ヒルズに撒かれました。ナイジェル・ケネディは彼女のいとこの孫にあたります。
この時代の録音を聴く上で興味深いのは当時の演奏スタイルとレパートリーを伝えてくれること。ケネディの演奏は基本的に端正ですがポルタメントの使用が時代を感じさせます。速いテンポの曲での確かな技巧に加え、協奏曲の緩徐楽章で「純粋な感情、詩人の感性」と評された抒情的な表現も聴きもの。彼女は「19世紀と20世紀の音楽」と題したコンサート・シリーズを開催していましたが、1920年前後においては、それは「現代音楽」そのものでした。このアルバムにも録音当時には書かれて間もなかった作品が収録されており、資料としても貴重です。
レーベルによれば、当CDはデイジー・ケネディの正規録音すべてを収録しているとのことですが、それに加えてテスト盤が発見されたフバイの『Plevna nota』とクラカウアーの『パラダイス』は初出とのこと。ブックレットにはケネディの写真4点に加え、彼女のレコードの宣伝ポスター、そしてJonathan Woolfによる13ページにも及ぶ詳細で熱い共感のこもった解説(英語のみ)が掲載されています。(輸入元情報)
【収録情報】
Disc1
● 『英コロムビア録音集』
1. ベートーヴェン:ロマンス第1番ト長調 Op.40
録音:1919年 原盤:Columbia L 1340 (76560/61)
2. J.S.バッハ:G線上のアリア(ウィルヘルミ編)
録音:1919年 原盤:Columbia D 1406 (69390)
3. ルイ=トゥーサン・ミランドル:メヌエット(ブルメスター編)
録音:1919年 原盤:Columbia D 1405 (69479)
4. シューベルト:祈り(八重奏曲 D.803〜アンダンテ)
録音:1919年 原盤:Columbia D 1405 (69480)
5. シューベルト:子守歌 D.498(エルマン編)
録音:1917年 原盤:Columbia 2747 (65833)
6. シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第1番イ短調 Op.105
録音:1919年 原盤:Columbia L 1338 & 13339 (76508/10)
7. ブラームス:F.A.E.ソナタ〜スケルツォ
録音:1919年 原盤:Columbia L 1337 (76512)
8. ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調 Op.108〜アダージョ
録音:1919年 原盤:Columbia L 1337 (76511)
9. グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第1番ヘ長調 Op.8
録音:1922年6月23日 原盤:Columbia L 1440 (75111/12)
10. グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第2番ト長調 Op.13
録音:1919年 原盤:Columbia L 1336 (76513/14)
11. アイリーン・スレイドによるディジー・ケネディへのインタビュー
録音:1969年4月24日
デイジー・ケネディ(ヴァイオリン)
ハミルトン・ハーティ指揮オーケストラ(1)
ハミルトン・ハーティ(ピアノ:6-10)
ピアニスト不詳(2-5)
Disc2
1. サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28
録音:1919年 原盤:Columbia L 1335 (76558/59)
2. ザジツキ:マズルカ ト長調 Op.26
録音:1919年 原盤:Columbia L 1339 (76564
3. ドルドラ:舞曲 Op.96
録音:1916年 原盤:Columbia 2697 (35882)
4. ダンブロージオ:カンツォネッタ Op.6
録音:1917年 原盤:Columbia L 1371 (65831)
5. エセル・バーンズ:ぶらんこ
録音:1916年 原盤:Columbia 2697 (35885)
6. ミストフスキ:6つの小品による組曲〜ホーンパイプ
録音:1920年 原盤:Columbia D 1412 (69481)
7. コスロフ:フィンランドの牧歌 Op.5
録音:1916年 原盤:Columbia 2698 (65492)
8. コスロフ:Melodie tartare
録音:1917年 原盤:Columbia L 1371 (65832)
9. シドニー・ローゼンブルーム:ラメント
録音:1917年 原盤:Columbia 2747 (65489)
10. ローゼンブルーム:ワルツ・スケルツォ
録音:1917年 原盤:D 1412 (69483)
11. ナーンドル・ジョルト:とんぼ
録音:1919年 原盤:Columbia L 1406 (69842)
12. クライスラー:愛の喜び
録音:1916年 原盤:Columbia D 1373 (65491)
13. ジンバリスト:ロシアの舞曲
録音:1917年 原盤:Columbia D 1373 (65834)
14. ジンバリスト:ヘブライの旋律と舞曲
録音:1916年 原盤:Columbia 2698 (65490)
15. クラクアー:パラダイス(クライスラー編)
録音:1926年 previously unissued(未発表音源 WT 8432)
● 『デュオフォン録音集』
16. J.S.バッハ:パルティータ第3番ホ長調〜プレリュード(クライスラー編)
録音:1926年 原盤:Duophone GS 7006 (Dc 7594)
17. クレーマー:ワルツ(ブルメスター編)
録音:1926年 原盤:Duophone GS 7006 (Dc 7593)
18. ブラームス:ハンガリー舞曲第2番ニ短調(ヨアヒム編)
録音:1926年 原盤:Duophone GS 7004 (Dc 7595)
19. シリル・スコット:ダンス・ニグロ Op.58
録音:1926年 原盤:Duophone GS 7005 (Dc 7859)
20. ヨハン・ブランドル:古いリフレイン(クライスラー編)
録音:1926年 原盤:Duophone GS 7004 (Dc 7597)
21. 作曲者不詳:ロンドンデリーの歌(オコナー・モリス編)
録音:1926年 原盤:Duophone GS 7005 (Dc 7592)
22. フバイ:Plevna Nota op.1
録音:1926年 previously unissued(未発表音源 Dc 7857 and 7858)
デイジー・ケネディ(ヴァイオリン)
ハミルトン・ハーティ指揮、オーケストラ(1)
ピアニスト不詳(2-22)
復刻プロデューサー: Eric Wen
復刻エンジニア: Raymond Glaspole
マスタリング: Andrew Walter