風刺画にもなった正統派メソッドのギター作曲家によるソナタ
フランチェスコ・モリーノ:ギター・ソナタ全集(2CD)
クラウディオ・ジュリアーニ(ギター)
ギター愛好家の「カルッリ派」と「モリーノ派」の人々が争っている風刺画で知られるギター作曲家、フランチェスコ・モリーノ[1768-1847の]によるギター・ソナタ全集。オーボエ、ヴィオラ、ヴァイオリン、ギターを演奏するモリーノが、ギターをメインにしたのは1819年にパリで成功した51歳の頃のこと。一方、ライヴァルのカルッリ[1770-1841]は、最初チェロを弾いていたものの、20歳から独学でギターを演奏し始め、30代からはプロとして活動、1808年にはパリに腰を落ち着け、同地のギター・ブームに一役買っています。
モリーノとカルッリが争ったという情報は実際には無いということなので、おそらく2人がそれぞれ出版していた教則本の内容が、ある重要な点で異なっていることと、それを巡って世間で意見が戦わされていたことを風刺画に仕立てたものと思われます。
風刺画が掲載された本「ラ・ギタロマニー(ギターマニアの意)」(シャルル・ド・マレスコ著)が出版されたのは1829年で、ギター愛好家たちが、カルッリのメソッド「左手の親指でも弦を押さえる」と、モリーノの正統派メソッド「左手の親指では弦は押さえない」をめぐって対立していたことを茶化したのでしょう。
ブックレット(英語・8ページ)には、演奏者のジュリアーニによる解説を掲載。
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作曲者情報
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フランチェスコ・モリーノ
1768年6月4日、サルデーニャ王国のトリノ近郊、イヴレアに誕生。父ジュゼッペはピエモンテの軍楽隊オーボエ奏者で、モリーノも1783年に15歳から軍楽隊でオーボエ、ヴィオラや理論を学び、10年後の1793年に軍楽隊を去っています。その間、1780年頃に有名なプニャーニにヴァイオリンの指導を受けたとされ、1786年には、18歳でトリノ王立劇場のオーケストラに入団して1789年までヴィオラ奏者として在籍するなどしていました。
しかし、1796年にナポレオン軍のイタリア遠征が始まると、トリノは破壊され、ピエモンテ軍も降伏。翌1797年にはジェノヴァが占領されてリグリア共和国となり、1798年にはトリノが占領されるなど混乱が続いています。
その頃、モリーノはスペインで活動しており、1796年から1797年にかけてはオーケストラの指揮などもしていました。
また、1803年にはパリのプレイエル社でヴァイオリン協奏曲を出版し、1807年頃からはフランス支配下にあるリグリア共和国のジェノヴァに滞在し、1812年から1817年にかけてギター教則本「ギター、またはリラのための新しい完全なメソッド」をパリで出版し、ギター独奏曲やギター室内楽も作曲。
1814年にはピエモンテ占領が終わって、新国王ヴィットリオ・エマヌエレ1世がトリノに再び宮廷を置き、王立楽団も再開。モリーノは、年俸400リラでヴァイオリニストに任命され、1816年にさらに500リラに昇給しますが、1818年、50歳を機に退職してパリに向かいます。
王立楽団での安定した地位を辞してまでモリーノをパリ向かわせたのは、おそらくギター教則本が評判となってドイツなどでも出版されるようになったからと考えられています。
モリーノは1819年頃からパリで、ギタリスト、ヴァイオリニスト、音楽教師、作曲家として活動。以後、79歳で亡くなるまでパリを拠点にしていましたが、ロンドンなどでも演奏しています。
演奏者情報
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クラウディオ・ジュリアーニ(ギター)
ローマ生まれ。ローマのサンタ・チェチーリア音楽院を卒業したのち、ギタリスト兼作曲家のアンジェロ・ジラルディーノに数年間学び、ロレンツォ・ペロージ国際高等音楽院を卒業。ソロと室内楽の両方で活動するほか、現代作品の委嘱演奏や、ドメニコ・スカルラッティの82のソナタ(2巻)とドメニコ・チマローザの30のソナタのギター編曲、ディアベッリのソナタのクリティカル・エディションも出版。
CDは、Brilliant classics、Da Vinci Classicsなどから発売。

トラックリスト (収録作品と演奏者)
フランチェスコ・モリーノ [1768-1847]
ギター・ソナタ全集
CD1 53'14
3つのソナタ Op.1
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ソナタ第1番
1. I. ロマンツェ:アンダンテ 1'28
2. II. ロンド:アレグレット 3'31
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ソナタ 第2番
3. I. ラルゴ 0'26
4. II. テーマ・コン・ヴァリアツィオーニ:アンダンテ 6'49
5. III. ロンド:アレグレット 1'38
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ソナタ第3番
6. I. アレグロ 3'55
7. II. ロンド:ポラッカ 2'33
3つのソナタ Op.6
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ソナタ第1番
8. I. アレグロ 4'14
9. II. アンダンテ 2'22
10. III. ロンド:カンタービレ・ノン・タント・アレグロ 3'32
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ソナタ第2番
11. I. アレグロ 6'13
12. II. ロンド アレグレット 3'21
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ソナタ第3番
13. I. アレグレット 6'34
14. II. テーマ・コン・ヴァリアツィオーニ:アンダンテ 6'14
CD2 49'29
3つのソナタ Op.15
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ソナタ第1番
1. I. アンダンテ・ソステヌート 1'15
2. II. テーマ・コン・ヴァリアツィオーニ:アンダンテ 7'40
3. III. ロンド アレグレット 5'29
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ソナタ第2番
4. I. ロマンス:アンダンテ 2'53
5. II. ロンド アレグレット 4'31
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ソナタ 第3番
6. I. マエストーゾ 1'15
7. II. アンダンテ・コン・ヴァリアツィオーニ 9'27
8. III. ロンド アレグレット 4'47
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華麗なる大ソナタ Op.51
9. I. 序奏:マエストーゾ・モルト〜アダージョ・ノン・トロッポ 4'30
10. II. ロンド:アレグレット・ヴィヴァーチェ 7'26
クラウディオ・ジュリアーニ(ギター)
録音:2023年6月(Op.1、Op.6)、10月(Op.15、Op.51)、イタリア、ローマ、サウンドメイカーズ・スタジオ
Track list
Francesco Molino 1768-1847
Complete Guitar Sonatas
CD1 53'14
TROIS SONATES FACILES OP.1
Sonata No.1
1 I. Romanze: Andante 1'28
2 II. Rondò: Allegretto 3'31
Sonata No.2
3 I. Largo 0'26
4 II. Tema con variazioni: Andante 6'49
5 III. Rondò: Allegretto 1'38
Sonata No.3
6 I. Allegro 3'55
7 II. Rondò: Polacca 2'33
TROIS SONATES OP.6
Sonata No.1
8 I. Allegro 4'14
9 II. Andante 2'22
10 III. Rondo: Cantabile non tanto allegro 3'32
Sonata No.2
11 I. Allegro 6'13
12 II. Rondò: Allegretto 3'21
Sonata No.3
13 I. Allegretto 6'34
14 II. Tema con variazioni: Andante 6'14
CD2 49'29
TROIS SONATES OP.15
Sonata No.1
1 I. Andante sostenuto 1'15
2 II. Tema con variazioni: Andante 7'40
3 III. Rondò: Allegretto 5'29
Sonata No.2
4 I. Romance: Andante 2'53
5 II. Rondò: Allegretto 4'31
Sonata No.3
6 I. Maestoso 1'15
7 II. Andante con variazioni 9'27
8 III. Rondò: Allegretto 4'47
GRANDE SONATE TRÈS BRILLANTE OP.51
9 I. Introduction: Maestoso molto – Adagio non troppo 4'30
10 II. Rondò: Allegretto vivace 7'26
Claudio Giuliani guitar
Recording: June (Opp. 1 & 6), October (Opp. 15 & 51) 2023, SoundMakers Studio, Rome, Italy