後期ナポリ楽派の巨星ピッチンニ。オペラ・アリア集の貴重な録音
かつて「OPUS111」レーベルで「ナポリの至宝(Tesori di Napori)」というシリーズで主に17〜18世紀のナポリ音楽を次々と録音し、その魅力を現代に伝えている名匠アントニオ・フロリオとその手兵カペラ・ネアポリターナ(旧名称:カペラ・デ・トゥルキーニ)が、世界の歌劇場で大活躍中のソプラノ、ローザ・フェオラを迎えて「PENTATONE」に初登場。後期ナポリ楽派の巨星ニコロ・ピッチンニのオペラ・アリア集です。
1728年、南イタリアのバーリで生まれたニコロ・ピッチンニは、ナポリでレオナルド・レオ、フランチェスコ・ドクランテに学び、20代半ばで最初のオペラを作曲。その後、1760年にローマで作曲、上演されたオペラ・ブッファ『チェッキーナ、または良い娘』が大成功を収め、オペラ作曲家としての名声を確立しました。その評判はフランスにも知れ渡り、マリー・アントワネットによってフランスに招かれました。当地ではグルックとライバルとされ、パリの貴族や有識者、市民たちがグルック派とピッチンニ派に分かれることになり、大きな論争を巻き起こしました。
いわゆる「グルック・ピッチンニ論争」として、やがて政治的側面も見せていくことになるこの音楽史上の論争の渦の中心にあったピッチンニですが、王立音楽学校の教授となるなどフランスでは確固たる地位を築き上げました。しかしフランス革命後には後ろ盾を失いナポリに帰還。その後はイタリア各地を転々としながら、最晩年にパリに戻り、その生涯を終えました。18世紀後半の音楽界に多大な影響を与えたピッチンニを記念して、生まれ故郷のバーリの音楽院にはその名前が冠されています。
このアルバムには、ピッチンニの主要なオペラからのアリアと管弦楽作品が収録されています。活動初期にナポリで書かれたナポリ語の作品から、ピエトロ・メタスタージオの有名な台本に作曲されたローマでのイタリア語の作品、フランス時代に書かれたフランス語の作品まで、ピッチンニの様々な時代の多様な作風を知ることできます。なお『おお、夜よ、神秘の女神よ』(トラック8)はバリゾッティによってイタリア語に訳され、編曲されて、有名な『イタリア歌曲集』に収められたことで知られています。
ローザ・フェオラは、ヨーロッパを中心に世界中の歌劇場で大活躍中のベル・カントを得意とする注目のソプラノ歌手。ナポリ近郊の街に生まれたフェオラは「私の出自を考えれば無視できない」とこの18世紀ナポリ出身の大作曲家の作品を歌う意義を強く感じ、録音に臨んだとのこと。いかにもナポリ的と言えるあふれる歌心と高い技巧性が融合したピッチンニのアリアを表現力豊かに歌い上げています。17〜18世紀のナポリ音楽のスペシャリストであるフロリオ率いるカペラ・ネアポリターナの演奏も、ピッチンニのアリアの内容に添うように練られた卓越した管弦楽法を感じさせてくれるすばらしいものです。
「グルック=ピッチンニ論争」で音楽史上に名を残すピッチンニですが、現在では少しずつ再評価が進んできているとはいえ、まだまだその作品が取り上げられることは多くはありません。ピッチンニの主要なオペラからすばらしい作品をセレクトし、すばらしい歌唱・演奏でよみがえらせたこのアルバムは大変貴重なものであるとともに、ピッチンニという作曲家の再評価を大きく促すものとなるでしょう。(輸入元情報)
【収録情報】
ピッチンニ:
1. 『見捨てられたディドーネ』(ローマ、1770年)第1幕第5場〜私は女王で、恋する人(ディドーネのアリア)
2. 『ラ・カプリチョーザ』(ローマ、1776年)第1幕第12場〜私の美しい人(ナンネッタのアリア)
3. 『ディドン』(フォンテーヌブローとパリ、1783年)第2幕第3場〜ああ、どれほど感激したことでしょう(ディドンのアリア)
4. 『ゼノビア』(1756年、ナポリ)〜シンフォニア
5. 『許されたチーロ』(ナポリ、1759年)第1幕第5場〜あなたは私のものだった(チーロのアリア)
6. 『アルタセルセ』(ナポリ、1768年)第3幕第5場〜私が冷酷だと?(マンダーネのアリア)
7. 『ラ・スキアヴァ(奴隷の娘)』(ローマ、1776年)アンダンテ・コン・モート
8. 『偽の貴族』(フォンテーヌブロー、1783年)第1幕第7場〜おお、夜よ、神秘の女神よ(イレーヌのアリア)
9. 『仕返しした女たち』(ローマ、1763年)序曲
10. 『アティス』(パリ、1780年)第2幕第8場〜震えろ、私を裏切った恩知らずめ(シベールのアリア)
11. 『偽のトルコ人』(ナポリ、1762年)〜アンダンティーノ・カンタービレ
12. 『ロ・ストラヴァガンテ』(ナポリ、1761年)第1幕第5場〜私の頭の中には一度だって(リゼッタのアリア、ナポリ語)
ローザ・フェオラ(ソプラノ)
カペラ・ネアポリターナ
アントニオ・フロリオ(指揮)
録音時期:2024年1月
録音場所:ナポリ、ドムス・アルス、サン・フランチェスコ・デッレ・モナケ教会
録音方式:ステレオ(デジタル)
ディジパック仕様