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ジャズ定盤入門 =第五回=

Monday, January 4th 2010

  「再びジョン・コルトレーンに志す」 〜 ソプラノは笛ギター
john coltrane

 まだ聴いてないのは「ソプラノ・サックス」である。毎度のごとくジャズ担当者に相談してみると「ソプラノならコルトレーンはハズせないんですけどね」と言われてしまった。連載第二回で取り上げた名前だが、「二回同じ人を出してはダメ」などというルールもこだわりもなく、いいアルバムが聴ければそれでいいので、再びコルトレーンのアルバムを聴いてみることにした。

 今回選んでもらったコルトレーンの1枚は『マイ・フェイヴァリット・シングス〜コルトレーン・アット・ニューポート(My Favorite Things: Coltrane At Newport)』というライブ盤で、63年と65年にニューポート・ジャズ・フェスティヴァルに出演した際の音源を1枚にまとめたもの。没後40周年企画として2007年に発売されたアルバムである。

kenny Gウツボカズラ  まずはジャケットを見て「あれ?」と思う。サックスと言えば、あのウツボカズラのような独特の曲線美しかイメージになかったのだが、コルトレーンが咥えている楽器は“まっすぐ”ではないか。思い返せば、以前おすすめの一枚に入っていた『インプレッションズ(Impressions)』のジャケット写真でのそれも“まっすぐ”であった。そのときは「この人はクラリネットも吹くんだな」ぐらいに思っていたのだが、どうやらソプラノ・サックスは“まっすぐ”らしい。私が「ソプラノ・サックス」と言われて思いつく名前はケニー・Gぐらいだが、「この人はソプラノ・サックスで有名なのに、何故いつもクラリネットばかり吹いているんだろう」と長年ずっと思っていた。たいがいである。

Impressions さて、まずは以前ジャズ担当者が「曲がいい!」と薦めてくれた、前述の『インプレッションズ』(63年)から聴いてみた。1曲目の「インディア(India)」がソプラノ・サックスでの演奏であるが、音色のせいなのか、タイトルのせいなのか、なんとなく神秘的な印象を受ける。延々と続く即興はいわゆる「おしゃれなジャズ」でないと思うが、私はこういうほうが好きである。さらに圧倒されたのが3曲目の「インプレッションズ(Impressions)」。コルトレーンのテナー・サックスはもちろんだが、ドラムの「ドカドカ感」がいい。15分にも及ぶ曲だがサックスとドラムの絶妙なブッ飛び具合が一瞬もダレさせない。4曲目「アフター・ザ・レイン(After the Rain)」でのクールダウンぶりも絶妙で、聴き応えのある実に素晴らしいアルバムであった。

 そして、お次は今回のお題の『マイ・フェイヴァリット・シングス〜コルトレーン・アット・ニューポート』。いかにもジャズといった感じのスムースな感じで始まり芸術的な完成度で吹きまくるテナー・サックスが聴ける1曲目「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー(I Want To Talk About You)」は9分半ほどある曲だが、 My Favorite Things: Coltrane At Newport特に6分あたりから最後まで文字通り“独り”で吹きまくるソロが圧巻。そして2曲目の「マイ・フェイヴァリット・シングス(My Favorite Things)」だが、明らかに音色が違うので「これはソプラノだな」と思う。なんとなくコブラを呼び出すときの笛の音を思い出す。 Revolver「レッドスネーク・カモン」的である。これは17分と長い曲だが、9分台から約8分間の吹きまくりは鬼気迫るものがある。3曲目はさきほどのアルバムでも聴いた「インプレッションズ」で、このライブ・バージョンは23分にも及ぶさらに圧倒的な熱演だった。ここまでの3曲が63年のライブで、残りの2曲が65年のものなのだが、2曲目でも聴いたソプラノの「マイ・フェイヴァリット・シングス」が再び聴ける。63年のもスゴかったが、65年のもスゴい。特に後半のソプラノの音は、『リヴォルバー』(66年)あたりのビートルズの「テープ逆回転」の音までも彷彿とさせる、尋常じゃない音色である。

ピューと吹く!ジャガー 突然マンガの話で恐縮だが、週刊少年ジャンプに「ピューと吹く!ジャガー」というギャグマンガがある。主人公のジャガーは「たてぶえ」の名人で「たてぶえ」でエレキ・ギターの「ギュイーン」という音を出してしまう。

 なにが言いたいかというと、私はこのライブ盤の二つの「マイ・フェイヴァリット・シングス」を聴いて、コルトレーンのソプラノに「ロック」を、そして「ギター」を感じたのだ。ジャガーの笛の音はきっとこんな音に違いない。63年のロックというと、まだビートルズは『プリーズ・プリーズ・ミー』でデビューしたて、65年でもまだ『ラバー・ソウル』であるが、ジャズの世界はもうこの神がかりな、今となってはギャグマンガの中でしかありえない域に達していいたことにすっかり驚嘆させられた。コルトレーンが「偉大」と呼ばれるわけが、ジャズ・リスナーにとりわけコルトレーン崇拝者が多いわけが、ようやく少しだけ判った気がするのである。

steve lacy reflections  では「コルトレーン以外に、ソプラノで有名な人はいるのか?」の質問を担当者にぶつけてみると「ソプラノはスティーヴ・レイシーの専売特許です」とのことで、58年作の『リフレクションズ-プレイズ・セロニアス・モンク(Reflections -Plays Thelonious)』というアルバムを選んでくれた。

 コルトレーンの神がかりな音をみっちり聴いたあとのせいか、非常に(いい意味で)軽く耳に馴染む。ソプラノの高い音は、ややもすると素っ頓狂でピーヒャララな感じになってしまうのではないかと思うが、このアルバムは洗練されていて「おしゃれなジャズ」としてもいい感じに聴けた。

 あたりまえであるが、同じサックスでも、吹く人によってかなりイメージが違って聴こえる。そのあたりがやっぱりギターに似ているな、と改めて思うのであった。

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JAZZ INDEX
* Point ratios listed below are the case
for Bronze / Gold / Platinum Stage.  

今回の主役の「定盤」

My Favorite Things: Coltrane At Newport

CD Import

My Favorite Things: Coltrane At Newport

John Coltrane

User Review :5 points (13 reviews) ★★★★★

Price (tax incl.): ¥1,870
Member Price
(tax incl.): ¥1,627

Release Date:29/June/2007

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