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「TAO」 第3回 :ゲスト→木村文洋 1 

Wednesday, April 27th 2011

---  以前からわたしは、アップリンクさんと一緒にお仕事させて頂いてるんですけど、そのつながりで加瀬(修一)さんとお会いして、「一緒に何かお仕事したいね」っていうお話しをしていたところに、木村さんが撮られた『へばの』の宣伝に加瀬さんが携われたということで、この作品を拝見させて頂いて、今日のインタビューのお話しになったんです。本作が"初長篇監督作品"ということですので、今日は、木村さんの人となりが分かるようなお話しが頂ければと思ってますので、よろしくお願いします。


木村文洋(以下:木村):よろしくお願いします。


---  『へばの』を拝見した時、もっと年齢が上の監督が撮られている作品だと思ったんですよね。


木村:よく言われます。何なんでしょうか、その感じって?


---  "引き"の画が多いですよね。あとは、分かりやすくないといいますか。淡々と静かに描かれていて、たぶん、観た方によって思うところや気になったシーンが全然違うんじゃないかなって思いました。男女の・・・人間がもどかしい感じの描写であったり・・・上手くいかないモヤモヤした感じや葛藤であったり・・・がよく出ていて、「大人の作品だな」っていう印象を受けました。


木村:(沈黙)「もうちょっと上の年齢が撮られた映画じゃないか」という意見は色々頂きました。 ただその理由が「人間がもどかしい」というお話しは初めて頂きました。


---  「若さで撮っていない」っていう感じがありますよね。


木村:ありますよね。


---  すごくいろいろ分かってらっしゃるのかなあと・・・(笑)。


木村:(沈黙)しゃべった方がいいんですよね?


---  インタビューは初めてですか?


木村:3回目です。


---  わたしからしゃべりましょうか?


木村:ちょっと頑張ってしゃべります。僕は"人間恐怖症"なところがあって、「映画に向いてない」って、今はよく言われています。「それでもどうして映画をやっているのか」っていうのは考えるんですけど、今長澤さんがおっしゃった「人がもどかしい」っていうのは、僕の人への恐怖心とか、コミュニケーションの遠さがあると思います。初期衝動ではなく、人への"硬さ"から今回映画を撮ったんじゃないかと思います、長澤さんのお話しを聞いて。


---  距離がすごくありますよね、人に対して、構図が。「青森の広い大地で撮られた」っていうことがまずあるかもしれませんけれど、人物がいて、 アップで撮られることがあまりなくて、引きの構図が多いですよね。わたしは個人的にもそういう画がすごく好きなので、魅せられる感じはあったんですけど・・・。 あえて、カメラを登場人物に近づけず、距離を取ろうっていうのは、初めからありましたか?


木村:僕は登場人物の顔を撮ったら、「顔でしかなくなっちゃう」っていう思いがあって。 どちらかというと、「身体を撮りたい」っていう思いがありました。人物と風景・・・というか、廃屋でもたれあうのも、 「顔よりも身体のぶつかり合いを撮りたい」っていう思いがあって、そんなことを考えていたら、自然にカメラが遠くなりました。 でももうちょっと「距離感の変化」っていうものを映画に出せたらとは思いましたね。身体と風景を撮ろうとしていたら、ああいう距離になっていたというか。


---  外には雪が降っていて、窓が開いていて、西山真来さん演じる紀美が裸でいますよね。ああいうシーンも、震えまで分かるといいますか。 でも、ああいう画っていうのが、私達が普通に見ている自分の恋人とかの姿であって・・・。すごく生々しく映ってますよね。


木村:プライベートなところに、カメラが入っているという感じですか?


---  リアリティーというか、温度・・・体温とか皮膚感覚までがすごく伝わって来る映画だなって思いました。 デジタルで撮られているんですよね?


木村:そうですね。


---  それがアナログ感・・・フィルムで撮られているような匂い・・・体温が匂い出て来ているというか・・・。様々な出来事が起こって来て、登場人物の状況はどんどん変化していくんだけど、それでも最後まで、温度や匂いが映っている作品だと思いましたね。加瀬さんに伺ったのは、木村さんはピンク映画を撮られたこともあるんですよね?そこでの影響も大きいのかなと思ったんですが・・・。


木村:ピンク映画は撮ってないですね。


---  撮られてはないんですか?


加瀬修一(以下:加瀬):「ピンク映画の上映をしてた」っていうお話しですかね?


木村:学生の頃、映画上映を主にしていたんです。・・・僕、京都に進学の関係で9年ぐらい住んでいたんですけど、 京都国際学生映画祭という映画祭の運営を主にやっていて。それと2001年に今のピンク映画の若い監督・・・ 瀬々(敬久)さん達の下の世代にあたる女池充さんを中心とした若手メンバーが運営していた、 ピンク映画のトーナメント大会みたいなもの・・・、色々な世代の、色々なピンク映画をお客様にバッと観せて、2本立てのうち 「どちらがおもしろかった」を投票させていき、一番面白かった映画を決めるっていうイベント・・・それを今からまあ、 8年くらい前に上映宣伝で手伝いしていました。


---  大阪の"Planet Studyo +1"というところで活動し出すのは?


木村:そのP-1で女池(充)さん、いまおかしんじさん、榎本敏郎さん、坂本礼さんと知り合って、呑んで頂いたりして・・・でも地理上の距離があってなかなか会えず、たまに東京の映画祭に思い切って行けば偶然お会いし、「今、何してんだよ」という感じでした。でも大分時期が空いて、僕が大阪の"Planet Studyo +1"という映画館で、ワークショップのスタッフをしている時に、女池監督、いまおか監督が新作上映で来て、その時に何年かぶりの再会を果たしたという感じです。


---  "Planet Studyo +1"は、映画館なんですよね?


木村:映画館であり、映画製作・配給をしている場所です。


---  ブログを拝見したんですけど・・・ここでは「身一つで来て、様々なものを即、実践して学んでみる」っていうことがコンセプトにあるんですよね?


木村:僕が関わっていた時は、そう思って関わっていました。


---  この場所で『へばの』の主演である、西山真来さんや吉岡睦雄さんにも出会われたんですよね?


木村:そこで映画監督と映画俳優へ向けてのワークショップを運営していました。講師には、山下敦弘さん、いまおかしんじさん、女池充さん、若手映画監督、俳優の信國輝彦さんとかを呼んで。そのワークショップに受講生で来ていたのが西山真来さんだったんです。 このワークショップのスタッフをしてフラフラしている間、いまおか監督の『かえるのうた』が上映されて、その舞台挨拶に 吉岡睦雄さんが来てらしたんです。俳優と駆け出しのスタッフ、という出逢いでしたけれど、吉岡(睦雄)さんのフェアなあり方が素晴らしくて、すぐに仲良くなりました。なので、3人で会ったっていうわけではないんですけど、"Planet Studyo +1"で働いてる時に出演者とは出会いました。


---  その"Planet Studyo +1"で働いていた時から、映画を撮りたかったんですか?


木村:シナリオが上手くいかなくて2年くらい経ち、すごい鬱々としてた時ですね。


---   そのシナリオというのは、今作の『へばの』のものですか?


木村:だいぶ形は変わりましたけれど。


--- 映画作りに関わろうと思われた直接の理由というのは?


木村:・・・僕は高校がわりと進学校だったんですよ、青森のなんですけど。 で、受験勉強をずっとそれまでしていました。大学の法学部にいて、司法試験を受けて、「弁護士になろうかな」って思っていたんですけど、何でなりたいのかがだんだん分かんなくなって来て。人に聞かれると「困ってる人を助けたい」っていう風に答えていたんですけど、社交性がなくて、友達とも親とも上手くしゃべれないし、自分が本当に何をしたいのかがだんだん分かんなくなって来て。

そういう時に、映画をレンタルビデオ屋に行って借りて来て、「これ好きだなあ」って思ったりとかしていて。そんな風に映画を観ているうちに、世の中にはいろんな生き方があるし、いろんなものもあるし…自分がやっていることがすごい狭い感じがしました。そうした時、「自分は映画が好きだ」っていうことに何となく気付けたのがすごいうれしかったんですよね。「困っている人って、まあ自分だな」と。それで一気におかしくなって・・・(笑)。まあでも、なかなか・・・高校3年くらい、友達とかと付き合ってなかったんで、大学でも友達作るまでにすごい時間がかかって・・・そういう"欠陥人間"なんですけど・・・。


---  そんなことはないと思いますけど・・・(笑)。


木村:でも、高校の時くらいですね、「映画作りたい」って思ったのは。19歳くらいの時にやっと書いたシナリオが友達に「おもしろい」って 言ってもらえて。


---  映画と出会ったことで、救われた部分もありますか?


木村:救われてるのか、踏み外してるだけなのか・・・あんまり分かんないんですけど(笑)。まあ両方ですよね、今思えばね。 今だって全然、収入も安定してないし。でも、人と話せるようになったりとか、価値観が変わったというか。


---  映画を借りて観ていた時期に、「これ好きだなあ」って思われた作品っていうのは、具体的にどんな作品だったんですか?


木村:すんごい恥ずかしいんですけど・・・岩井俊二監督の『打ち上げ花火 下から見るか 横から見るか』。あれの奥菜恵さんがすごい好きで。 痛すぎる告白してるかな?(笑)。


加瀬:いいんじゃないの?(笑)。


---  いいと思います、わたしも(笑)。


加瀬:あれ、ロケ地が僕の実家の近くなんですよ。


木村:そうなんですか?


---  あれって、どこでしたっけ?


加瀬:あれは、千葉の飯岡っていう町が舞台になってるんですけど。"飯岡灯台"っていうちっちゃな・・・。 でもあれ、上手く撮ってるんですけどね。銚子よりももうちょっと手前側で、わりと僕の実家から近いところで。 なので、そういうところでわりと、あの作品には親近感が(笑)。奥菜恵さんと彼がこう・・・何か言い争うか何かで、 家の前か何かの垣根があるんだけど、その垣根の木が"マキ"っていう種類・・・"マキ"の木っていう。 あの木が使われてるのって、東京とかこのへんではあんまり見ないんですよね。あれ、千葉とか静岡とか、 あれを家の垣根に使われてることって実はあんまりなくて、あれを見た時に僕は、「懐かしいなあ」って思って(笑)。


木村:その映画観てて、あの子、かわいいじゃないですか?まあ別に、奥菜恵さんがっていうことじゃないんですけど、風景とかね、本当にこっち側がばあーって惚れていくようなね、そういうものをすごく楽しそうにやってるっていうのがね、 すごくうらやましくて。「(映画)やりたいな」って思ったんですよね。それが最初ですね。



次のページに続く・・・



木村文洋監督がリスペクトする作品
ジャック・ドワイヨン: 『ラ・ピラート』
安川奈緒: 『Melophobia』
Blankey Jet City: 『BANG!』
大江健三郎: 個人的な体験

  
左から:映画:ジャック・ドワイヨン 『ラ・ピラート』: 最初から最後まで、大好きです。
詩:安川奈緒 『MELOPHOBIA』: 映画、音楽、世界・・・すべてのものを追い抜いて遥か彼方で大爆発してしまった言葉。近年最大の衝撃。
音楽:Blankey Jet City 『BANG!』: 解散の時のライヴにいたけれど、なにがなんだか分からなかった。浅井健一が演奏中にニヤッと笑う顔に、どんな映画でも感じられない物凄い悲しさと、背筋が凍るような感動との両方を感じました。一生消せない、傷のようなもの。
小説:大江健三郎 『個人的な体験』: 24歳の頃、塾で働きシナリオを書いていました。子どもの顔を見、駅で帰りの電車を待ちながらこの本を読み、どこへも向かえない自分の将来が怖く、鳥(バード)の言う「多元的な宇宙」という言葉を呟いていました。レモンの匂いがする嘔吐。この頃考えていたシナリオは形になりませんでしたが、それでも今『へばの』は、鳥(バード)と僕との「もう一つの宇宙」・・・と続いていないか、と思う時があります。(談)

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