ジム・オルーク インタビュー2

2009年10月5日 (月)

interview

Jim O'Rourke

2009年9月18日 HMV渋谷店にて
聞き手:村尾泰郎

---  今回、どれくらいの数の楽器を演奏したんですか?

 「フルート、クラリネット、チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリン、ペダル・スティール、ドラム、ピアノ……、いっぱい、いっぱいある。クラリネットとかフルートとかトロンボーンとか、そういう楽器はあんまりできない。それで、がんばろうと思いました。よく練習しました。サックスもある。少しだけ。いっぱい。楽器店みたい」

---ジムさんのアルバムを聞いていると、楽器の音の響かせ方がすごくナチュラルで、あまりエフェクトを加えないような録り方をしてるんですけど、レコーディングのこだわりはどんなところなんですか?

「それは一言では答えられない。長い答えになる(笑)。もちろん、ナチュラルな音は全部の楽器にとって違う。どのマイクをどこに置くか……。例えば、トロンボーンのナチュラルな音色がほしいなら、このマイクを使ってここに置いてというのがあるけど、自分のレコードだと、どの楽器が入ってるか分かってるし、トロンボーンがミックスでどのぐらいほしいか分かってるけど、リヴァーブを使いたくないので遠くに立って……。それはいつも違う。もちろん、仕事として別の人のレコードを録音する時は普通にナチュラルな音を録音する方がいい。でも、自分のものを作る時はその後の展開が分かってますから、どうやって録音するかはそういうことも関係があります」

--- 基本的にリヴァーブはあまり使わないというのは単に音としてあんまり好きじゃないからですか?

 「はい。あんまり好きじゃない。今回は前のレコードよりは使いました。わざと使いました。でも、あんまり好きじゃない」

--- 今回のアルバム・タイトル『ザ・ヴィジター』なんですけど、今回もニコラス・ローグの映画にちなんでというか、「地球に落ちてきた男」の主人公の作ったレコードのタイトルですよね? でも、映画の中ではあのレコードの音は出てこないじゃないですか。もしかして、ジムさんの中で『ザ・ヴィジター』ってこんな音なんじゃないかなっていうイメージがあったんですか?

  「いろいろな考えができるので好きだった。もちろん、自分の考えもあるけど、あんまり教えたくない。謎のままの方がいいと思う。でも、私の前のレコードの文脈で、ニコラス・ローグのあの映画を観てもらったら分かると思うけど、いろいろな可能性がある。少しパズルみたい。いろいろな理由があるけど、そういうわけでタイトルを決めました」

---今のところ全部ニコラス・ローグで来てるじゃないですか。収まりがつかなくなったんじゃないですか?

 「はい(笑)。多分、別の監督にしてたら良かったでしょう。仕方がない」

---『ザ・ヴィジター』ってある意味、今日本に来ているジムさん自身のイメージと重なるじゃないですか?

 「うーん。でも、私のレコードは私じゃない。そういう考えは全然分からなかった。例えば、ボブ・ディランの曲を聞くと歌詞の中で怒ってるけど、ボブ・ディランは聞いてる人に歌ってるんじゃない。私のレコードは私じゃない。私、人間としては関係ないと思う。自分の人生は表わしたくない。でも分かる。それは少し残念。そういう連想がよくある」

---そういう風に、みんながこうじゃないか、ああじゃないかといろいろイメージを膨らましてるのって楽しいですよね。

 でも、仕方がない。昔々、アメリカのスティーヴ・アルビニさんと喋った。多分、雑誌で、誰かがスティーヴにあの作品はひどいと言ったら、スティーヴは“あのスティーヴ・アルビニは私じゃない。あのスティーヴ・アルビニは外のスティーヴ・アルビニ。あのスティーヴ・アルビニと私は関係ない”と。分かる。すごく分かった。本当に関係ない。それから、頭のいい人と思いました」

---ジムさんとできた作品はどういう関係なんですか? できてしまったら、「どうぞみなさん、自由に解釈してください」という感じですか?

  「それを教えると、なぜ作るのかと思うでしょう。どういう関係……。でも、それは聞き手の役目じゃないと思う。詳しく教えると説教っぽいと思う。8割は分かるけど、残りは分からない。その方がいいと思う。私との関係は、わざと謎にしておいてください。みなさんはそれで、自分の人生とつなぐことができる」

--- 今回のアートワークなんですけど、『バッド・タイミング』のミラーボールがふたたびここに現れてる。これはジムさんのアイデアなんですか?

「はい、(ミラーボールは)亡くなったんです(笑)。昔々、次のレコードのデザインを決めてたけど、レコードを作らなかった(笑)。友だちの塩田さんが撮って日本で作った」

『Jim O'Rourke』
---  内容に関わらず、このデザインでやろうっていうことは決まってたんですか?

「はい。次のと、次の次のももう決めてる。長いプランがあります」

---ずっとミラーボールが出てくるわけじゃないですよね?

「多分、多分……」

--- このミラーボールは個人で持ってたんですか?

 「はい」

--- 壊れちゃってますよね?

「はい。自分で壊しました。まだ手に傷があります。手袋を使わなかった。バカです」

--- 本で好きな場所とか風景とかあったりするんですか?

「私よりみなさんの方が分かってるでしょう(笑)。“今年、一番好きな映画は何?”とか聞かれると頭がフリーズします。あ、渋谷にある! 串揚げ屋! 普通の店。でも大好き。秋吉。好きです。秋吉のピーマン揚げはものすごいと思う。最高です。大好き」

---ピーマン揚げでビールか日本酒か何か?

 「ビールは飲まない。変なアイルランド人でしょう」

--- そろそろ時間もうないようなので……。今回のアルバムって、スピーカーで空気を震わせて聞いた方が音の広がりとか音の濃さとかがすごく伝わると思うんですけど、お勧めの聞き方はありますか?

「ひとりでスピーカーの前に座って。私のだけじゃなく、全部の音楽はそういう風に聞く方がいいと思う」

---最後に、ジムさんからみなさんに一言いただいていいですか?

「秋吉のピーマン揚げ最高」(場内爆笑)

---今日はどうもありがとうございました。

「こちらこそ、ありがとうございました」

profile

1969年シカゴ生まれ。10代後半にデレク・ベイリーと出会い、ギターの即興演奏を本格的に始める。その後、実験的要素の強い自身の作品を発表、またジョン・フェイフィの作品をプロデュースする一方でガスター・デル・ソルやウィルコなど多数のプロジェクトに参加。99年にはフォークやミニマル音楽などをミックスしたソロ・アルバム『ユリイカ』を発表。近年ではソニック・ユースのメンバーとしても活動し、より広範な支持を得る。日本文化への造詣も深い。(CDジャーナル データベースより)