ブクステフーデのエキスパートによる自在な演奏
ブクステフーデ:トリオ・ソナタ Op.1 & Op.2
ロジート(ヴァイオリン)、ホフマン(テノール・ガンバ、バス・ガンバ)、ステッラ(チェンバロ)
ブクステフーデの室内楽代表作、トリオ・ソナタ集は、イタリアから伝わった「スティルス・ファンタスティクス(幻想様式)」の技法が投影された傑作。ハンブルクで出版されたこれらのソナタ集には、計14曲のソナタが収められており、緩やかなテンポと速いテンポ、即興的かつ対位法的なテクスチャが交互に現れ、目を見張るようなオスティナートの変奏が旋律を聴き手の意識に刻み込みます。各楽器の機知に富んだソロや対話、軽快なシンコペーション、そして時折、奇妙で旋律的な和声へと展開するその表現は実に幅が広く、Op.1-6ではニ短調の暗黒と絶望の領域へと踏み込んでもいます。
先に発売された
ブクステフーデ・コレクション(17CD)では、アンサンブル・ファンタスティクスが正統的で完成度の高い演奏を聴かせていましたが、こちらはより自由でエモーショナルな演奏となっており、アルバム冒頭からずいぶん印象が異なります。
ブックレット (英語・16ページ)には、演奏のシモーネ・ステッラによるブクステフーデ情報と作品解説などが掲載。ブクステフーデのエキスパートならではの詳細な解説です。
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演奏者情報
ヴァレリオ・ロジート (ヴァイオリン)
ベッティーナ・ホフマン (ヴィオラ・ダ・ガンバ)
シモーネ・ステッラ (チェンバロ)
トラックリスト (収録作品と演奏者)
CD1 65'23
ディートリヒ・ブクステフーデ (1637-1707)
7つのトリオ・ソナタ Op.1
トリオ・ソナタ ヘ長調 Op.1-1 BuxWV 252 10'16
1. ヴィヴァーチェ – レント 2'25
2. アレグロ – アダージョ 3'07
3. アンダンテ 1'52
4. グラーヴェ – プレスト 2'52
トリオ・ソナタ ト長調 Op.1-2 BuxWV 253 8'07
5. レント – ヴィヴァーチェ 3'24
6. アダージョ – アレグロ 1'35
7. ラルゴ – アリオーゾ 3'08
トリオ・ソナタ イ短調 Op.1-3 BuxWV 254 10'53
8. アダージョ 2'10
9. アレグロ 1'55
10. レント – ヴィヴァーチェ 3'33
11. ラルゴ – プレスト – アダージョ 3'15
トリオ・ソナタ 変ロ長調 Op.1-4 BuxWV 255 8'47
12. ヴィヴァーチェ – アレグロ 5'11
13. レント – アレグロ 3'36
トリオ・ソナタ ハ長調 Op.1-5 BuxWV 256 9'40
14. ヴィヴァーチェ 1'38
15. ヴィオリーノ・ソロ – アレグロ 2'17
16. ラルゴ – アレグロ 2'53
17. アダージョ – アレグロ 2'52
トリオ・ソナタ ニ短調 Op.1-6 BuxWV 257 10'27
18. グラーヴェ – アレグロ 2'36
19. コン・ディスクレティオーネ – アダージョ 2'57
20. ヴィヴァーチェ – (コン・ディスクレティオーネ) アダージョ 1'54
21. ポコ・プレスト – ポコ・アダージョ – プレスト – レント 3'00
トリオ・ソナタ ホ短調 Op.1-7 BuxWV 258 7'00
22. アレグロ – ラルゴ 2'41
23. プレスト – ヴィヴァーチェ – アダージョ 2'12
24. ポコ・プレスト – レント – プレスティシモ 2'07
CD2 72'47
ディートリヒ・ブクステフーデ (1637-1707)
7つのトリオ・ソナタ Op.2
トリオ・ソナタ 変ロ長調 Op.2-1 BuxWV 259 9'15
1. アレグロ 1'17
2. アダージョ – アレグロ 2'29
3. グラーヴェ 1'59
4. ヴィヴァーチェ – レント 1'21
5. ポコ・アダージョ – プレスト 2'09
トリオ・ソナタ ニ長調 Op.2-2 BuxWV 260 13'15
6. アダージョ – アレグロ – ラルゴ 3'51
7. アリエッタ 7'01
8. ラルゴ – ヴィヴァーチェ 2'23
トリオ・ソナタ ト短調 Op.2-3 BuxWV 261 12'20
9. ヴィヴァーチェ – レント 2'58
10. アレグロ – レント 1'32
11. アンダンテ 4'19
12. グラーヴェ – ジーグ 3'31
トリオ・ソナタ ハ短調 Op.2-4 BuxWV 262 8'45
13. ポコ・アダージョ 1'30
14. アレグロ – レント 2'23
15. 3/4 – ヴィヴァーチェ 4'52
トリオ・ソナタ イ長調 Op.2-5 BuxWV 263 10'05
16. アレグロ 1'00
17. ヴァイオリーノ・ソロ – コンシタート 3'35
18. アダージョ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソロ 1'14
19. アレグロ – アダージョ 1'37
20. 6/4 – ポコ・プレスト 2'39
トリオ・ソナタ ホ長調 Op.2-6 BuxWV 264 9'20
21. グラーヴェ – ヴィヴァーチェ 3'27
22. アダージョ – ポコ・プレスト – レント 3'59
23. アレグロ 1'54
トリオ・ソナタ ヘ長調 Op.2-7 BuxWV 265 9'33
24. アダージョ – 4/4 3'33
25. レント – ヴィヴァーチェ 2'48
26. ラルゴ – アレグロ 3'12
ヴァレリオ・ロジート (ヴァイオリン)
ベッティーナ・ホフマン (ヴィオラ・ダ・ガンバ)
シモーネ・ステッラ (チェンバロ)
使用楽器
ヴァイオリン:ピエール・ロレンツォ・ヴァンジェリスティ (フィレンツェ、1741年)
バス・ガンバ:フランソワ・ボダル製作ニコラ・ベルトラ・モデル (パリ、1700年頃)
テノール・ガンバ (Op.2-1):カリオン・ルテリー製作パウル・ヒルツ・モデル (ニュルンベルク、1656年)
チェンバロ:ジム・ホール製作アンリ・エムシュ・モデル (パリ、1761年)
録音:2022年4月1日〜3日、10日〜17日、イタリア、フィレンツェ、ステラ・レコーディング・スタジオ
Track list
CD1 65'23
TRIO SONATAS Op.1
Sonata No.1 in F BuxWV 252
1. Vivace – Lento 2'25
2. Allegro – Adagio 3'07
3. Andante 1'52
4. Grave – Presto 2'52
Sonata No.2 in G BuxWV 253
5. Lento – Vivace 3'24
6. Adagio – Allegro 1'35
7. Largo – Arioso 3'08
Sonata No.3 in A minor BuxWV 254
8. Adagio 2'10
9. Allegro 1'55
10. Lento – Vivace 3'33
11. Largo – Presto – Adagio 3'15
Sonata No.4 in B flat BuxWV 255
12. Vivace – Allegro 5'11
13. Lento – Allegro 3'36
Sonata No.5 in C BuxWV 256
14. Vivace 1'38
15. Violino solo – Allegro 2'17
16. Largo – Allegro 2'53
17. Adagio – Allegro 2'52
Sonata No.6 in D minor BuxWV 257
18. Grave – Allegro 2'36
19. Con discretione – Adagio (Con discretione) – Adagio 2'57
20. Vivace – (Con discretione) Adagio 1'54
21. Poco presto – Poco Adagio – Presto – Lento 3'00
Sonata No.7 in E minor BuxWV 258
22. Allegro – Largo 2'41
23. Presto – Vivace - Adagio 2'12
24. Poco Presto – Lento – Prestissimo 2'07
CD2 72'47
TRIO SONATAS Op.2
Sonata No.1 in B flat BuxWV 259 *
1. Allegro 1'17
2. Adagio – Allegro 2'29
3. Grave 1'59
4. Vivace – Lento 1'21
5. Poco adagio – Presto 2'09
Sonata No.2 in D BuxWV 260
6. Adagio – Allegro – Largo 3'51
7. Arietta, Parte I-X 7'01
8. Largo – Vivace 2'23
Sonata No.3 in G minor BuxWV 261
9. Vivace – Lento 2'58
10. Allegro – Lento 1'32
11. Andante 4'19
12. Grave – Gigue 3'31
Sonata No.4 in C minor BuxWV 262
13. Poco adagio 1'30
14. Allegro – Lento 2'23
15. 3/4 – Vivace 4'52
Sonata No.5 in A BuxWV 263
16. Allegro 1'00
17. Violino solo – Concitato 3'35
18. Adagio: Viola da gamba solo 1'14
19. Allegro – Adagio 1'37
20. 6/4 – Poco presto 2'39
Sonata No.6 in E BuxWV 264
21. Grave – Vivace 3'27
22. Adagio – Poco presto – Lento 3'59
23. Allegro 1'54
Sonata No.7 in F BuxWV 265
24. Adagio – 4/4 3'33
25. Lento – Vivace 2'48
26. Largo – Allegro 3'12
Valerio Losito violin
by Pier Lorenzo Vangelisti, Florence 1741
Bettina Hoffmann viola da gamba
Bass viola da gamba by François Bodart after Nicolas Bertrand (Paris, ca.1700);
(*) tenor viola da gamba by Ca' Rion Lutherie after Paul Hiltz (Nürnberg, 1656)
Simone Stella harpsichord
by Jim Hall after Henri Hemsch (Paris, 1761)
Recording: 1-3 & 10-17 April 2022, Stella Recording Studio, Florence, Italy

作曲者情報
地域別
ブクステフーデの生涯は、デンマーク時代が約31年、ドイツ時代が約39年と別れているので、以下に地域別にまとめておきます。
オルデスロー (デンマーク王国)
ブクステフーデ一族が100年以上居住
ブクステフーデの先祖が暮らし、父ヨハンも誕生し、教会オルガニストとなったところ。
場所
デンマーク王国領ホルシュタイン公国南東部に位置。神聖ローマ帝国の帝国自由都市リューベック近郊。現在はドイツ連邦共和国シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州バート・オルデスロー。
1500年代初頭
◆ブクステフーデ家が居住開始。
1565年
◆祖父ディートリヒ・ブクステフーデがオルデスローの評議員に任命。
1590年
◆祖父ディートリヒがオルデスローの評議員を退任。
1602年
◆父ヨハン (デンマーク名:ハンス・イェンセン)・ブクステフーデ[1602-1674]が誕生。
1633年頃
◆父ヨハンが教会オルガン奏者を退任。
ヘルシンボリ (デンマーク王国)
ブクステフーデ誕生の地、4年間居住
父が聖マリア教会のオルガン奏者に任命され家族で転入。ブクステフーデが4歳のときに、狭い海峡を挟んで向かい側のヘルシンゲルに転出。
場所
デンマーク王国東部。オルデスローの北北東約290kmに位置。現在はスウェーデン王国スコーネ地方ヘルシンボリ。
1633年頃
◆父ヨハンが家族とヘルシンボリに転居。
◆父ヨハンが聖マリア教会 (ヘルシンボリ)のオルガン奏者に任命。
1637年頃
◆
ディートリヒ・ブクステフーデ誕生。デンマーク名はディデリク。母はヘレ・ブクステフーデ (旧姓:イェスパースダーター)[1610-1671]。
1641年
◆父ヨハンが聖マリア教会 (ヘルシンボリ)のオルガン奏者を退任。
ヘルシンゲル (デンマーク王国)
ブクステフーデ、学びの地、17年間居住
父ヨハンの転勤に伴い転入。ブクステフーデは教会やラテン語学校で学んでいます。
場所
デンマーク王国東部の都市。幅4kmほどのエーレスンド海峡最狭部の西側に位置。東側はヘルシンボリ。現在はデンマーク王国デンマーク首都地域ヘルシンゲル (ヘルシンウア)。
1641年
◆父ヨハンが家族と海峡を渡り、ヘルシンゲルに転居。
◆父ヨハンが聖オライ教会オルガン奏者に任命。
ヘルシンボリ (デンマーク王国)
ブクステフーデ初の定職は戦時下の2年間
1658年に初めて教会オルガニスト職に就いてまもなく開戦。1660年には住居を破壊されています。
場所
デンマーク王国東部の都市。幅4kmほどのエーレスンド海峡最狭部の東側に位置。西側はヘルシンゲル。現在はスウェーデン王国スコーネ地方ヘルシンボリ。
1658年
◆ブクステフーデ、聖マリア教会 (ヘルシンボリ)のオルガン奏者に任命。年俸は75リグスダラーで、他に燃料手当と宿泊費無料という条件でしたが、物価に比して安かったのか、ブクステフーデは市議会議員に40リグスダラーの借金をしていました。
1658年
◆カール・グスタフ戦争、勃発。カール10世のスウェーデン軍が寒波で凍った海峡を渡り、シェラン島にあるコペンハーゲンを包囲し、フレデリク3世は降伏。しかしその後も戦闘は続き、紆余曲折の末、1660年にカール10世が37歳で急死したことで、スウェーデンが各国を相手に戦った「北方戦争」はやがて終りを迎えます。
1660年
◆ブクステフーデ、聖マリア教会 (ヘルシンボリ)のオルガン奏者を退任。スウェーデン軍によりブクステフーデの住居が破壊。ヘルシンボリはほどなくスウェーデン領となります。
ヘルシンゲル (デンマーク王国)
ヘルシンゲルのマリア教会で8年間在職
戦争が終わり、ブクステフーデを迎えたのはドイツ系会衆に支えられる聖マリア教会。ここで初めてブクステフーデの名が有名になります。
場所
デンマーク王国東部の都市。幅4kmほどのエーレスンド海峡最狭部の西側に位置。東側はヘルシンボリ。現在はデンマーク王国デンマーク首都地域ヘルシンゲル (ヘルシンウア)。
1660年
◆ブクステフーデ、聖マリア教会 (ヘルシンゲル)のオルガン奏者に任命。
1666年
◆2月12日、ブクステフーデ、コペンハーゲンを訪問。
1668年
◆ブクステフーデ、聖マリア教会 (ヘルシンゲル)のオルガン奏者を退任。
リューベック (神聖ローマ帝国)
ブクステフーデ、理想の職場に39年間在職
1668年に着任してから1707年に現役として亡くなるまで、仕事も家庭も最高の状態にありました。
場所
帝国自由都市。ヘルシンゲルの南南西約270km。近郊には一族の故郷オルデスローという位置。
1668年
◆4月11日、聖マリア教会 (リューベック)のオルガン奏者兼ヴェルクマイスターに任命。
◆7月23日、リューベック市民権取得。
◆8月3日、アンナ・マルガレータ・トゥンダーと結婚
1670年
◆BuxWV 124、作曲。
1671年
◆12月27日、ヘルシンゲルで母ヘレの葬儀。
◆BuxWV 76-1、作曲。
1672年
◆BuxWV 116、作曲。
1673年
◆BuxWV 115、作曲。
1674年
◆1月29日、聖マリア教会 (リューベック)で父ヨハンの葬儀。BuxWV 76-2、作曲。
◆BuxWV 123、作曲。
1675年
◆BuxWV 118
1677年
◆ BuxWV 61、作曲。
1678年
◆アーベントムジーケン、作曲。
1679年
◆約40人の歌手と楽器奏者が参加するアーベントムジーケン開催。
1680年
◆BuxWV 75、作曲。
◆BuxWV 119、作曲。
1681年
◆BuxWV 122、作曲。
◆ニコラウス・ブルーンス、ブクステフーデに師事。
1684年
◆ゲオルク・ディートリヒ・ライディングがブクステフーデに師事。
1687年
◆ハンブルクの聖ニコラス教会でシュニトガーオルガンを検査・試演。
1688年
◆フリードリヒ・ゴットリープ・クリンゲンベルクがブクステフーデに師事。
1694年
◆BuxWV 252-258、作曲。
1695年
◆BuxWV 117、作曲。
1696年
◆BuxWV 259-265、作曲。
1697年
◆フレデンハーゲン祭壇の奉納曲、作曲。
1698年
◆BuxWV 121、作曲。
1699年
◆パッヘルベル[1653-1706]がブクステフーデに「ヘクサコルドゥム・アポリニス」を献呈。
1700年
◆1月1日、帝国自由都市リューベックの繁栄を祈願するアーベントムジーケン開催。
1703年
◆8月17日、ヘンデル[1685-1759]とマッテゾン[1681-1764]がブクステフーデを訪問。
1705年
◆BuxWV 120、作曲。
◆J.S.バッハ[1685-1750]がブクステフーデを訪問。
1707年
◆5月9日、ブクステフーデ、死去。
◆5月16日、ブクステフーデ、埋葬。
