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Yorimichi All Stars @HMV ONLINE 197

2009年3月20日 (金)

松任谷由実

HMVフリーマガジン「the music&movie master」の人気コーナー、「よりみちAll Stars」!!
第7弾の今回登場してくれたのは、春がぴったりな「よりみちの達人」にして、35作目のオリジナルアルバム発売を控え大活躍中の松任谷由実さんです!!彼女が選んでくれたおすすめ10選とともにお楽しみ下さいませ!!


すでによりみちの達人というオーラを感じまくっているのですが。
人生は、よりみちにありますからね。
具体的なよりみちとはどんなものですか?
そもそも毎日がよりみちみたいなものなんだけど、そうね、まぁアナログなネットサーフィンとか。
ん? てーと?
要するに辞書をね、こう開いたページの裏側のページに書いてあることを興味深く調べたり(笑)。そうでもしなければ一生気にもとめない言葉と出会って、ふむふむ、って(笑)
ある意味ゲーム感覚ですね。
そういえばね、よりみちついでにブログ始めたの。
遂にネット界に女王降臨ですか。
松任谷由実 超初心者なんだけどさ、なんだか照れるね。
その『照れ』にリアクションがつくんですよ。イメージの中にしか存在しないユーミンのリアルが公開されるわけですから。
まぁそんな大袈裟なことじゃないけどね、一応、女子だし。
どんな人たちにロックオンしたんですか。
生意気なOLちゃん(笑)
“ちゃん”ですべてが許されてしまう。
よりみち感かぁ、昔よりも必要なくなったかも。
元祖なのに?
偉そうなんですけど、その「よりみち感」を、プロとして遂行する人が沢山でてきたような気がするの。
興味深い視点ですね。
たとえばこの前、苗場の最終日に大宮エリーさんが来てくれたんだけど、話し合ってすごく面白くてね。彼女の中にはすごくよりみち感が満載で、彼女に是非紹介したい人を見つけちゃった。
ちなみに誰ですか?
辛酸なめ子。
(爆笑)完全に趣味の世界ですね。
彼女、相当興味持っていた。
実現したらプロデュース by ユーミンというところがプレミアですね。
今はエッセイストとかコラムニストにも、いやぁ本当に凄いなぁっていう人がいっぱいいるよね。
きっとユーミンの中にある、そういう人を見分けるセンサーが作動するんですよ。
そうかもね。
ユーミンが人に関心を寄せる基準というのは、どこか自分と通ずるものがあるということですか?
とも限らない。このセンスはまったく私にはないなというのも興味深いし。
自分とは真逆な人でもセンサーは反応する?
真逆だと思ってても、感知するということは、やっぱりどこか合う要素があるんじゃないかな。でなければ目にも入らないし、耳にも入らなくて無関心で終わってしまう。だからね、その感知する範囲が狭くなると怖いなと思ってるんだけど。そのためにもなるべく今までに知らない刺激を探したいなと。
松任谷由実 35作目のオリジナルアルバム。3年振りにリリースですね。
苦しくて苦しくて仕方なかったんだよ。だけどね、苦しんだ分、抜けた時の気持ち良さがすごかった。
ユーミンほどの達人でも産みの苦しみは相当なもんなんですね。
年イチでアルバム出してた頃って、苗場で曲書いてたし。ホテルの部屋にキーボードとか持ち込んで、ライブやりながら次の作業に取り組んでるという慌ただしさだったんだけどね。今回は、しっかり子ども(アルバム)を産み落としてちょっとだけ楽な気分で苗場を演れたから、すごく楽しかった。ああいう爽快感って29回苗場演ってて初めてかも知れない。
舞台裏の女王の真実。
年々ハードルが高くなっていってることはわかってるし、ひょっとしたらオリジナルアルバムなんて、もう出来ないんじゃないかと思ったところを通り抜けてきたから、達成感が…、そう感じ入りながら、“ああ、まだこんな達成感みたいなものがあったんだ”って。なんだか新鮮でもあったし、素直にうれしかったよ。
並々ならぬ想いだったんですね。失礼かもしれませんが、すごく羨ましいです。
今回は私の実体験から、“ってことは、これからもきっとあるんだ”という想いが、『そしてもう一度夢見るだろう』というアルバムタイトルに繋がってるの。今までも人には余裕のヨッちゃんを演じてても、ほんとはその都度ギリギリで出してきてるんでね。追い込まれている感覚にはそこそこ慣れていたんだけど、なんか今回は今までと比較にならないぐらい苦しくて。だから余計に越えた時に、“あ、ってことは、またこうすれば次に行けるんだ”っていう感覚を持てたような気がする。修験道のようだね、なんか(笑)
自分との絆みたいなものが見えた?
いいこと言うねぇ。
(照)あ、うれしいです。
うん、だからね、その自分の中の絆みたいな、確信めいたものを得た気がするから、正直もう曲を書き終えたことで達成感を得られたの。だからもうリリースできなくてもいいんじゃないか、誰も聴いてくれなくてもいいんじゃないかという、そんな感覚にさえなった。それさえも含めて、ぜんぶ夢の途中で。うん。旅も終着点はなくてね。次の旅のための途中だったり。
ユーミン、恋愛の教祖とか言われてますが、OLっぽくもありますよね。
女子高生でもある(笑)
女性という生き物のすべてにひかっかるアイテムを兼ね備えたオンナ。
うんうん。どういうOLでどんな女子高生でどんなミセスかというと、ちょっと難しいけどね。フフフ。
抜群に手強いですよね。そこが教祖たる所以なのかなぁ?
まぁ勝手に思ってもらってるとおりのワタシです(笑)
ちなみにご友人の黒柳徹子さんはどんな女学生ですか?
特殊。
(大爆笑!)
いやいや、ホントに。ずーーーっと喋ってるよ。ずーーーっと喋ってるんだけど、しっかり召し上がってるの。いつ食べてるのわかんないわけ。誰もが(笑)。苗場のリクエストコーナーにも登場してくれて、通常10分ぐらいのところが、黒柳さんは40分(笑)。すべてにおいて、うん、あの人、特殊。
可愛くてたまんないって感じですね。
カワイイよね。ほんと可愛い。
松任谷由実 丸の内のOLと座談会したそうですが、いかがでした?
「日経ウーマン」読んでるっていうから驚いた(笑)
意外だったんですね?
意外というよりもまったく予想の引き出しに入ってなかった(笑)
ちょっとしたインテリジェンスとしての武装かも知れませんね。
インテリジェンスなのかなぁ、マジっぽかったけど。
ユーミンは武装します?
…武装? …高校生の時とか巷に出るときに上下まつ毛してたとか(笑)。おかげで下のまつ毛が抜けてなくなっちゃったよ。上はなんとか大丈夫だけど(笑)
18禁とかのお店に入り浸ってた感じしますけど。
そういうのなかったよ。というか興味なかったかも。
じゃほとんど鎧みたいなものは身につけなかったんですね。
話をしてて思ったんだけど、着物を着る時とかって武装かも。うるさいパーティみたいなね。ソコソコの洋服で行くよりもソコソコの着物で行った方が威嚇かませるかなぁっていう(笑)
シャンとするんですか?
シャンとしますね。姿勢が良くないと着れないので。
ちょっと極妻っぽい風格を連想しますが…
ちょっと前にサブちゃん(北島三郎さん)と対談したんだけど、その時は驚かしてやろうって感じだったなー。サブちゃんはきっと着物を浴びるほど見てるだろうけど、“こんなの見たことないでしょ?”って。そしたらサブちゃんビックリされてね、「着こなしが凄いですね」って。「着物」ではなく「着こなし」ですよ。
富士山頂で対談されたような雰囲気が伝わってきます。
ははは。
やっぱり北島さんって、コワいんですか?
ううん。品がある。
すごく美しい言葉が連発しますね。
お相撲さんなんかでも、ある番付以上から上に行く人は品があるもんね。朝青龍がなんだかんだ言っても、品があると思うよ。会ったことないけど、テレビ通して観てるだけでも伝わってくるもん。
それが色気にも化けるんですかね。
色気の一種でもあるだろうね。
メディアも「品」とか「格」をそんなに簡単に括っちゃいけないですよね。
品格って言うけど、品があって格がないものとか、その逆もあるしね。
ユーミンの言葉って曲と同じでその先を想像させてくれるんです。なんだか会話をしているだけで、言葉にメロディーがついているような感じです。
また生意気言っちゃって!
胸元に飛び込みたい気分です。
じゃぁね、お疲れさま。ありがとね。
…。
 

松任谷由実

よりみち編集者・栗山圭介の松任谷由実評

ひとつの季節の中にも12の情景があり、そこに映し出される風も湿度も太陽の輝きもすべてがちがうと教えてくれたのはユーミンだった。はじまろうとするまだ肌寒い夏、次の季節に駆け足で急ぐセピア色の夏。たった一日の夏の中にも瞳に映る色と肌に触れる空気はめまぐるしく変わり、それはまるで心模様そのもの。いちばん素敵な恋愛は「片想い」だって教えてくれたのもあなたでした。片想いは裏切らない。夢を見続けさせてくれる。ちょっとしたもどかしさはあるけれど、飽きるほどの恋をしてきた大人には片想いがちょうどいい。恋する気持ちにはメロディーがあることも…菜の花畑を散歩するような恋も、薄暗い部屋の隅でひざを抱えて肩を震わせているような恋も、どれにもあなたがメロディーを添えてくれた。アルバム、3年振りですね。少し弱気になっていた僕たちに「だったら恋しなよ」って言ってくれそうですね。「恋の行方じゃないよ、恋する気持ちだよ」って。そっか、そしてもう一度夢見るだろう…。ぜんぶぜんぶ心の中にあることなのかもしれないですね。世界でいちばんガールフレンドという言葉が似合う人、ユーミン。暖かくなってきたので、あなたのアルバムの中へ、旅にでます。



松任谷由実
松任谷由実さん プロフィール

松任谷由実●シンガーソングライター。1954年東京生まれ。愛称はユーミン。1972年シングル「返事はいらない」でデビュー。都会的な世界観の歌詞とセンス溢れる音楽性でニューミュージックの草分け的存在になる。大掛かりなステージの大規模ツアーやリゾート地でのコンサート開催などなど、音楽界のトレンドを牽引しつづける偉大なアーティスト。2009年4月8日には約3年振りに35作品目となるオリジナルアルバム「そしてもう一度夢見るだろう」をリリース! 4月10日からは全国ツアーがスタート!期間限定ながら初のブログ「OLの分際で」も更新中!

Photographer/daisaku urata
yorimichi editor/keisuke kuriyama

 松任谷由実さんお気に入りの10タイトルはこちら!


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