若杉弘さん死去

Wednesday, July 22nd 2009

日本を代表する指揮者、若杉弘さんが、７月２１日、東京都内の病院でお亡くなりになりました。日本ばかりでなくヨーロッパでも要職に就いて高く評価され、２００７年からは新国立劇場オペラ部門芸術監督を務めるなど、日本の音楽界を牽引した存在でした。

【プロフィール】
１９３５年５月３１日、父親が外務省駐米ニューヨーク総領事だったため、ニューヨークに生まれています。
　慶応大経済学部に入学し、混声合唱団楽友会に所属、音楽への情熱が昂じて同大学を中退し、１９６３年、東京芸術大学声楽科に入学し、さらに指揮科に転科。ほどなくチャンスに恵まれ東京交響楽団を指揮してデビューを飾ります。
　芸大卒業後すぐにＮＨＫ交響楽団指揮研究員となり、カイルベルト、ロイブナー、マタチッチ、サヴァリッシュ、アンセルメ、マルティノン、エレーデなどの薫陶を受けています。その後も二期会のオペラ公演の指揮などの活躍で注目を集め、ワーグナーの『パルジファル』日本初演の指揮により１９６７年度の毎日芸術賞を受賞しています。

　１９７７年にはケルン放送交響楽団の首席指揮者に就任し、数々の注目される公演で話題となります。
　以後、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、バイエルン放送交響楽団、ボストン交響楽団、モントリオール交響楽団など、主要なオーケストラに客演して、世界のコンサートで大活躍します。
　一方で、オペラを得意としていたこともあって、ライン・ドイツ・オペラ音楽総監督、ドレスデン国立歌劇場およびシュターツカペレ・ドレスデンの常任指揮者、バイエルン国立歌劇場指揮者、チューリヒ・トーンハレ協会の芸術総監督などの要職を歴任、クラシック音楽の「本場」とされるドイツ語圏での目覚しい活躍ぶりはよく知られていました。
　日本では、１９６５年に読売日本交響楽団常任指揮者、１９８６年から９５年まで東京都交響楽団音楽監督（８７年より首席指揮者兼務）。また、日本のオペラ界振興に尽力、東京室内歌劇場芸術監督、新国立劇場芸術参与、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール芸術監督を歴任、２００７年９月からは新国立劇場のオペラ部門芸術監督に就任。任期は２０１０年８月までの予定でした。

　海外で一流のキャリアを持つ日本人指揮者として、同年生まれの小澤征爾と並び称された若杉さんは、活動の初期からとりわけオペラに熱心に取り組みました。ワーグナーの『ラインの黄金』、『リエンツィ』、『ジークフリート』、『神々の黄昏』、『パルジファル』を日本初演、「初演魔」と言われるほど、日本の音楽界で遅れていたオペラに次々に光を当て、現代のオペラ・ブームの基礎を築いた功績は重要です。２００８年５月にはツィンマーマンの『兵士たち』を日本初演して話題を呼んだことは記憶に新しいところです。
　２００８年秋から体調を崩し、２００９年６月のショスタコーヴィチ：『ムツェンスク群のマクベス夫人』公演も降板、療養にあたっていると伝えられていました。ご冥福をお祈り致します。

若杉弘さん死去

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