インストの逆襲!

2009年9月4日 (金)

  “インストゥメンタル”、ヴォーカルのない楽器のみの音楽。
現在インストバンドと呼ばれているバンドの多くはポストロック/マスロック系で、言ってみれば“ポストロック”がもはや死語と化し、そしてポストロックの中でも細分化し括れなくなってしまい、その中でもインストバンドが多く存在したので、もともと曖昧なポストロックの代わりにインストロックで無理やりまとめてしまった。。。
ただ、インストで括ってしまうとスペアザなどのジャム系のバンド一緒になってしまい話がややこしくなってきてしまいますが、ここではポストロックの流れを汲むインストバンドをご紹介!

 

インストの逆襲!

盛り上がりと下降を繰り返しながらも右上がりでシーンを侵食しているインストシーン。 そのインストシーンがここ日本で独自の進化を遂げすごいことになっています。

日本のインストシーンで欠かすことの出来ないのがポストロック黎明期から、日本より世界での評価が高いMONO。MOGWAI、GSYBEが完成させたポストロックのフォーマット。その中間をいくような彼らのサウンドはExplosions In The Skyとともにポストロック第二世代として世界的に注目を浴びた。その後も独自の世界観を追及、ストリングスを大胆に導入し、よりクラシカルになったサウンドは別次元のレベルに到達している。第5のメンバーともいえるエンジニア、スティーブ・アルビニとの相性も完璧で生々しく分厚い音はMONOの世界観を構築するのに重要な役割を担っている。彼らの魅力はなんと言ってもライブ。圧巻なライブは必見です。

また彼らのレーベルメイトであるWorld's end girlfriendは生バンド+エディットという形で、初期の世界観は保ちながらも大きくサウンドは変化。これまた世界的にも類を見ない唯一無二の壮大なサウンドスケープを鳴らしている。そして2年振りとなる新作はWEG史上初のサウンドラックとしてリリース。映画『空気人形』のサントラとして制作された今作は、通常のWEGと制作のコンセプト自体から異なり、実験色はやや弱めであるものの、WEGらしい、そして彼にしか出来ない美しくも儚い世界を構築している。
    CD
空気人形 オリジナル・サウンドトラック
world's end girlfriend
Turns Red EP

  LITE   CDマキシ
Turns Red EP
LITE
Turns Red EP
    そしてMONOとENVY、WEGが第一回で共演したMONO主催の“RaidWorld Festival”の第二回目に参戦した若手インストシーンの牽引者でもあるLITE
マスロック、ハードコアさらにはブレイクビーツまでも取り込み、圧倒的なテクニックで鳴らす彼ら。最新作『Turns Red Ep』ではシンセも導入しダンスミュージックへも接近、更なる進化を見せる。海外での活動も積極的に行い、DIY精神で、自らレーベルも設立、海外アーティストの招聘も行うなどそのオルタナティブな活動スタイルは最も注目を浴びており、また彼らの地道な活動が現在のインストシーンが脚光を浴びるに至った原因の一つでもあるといえる。もしも彼らがいなかったら現在のシーンはまた違った形になっていたかもしれないと思わせるほどの影響力をもっている。早くもLITEの影響を感じさせるバンドもアンダーグラウンドシーンでは登場しており、さらなる活躍、そして音楽的進化が楽しみなバンド。

またLITEと同様に自らレーベルを主催、現在のシーンの注目を浴びているのがsgt.
エレクトリック・ヴァイオリンを擁するsgt.はそのユニークな編成でユニークなサウンドを奏でる。クラシック、ノイズ、エモ、ジャズ、即興をごちゃ混ぜにした楽曲はインストシーンの中でも異彩を放っており本当の意味でジャンルレスと言えるであろう。壮大なスケールを持ちながらダンスミュージックとしても機能し、他に類をみない独特な存在感を光らせている。ダモ鈴木との共演や勝井祐二とも親交が深く次世代のインストシーンにおいて最重要バンドの一つともいえる。10月に発売されるニューアルバム『Capital of gravity』では再び4人編成と戻りさらに進化した音を聴かせてくれ。

彼らが主催するレーベルPenguinmarket には、sgt.ともメンバーが重なる大所帯バンド・旅団もおり、こちらはROVO人脈とも交流をおこない、音楽性もジャムバンド系に属しフェスなどで注目を集める。
    CD
Capital of gravity
sgt.
Capital of gravity
  sgt.  

  oaqk   CD
Munchen
oaqk
Munchen
    その他にも、以前MONO主催のレーベルHUMAN HIGHWAYから百景やFORT WAYNEらと共に初の日本人アーティストとしてコンピレーションアルバム『Mixing Of Landscape』に参加したoaqkも初のフルアルバム『Munchen』をリリース。重厚で壮大なサウンドスケープは長編映画を見ているような錯覚に陥る。ダークでヘヴィ、なおかつ荘厳さも感じさせる。

そしてLITEの武田信幸の実弟である直の所属するClean Of Coreはプログレに21世紀的な解釈を加え、さらにエモーショナルな要素を感じさせるその音は全く独自の路線を突き進んでいる。先日発売されたばかりの彼らの1stミニアルバム『Spectacle』はヨーロッパでのリリースも決定しており世界的な評価も気になるバンドである。
このように、ジャンル的には異なりながらも、特に意識するわけでもなく自然とインストバンドが集まってしまったPenguinmarketはインストシーンを語る上で欠かせないレーベルであろう。

CD
晴れ渡る絶望とパトス
Mermort Sounds Films
晴れ渡る絶望とパトス
    今なおその名を轟かすハードコアバンドKULARAのメンバーであった田中によって結成されたMermort sounds filmはその名のとおり映像とリンクしながらシネマティックなサウンドを鳴らす。ルーツであるハードコアの要素も時折感じさせながら、クラシカルな鍵盤の響き、ジャズ的なアプローチを感じさせるドラム、ダークでいながら美しさを感じさせるサウンドを創り出している。

ex-NINE DAYS WONDERの清田、川崎の2人を母体として結成されたmouse on the keysはジャズ的なアプローチに接近しながら、元々のハードコアの要素も感じさせ、さらにVJを擁しトータルコンセプト的な世界を創り上げている。また盟友とも呼べるtoe美濃氏のミキシングがmotkのストイックな世界を最大限に引き出している。
インストシーンの中でもクラブユーザーまでも探求できる、ダンスミュージックへの接近を一番している現在大注目のREGA。BATTLESとLOTUS足して、さらに独自の進化を遂げたような音は、ジャムバンド系のゆるいグルーブとはまた違い、アッパーでクラブミュージックのループ感、高揚感が絶妙にブレンドされとことん躍らせてくれる。

前述のoaqkとも親交の深いOVUMは数学的ともいえる美しい旋律を奏でる。オーガニックで暖かな響きを聴かせる百景。現在はwegバンドのギタリストとしても活躍する超絶ギタリストTAKUTO率いるabout tessはツインギター、ツインドラム、ツインベースという編成で轟音のダンスミュージックを鳴らす。

同じインストゥルメンタルという、ヴォーカルのいない楽器のみでの表現方法を選んだ彼らではあるが、ポストロックの洗礼を受けそこからさらに自らのルーツやあらたな表現方法の模索をはかり独自の進化を遂げている。

ともすればマニアックになりがちなこの手の音楽、またマニアックな音楽ファン達だけが好んで聴くというイメージがついてまあってしましますが、彼らの奏でる音楽は言葉がないだけに直に感情に訴えかけるものがあり、そして以外にもポップな要素も多くかね揃えています。
    CD
Rondorina
Rega
Rondorina
世界的にみてもこれだけ個性の強いバンド達が揃ったシーンもめずらしい、そして多くのバンドが世界にも目をむけ活動の範囲を広げています。確実に支持を得始めている日本のインストシーン。気になって方はぜひお手にとって一度聴いてみて下さい!