9/2より動画メッセージを公開しました！寄席対談　〜第二幕〜

そりゃぁ、やっぱり志ん朝師匠ですよ。
私はね、あんまり落語知らないで育ったからね、
若い頃に何軒も寄席へ通って、この人の弟子になりたい！って決めたわけじゃなく、
高校の近くにあった公会堂へ初めて観に行った時、スカッとした感覚があったから、
１回の高座で決めたんですよ。
そんとき観たのが、うちの師匠。
そいういう意味で人生をガラッと変えたのは、志ん朝師匠ってことになるかな。

でもさ、そういうことを聞きたい訳じゃないんだよね？

あとは、義太夫の竹本朝重先生だね。

義太夫には「ひとこと」っていうのがあって、デーン♪って鳴ったら　「あ」から始めるン。
そしたら、先生が「ここは悲しい場面だから、もっと悲しく」って言うんだよ。
まだ「あ」しか言ってないのにさ...(笑)。

そんでまた、デーン♪って鳴って　「あ」から始めるン。
すかさず、先生が「声を低くすればイイってことじゃないから」って言うんだよ。
場面の細かい情景を詳しく説明してくれて、
デーン♪　「あ」って言うと、また、「...だからね」って(笑)。

何回も注意されながら練習するんですよ。
それによって、噺に対する向き合い方がガラッと変わった気がするね。

そうそう。
落語は、一言一言をそんなに大切にやってたらベタベタになっちゃうんだけど、
絵のデッサンみたいに、克明に描いていく作業がきっと大切なんだよ。
克明に描いたあと、紗をかける。そういう遊びが芸なんだよね。

そうそう。
克明に描くのって面倒くさくて手を抜いちゃうと、結局、面白くならないんだよね。

野球でも言えるけど、球にバットを当てにいく。
当たることは百も承知で、そのあと、どういう見せ方をするか、ってところを大事にしてる。
最初から見せ方ばっかり気にして個性を伸ばそうとすると、当たらないから、
球の打つ方向も間違ってしまう。

そもそも当たらないと、三文役者なんだよね。
ヒットを打った上で、芸をどう見せるか、っていうところが大事なんじゃないかな。