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波の上のキネマ 集英社文庫

増山実

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784087442021
ISBN 10 : 4087442020
Format
Books
Publisher
Release Date
January/2021
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:
増山実 ,  

Content Description

尼崎の小さな映画館を父親から引き継いだ安室俊介は、不動産業者から、閉館と買収の話をたびたび持ちかけられていた。座席数100余りの小さな映画館は戦後間もない時期に祖父が始めたが、収益を上げることは年々難しくなっている。迷いつつも閉館するしかないと考えた俊介だったが、新聞記者からの取材には、まだ正式には決めていないと話した。だが新聞には「年内に閉館する見通し」との記事が出てしまう。記事の反響は大きく、マスコミからの取材が殺到したが、俊介はすべて断った。
そんなある日、創業者である祖父の名前を出した問い合わせが入る。電話の主は台湾に住む男で、彼の祖父が俊介の祖父と知り合いだったという。俊介は祖父の前半生を知らなかった。閉館にあたり映画館の歴史を調べようとしていた俊介は、男から驚くべき事実を告げられる。尼崎に生まれた祖父は若い頃、ある島で強制的に働かされていた。そして、祖父たちがいた場所は、当時、脱出不可能と言われ、密林の中に映画館があったというのだ。
なぜ祖父はその場所に行ったのか。どのようにそこから脱出し、なぜ映画館を始めたのか。
創業者である祖父の若かりし日々を追って、俊介はその場所に向かう。
歴史のうねりと個人の生が紡ぎだす、感動と興奮の長編小説。


【著者略歴】
増山 実(ますやま・みのる)
1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。2012年に「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補となり、それを改題した『勇者たちへの伝言』で2013年にデビュー。同作は2016年に「第4回大阪ほんま本大賞」を受賞した。他の著書に『空の走者たち』(2014年)、『風よ僕らに海の歌を』(2017年)がある。


【著者紹介】
増山実 : 1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。2012年に「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補となり、それを改題した『勇者たちへの伝言』で13年にデビュー。同作は16年に「第4回大阪ほんま本大賞」を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • モルク

    祖父が始めた尼崎の映画館「波の上キネマ」、3代目俊介は閉館を決意するが、その前になぜ祖父が映画館を作ったのか知りたいと思い祖父の半生を追う。シネコンの台頭、デジタル化などの設備投資が高額であることにより以前は町に溢れていた映画館がどんどん減っている。その再生の話かと思ったが、とんでもなく大きなスケールだった。生活に困っていた祖父(青年)が騙されて西表島の炭鉱で悲惨極まりない作業をする。そのジャングルの中に映画館が…なぜ?どのように…言葉に言い表せないほどの感動。古い映画をじっくり見たくなった。

  • 里愛乍

    映画館で観る映画が好きだ。話題作をシネコンで観るのもいいけど、お気に入りの映画館でふらりと立ち寄って出会うのもいい。柄本のじいさんが語る世代を微ながら覚えているからだろうか、懐かしさに込み上げてくるものがある。だけど本作はそんなノスタルジーに浸ってるだけではすまなかった。こんな過酷な労働?があろうかと凄まじさに息を呑むばかりである。そんな人間の感覚すら失う毎日に感情を取り戻してくれたのは音楽であり映画だった。人間の生活に何が大切か、切り離してはいけないか、このご時世に改めて考えさせてくれたと思う。

  • トラキチ

    再読。増山さんの作品は歴史を追体験出来ます。本作では閉館を決めている尼崎の単館系の映画館のオーナーが、あるきっかけから映画館をオープンさせた祖父のことを遡ります。そこで一筋縄でない祖父の経験を知ることとなりますが、読者も然りですね。舞台は西表島、石炭発掘のために過酷な強制労働が描かれます。作中の言葉を借りれば、多くの人が日本の近代化の犠牲となります。参考文献も多く、実話を元にして作られてるので感慨深さはより深いです。それと、各章映画のタイトル名がつけられていて、作者の映画に対する造詣深さが伺い知れます。

  • Walhalla

    尼崎市の立花にある小さな映画館をめぐって物語が始まります。フィルムを映写する方式だったものがデジタル化され、設備費を工面できない個人経営の多くの映画館が廃業に追い込まれていきます。序盤はそんなストーリーでしたが、中盤に差し掛かるあたりから、舞台は戦前の西表炭鉱へとガラッと移りますので、ちょっと驚きですね。祖父が映画館をはじめたのは、日本の近代化の犠牲とも言える、この過酷な炭鉱での生活が一つのきっかけになっていたようで、とても感慨深いです。増山実さんの作品内で描かれる史実は、勉強になります。

  • JUN

    友人にもらった本。西表島の炭鉱の話。実際に、こんな悲惨で過酷な牢獄のような場所があったんだろうな。

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