毛皮のマリーズ、新作は傑作です!

ROCK NEXT STANDARD

2009年3月27日 (金)

 
             
  Gloomy  

 

毛皮のマリーズ / 『Gloomy 』

 


 

 

「2008年のリンダリンダだ」と某ブログで絶賛されたシングル「ビューティフル / 愛する or die」の衝撃から5ヶ月、毛皮のマリーズの3枚目のフル・アルバムです。 一度はロックを捨てる決心をし、どん底まで落ちた志磨遼平が、再び蘇りロックを手にし、リハビリを兼ねて作成した渾身の一枚。ロックレジェンド達へのオマージュが随所に込められ、音楽性も広がった一大ロック絵巻!

 
序章
 
 
  このアルバムは怒りのアルバムであります。憎悪のアルバムであります。 輝く青春、無垢な未来をあきらめた、音楽に裏切られた人間の音楽に対する音楽の復讐であります。

我々はロックンロールさえあれば幸せでした。ロックンロールに全てを捧げてきました。困った事があればロックンロールさんが助けてくれると、そう聞いていました。
正義の味方、ロックンロール!
みんなのヒーロー、ロックンロール!
ロックンロールに敬礼を!ハイル・ロックンロール!

しかし、一昨年私が生まれて初めての挫折を味わった時、肝心のロックンロールは何の役にも立ちませんでした。
「そんなバカな」と後ろを振り返った私の目に映ったのは、ただ立ち尽くす完全に沈黙したデッカイだけのロボットのようなモノでした。
そしてこのパーチクリンな脳みそを“自殺”の二文字がよぎる日が来るなんて、まさか想像すらしていなかったコトでしたでした。

私はまさかギターなど持てず音楽も聴けず、周りの人間はメンバーですら信じられなくなっていました。 まるで生きる屍の私は、ただただ毎日を安い喫茶店でやり過ごし、そのまま世間ではもう11ヶ月ほど過ぎていました。そしてこんな屍がほぼ一年悩みぬいて唯一見出した光、かつての生気を取り戻す唯一の方法、それは結局またロックンロールだったのであります(文字にすると軽薄だが本人からすればそれは吐き気をもよおすような発見でした)。

私は怒りと憎悪を持ってスタジオに向かいました。実に8ヶ月ぶりのスタジオ作業でした。 そこで私は一気に“ビューティフル”、“愛する or die”、“宗教”の3曲を書き上げました。間髪あけず私は、残った全てを吐き出すためスタジオに篭ります。
腐った私にもう一度音楽への情熱を取り戻させたのは、かつて私に初めて音楽の素晴らしさを教えたザ・ビートルズの音楽でした。
いや、正確にいえば「憧れのビートルズになりきる」ことが私のリハビリテーションのようなモノだったのだと思われます。この頃の私の部屋はビートルズの研究本で溢れ返っていました。

『ラバーソウル』や『リボルバー』をわずか数週間で作り上げたビートルズよろしく、このアルバムの曲は全て1ヶ月内に作られています。もちろん詞・曲からアレンジ、録音に至るまで全てです。機材やアレンジ、録音法からレコーディング期間中のお洒落に至るまで、このアルバムはビートルズや60年代音楽の手法・精神を踏襲しています。

ソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉さん(key)の協力で、今回我々は4人の力以上に際限なく自由に作曲できたコトも特色の一つであります。ジェフ・エメリックばりの斬新且つ的確なミックスは1stからずっと我々のエンジニアを務めて頂いている奇才・DEWマキノさんです。このお二方の助力無くして今回のアルバムの完成はありませんでした。この場を借りて最大級の感謝と敬意を。

かくして出来上がった我々のサード・アルバムは、『Gloomy』と名付けました。「暗い、陰気な、ふさいだ、元気のない」という、私の1年を見事に言い表した英単語を冠した13の楽曲をどうぞお聴き下さい。

それでは次ページより、本題の全曲解説に入りたいと思います。どうか我々の未来がこれ以上の落胆と挫折無く、幸多からんことを。
(抜粋)

2009年1月 
毛皮のマリーズ/イエス・レコーズ 代表  志磨遼平


 
 
 
全曲解説
 
 
  1   『チャーチにて』

イントロダクション、幕開け、といったカンジの厳かでまさに陰鬱な詩のナンバーです。 唯一この曲のひな形のみ、前述した暗黒期に出来上がっておりアルバム用の曲出しもこの曲からでした。言わばこのアルバムの要め、定礎的な楽曲であります。 越川クンの十八番、ヴェルヴェッツ風の美しいこのアルペジオは、録音中何度もラップ音が鳴り(一度はハッキリ録音されていた)その度に中断せざるを得なかった、といういわくつきの呪われた楽曲を一曲目に持って来ました。 「試聴機で聴いた時に 『…エッ?俺、DISCボタン押し間違えた?』と二度見するような始まりが良い」というコトで、わざわざコレは一度録音したバンド編成ヴァージョン(今より少しテンポの速い、デレク&ドミノス風)をボツにしてまでアレンジを変え、録り直しています。 いつかそのラップ音とともにバンド編成ヴァージョンも世に出したいものです。 エンディングには、歌詞に合わせて『ジョンの魂』を彷彿させる鐘の音が入っています。
  2   『人間不信』
試聴

そしてここからが私の本領発揮であります。ファッキュー。 「ありったけの殺意と憎悪を込めて演奏してくれ」とメンバーに頼んだ、現代版ドゥーム・ラーガロック。タンブーラがとても効果的ですな。 冒頭、石間秀樹(元ビーバーズ〜F.T.B)もビックリのシタール・ギターは私が弾いています。ファッキュー。 中間部〜テーマに戻るバースの、神をも恐れぬサイテーの編集には一同作業中大笑いでありました。 地獄より最大級の悪意と侮辱を込めてお送りする一大ノイズ・オーケストラをどうぞお楽しみ下さいファッキュー。
 
 
  3   『愛する or die (Raw Ver.)』
試聴

先行シングルに収録されていたナンバーのアルバム・バージョン(再録)。 少しテンポが落ち、コーラス1.5割増し、音質は向上しております。コーラスにはレーベル社長も参加しております。魂の叫び、プライマル・スクリームであります。 すでにライブでは欠かせないレパートリー。
  4   『Honey Apple』

まるで69年1月30日のアップル・レコード本社屋上にタイムスリップしたかのような導入部、ライブ録音のロックンロール・ナンバー。 ゲスト・プレイヤー、奥野真哉先生(ソウル・フラワー・ユニオン)によるビリー・プレストンも真っ青のピアノがヒジョーにグルーヴしており、たまりませんな。 歌詞は、某携帯型デジタル音楽プレイヤーについて歌っています。ちなみにnanoの第4世代(16GB)、色は限定の赤。 普段は5000円以上の買い物をすると窒息する、という持病を持つ私が制作期間前に清水の舞台から飛び降りる覚悟で思い切って購入(印税で)、コレのおかげでアレンジ等のアイディア出しがとてもスムーズになり、かなり助けられました。レコーディングが終わった今でも常に文字通り持ち歩いており、アップルには本当に感謝しております。
 
 
  5   『ザ・フール』

ディキシーランド・ジャズ調の佳曲ですね。私が最も得意としているパターン、こういう曲ならナンボでも書けます。 ブラス・アレンジと鍵盤は奥野先生。流石!の一言です。アコーディオンのソロはアイリッシュ・パンクの雄、JUNIORのKatzeクン。 後半、可憐な女の子が掛け合いするコーラス・アレンジは数年前からずっと温めていた構想で、見事にサイケデリックな展開とマッチしています。
  6   『人生U』
試聴

世界の矛盾、しがらみ・汚辱・怠慢・惰性・破廉恥・下品・低脳・小さな枠で永遠にループするカビ臭いシステム! 若い僕らは開き直ろうと思います。開き直ってビー・アンビシャス、コレは毛皮のマリーズからではなく、僕達のジェネレーションからのメッセージ、最後通告であります。 演奏はスモール・フェイセスや初期ザ・フーのような大英帝国産R&Bサウンドを意識しました。下手クソなハープも私
 
 
  7   『God Only Heavy Metal』

きました!通称“ホワイト・アルバム”サウンド!声たかっ! ポールのあのカチカチしたベース音(本当はFenderベースYを使いたかったが入手できず)を使いたいが為だけに作った曲。 DEW “エメリック” マキノ先生の狂気のMIXにより、まさに求めていた通りの極悪サウンドが生まれました。 越川クンと私による地獄のファズ・サウンドは、なんとVOXのAC1(ミニアンプ)にコンデンサー・マイクを当てて録音! 1/30スケールの箱庭ヘルです。
  8   『超観念生命体私』

打って変わって、とても美しいピアノ・バラード。アナログならここからB面ですね。 前の世界との決別の歌です。決別、というのは静かに厳粛に行うべきものであり、それにはこういったムードが相応しく思います。 詩の内容もプライベートな、且つ清潔なバラードでありまして、SEBASTIAN X の工藤歩里さんに頼んで弾いて頂いたクラシカルなアップライト・ピアノがそのサナトリウムな清潔感をさらに引き立ててくれています。 ボーカルは70年代のビンテージのコンデンサー・マイクを顔と逆向きに立てて録ってみました。少し変わったフェイズ効果が得られ、しめしめであります。
 
 
  9   『小鳥と私』
試聴

やはり、『ラバーソウル』や『リボルバー』から影響を受けたアルバム、というからにはこういったナンバーも一曲は必要だろうと考え、書き上げました。 リッケンバッカーの12弦(借り物)が威力を発揮していますね。私の3声コーラスもなかなかであります。 歌詞は完全に語感のみのハナモゲラ語で書いて後から意味をつける、という私が初期から得意としているパターンですが、最終的にはなかなか面白いモノが出来上がってきました。なぜか『ラバーソウル』といえば、中学生の頃に父から借りた佐々木マキさんの挿絵が載った村上春樹の文庫本を思い出すのですが、その影響が出ているかもしれません。
  10   『恋をこえろ』

アルバムのだいたいの曲が上がってきた時期に、「やかましくて速い曲が無いとガッカリする人もいるかなー」というコトでサッと書いたナンバー。なので他の曲に比べ印象が薄い、というのが作者の正直な意見でありますが、イメージとしては Idol Punch とか Futures のような演奏と、それに釣り合うくらい“速い”言葉を羅列した鉄板ラブソング。というのが作りたかったのであります。 ここでいう『言葉が“速い”』というのは故・スキャットマンジョン的な意味ではなく、言葉が持つ速度・熱量のハナシであります。 そもそも「君へのラブソングを作ったよ。」なんていうのはちっともロマンチックではなく、全くダンドリの悪い話でありまして、作曲→アレンジ→録音→ミックス→マスタリング→プレス→プロモーション→流通→彼女の部屋のCDデッキへ、という工程を経るのにまァかるく半年はかかるワケで、そのあとも各媒体へのプロモーションやそのCDをひっさげての全国ツアーが始まります。みなさん来て下さいね。なんてってもうなんのこっちゃ私にはわかりません。そのあいだ彼女どーするんですか?皆さんは。ラブソングでは間に合わないワケです。 まぁそんなこんなもバカバカしくなるような、思いつく限りの愛の告白を2分半、アタマっからケツまで、というのがこの曲の趣旨です。これこそ僕らのモスト・ストロング・オブ・ザ・ラヴソン。であります。
 
 
  11   『平和』

このアルバム制作において最もアレンジにアタマを悩ませた楽曲であり、私の中でとてもとても重要な意味を持つ楽曲であります。 さまざまなパターンを試しましたが、CDに収録したのは奥野先生のメロトロンとハープシコードが印象的な通称「ストロベリー」と呼ばれていた(そのまんまですな)バージョン。4人では再現不可能なため、ライブでは違うアレンジでお送りする予定となっております。 わりと最初の方に出来上がった曲の一つで、まずはじめに歌い出しのサビのみがパッとひらめいたのですが、そのあとの詩はとても難産でした。結局この曲を一番最後の最後に回し、今回のレコーディングは去年のクリスマスにこの歌入れをもって無事終了したワケですが、1テイク目で恥ずかしながら自分の歌詞にうるるときちゃいまして、でもまァそういうテイクこそ使うべきだろう、と一発OKにしました。 平和、とはこういうコトだと思います。何もせずただただ悩み抜いた暗黒の1年の、コレが私なりの結論です。
  12   『The Heart Of Dixie』
試聴

私の中で“Honey Apple” と対を成す、軽快ででっかいノリのロックンロール・ナンバー。 この曲は珍しくベースを弾きながら作ったため、なんとなく気分がポール・マッカートニーな歌唱となっております。ベースはもちろんヘフナーです。 3コードと見せかけてかなりワザありのコード進行と展開、してやったりですな。ムハハ。 奥野大・大先生の涙のボードビル風ピアノ・ソロが、本アルバムの大団円がそう遠くないコトを予感させます。 歌詞は浅川マキさんが日本語詞をつけた“ガソリンアレイ”がイメージです。最初ハナモゲラで「♪ナラパパ〜」と歌っていたトコロに「♪アラバマ〜」とつけたがためにアラバマ州について調べるハメとなり、今では他人の気がしません。アラバマ。
 
 
  13   『悪魔も憐れむ歌』

そしてアルバムの最後を飾るのもまた、最初と同じくノロイ・トラックス(私と越川クンのユニット)によるナンバー。 なんちゃってゴスペルで終わる、というアイディアはツアーで北海道へ向かう車中で生まれました。イメージはアル・グリーンであります。 実際に着手したのはアルバム制作も終盤、出来たハナシで、ちょうどジョン・レノンの命日でした。 朝から一気に歌詞を書き上げ、仮歌を入れ、同じスタジオにたまたま居合わせたTheピーズのはるさんに口笛を入れて頂きました。 こうなるコトが決まっていたかのようにわずか数時間で完成、という何か他の力が働いているのを感じずにはいられないナンバーです。 ちなみにまだ何の構想もないのですが、なぜかこの曲・詩がすでに次の作品への序章・複線になっている気が私はしています。
         
 
 
綴章
 
 
  以上が我々のサード・アルバム“Gloomy”の全貌であります。

再生時の注意としましては、随所に挟まれたSE、曲間、音量差etc.かなりコンセプチュアルな仕上げになっておりますので、お使いの i-tunes/i-podでお聴きの際はあらかじめ曲間なし、サウンドチェック(自動的に音量差を調節する機能)は外してから再生して頂きたい。

どうぞ末永くご愛聴頂けますよう、愛を込めて。

P.S.

作品が完成した今、私は誠に晴れやかな気分で暮らしています。健康状態極めて良好、本日もインフルエンザの予防接種を受けてまいりました。病院の隣の古い定食屋にて頂いた夕食は ごはん(中)、生姜焼き、やっこ、おみおつけ、菜っ葉の浅漬けであります。

一月九日  毛皮のマリーズ 志磨遼平

 
 
 
インタビュー
 
 
  毛皮のマリーズ  


一度はロックを捨てる決心をし、どん底まで落ちた志磨遼平が再びロックを手にしたそのわけとは?そしてさらなる大きな野望とは!?アルバム『Gloomy』に込められた思いとは!!?志摩遼平、語ります。大いに語ります!!!



インタビューはコチラから!