REISSUE: BLANKEY JET CITY 『 Red Guitar and the Truth 』
文字通りブランキーの原点。後にさまざまに広がっていった彼らの世界はすべてここに原型がある。
ロンドン録音だが、プロデューサーとの折り合いが悪く、無意味なテイクを何度も重ねた結果、楽曲から一番大事な初期衝動が失われてしまったとして、メンバーは本作の出来ばえには不満を持っているようだ。
しかし浅井健一の純粋で真っ白な内面世界を率直で飾らぬ言葉とダイナミックかつ繊細な演奏で完璧にあらわし、もう2度と戻らない彼らの青春性を体現した傑作という評価は揺るがない。
言葉のひとつひとつは幼く未成熟だが、それゆえ鋭く抉るように痛みと孤独と絶望の念が聴き手の心に突き刺さっていく。
アマ時代から練り上げてきた楽曲の完成度は高く、のちのちまで重要なライヴ・レパトリーとなった曲をいくつも含むという点で、バンド史上の最重要作と言うことができる。
名曲揃いだが、「あてのない世界」の寂寥感と透明な悲しみは、まさにこのバンドの真骨頂。
REISSUE: BLANKEY JET CITY 『 CB JIM 』
ブランキーの転機となった3作目。
アマチュア時代から書きためた楽曲を前作で使い果たし、今作から「アルバム制作のための曲作り」を強いられることになって、特に浅井の詩風が変わった。
これまでの自らの実体験に基づいた血を流すようなリアルな自己告白的な歌詞から、映画の一場面を思わせるような映像的なイメージを喚起するものへと変化した。
数多くのクラブ・サーキットや土屋昌巳とのさらに緊密なコラボレーションによって、バンド演奏はさらにタイトに、ソリッドになり、初期のパンクやロカビリー、叙情的なニュー・ウエイヴといった影響を完全に消化し、さらにスケールの大きなロック・バンド表現を実現している。
その最良の成果がライヴの定番となった「Punky Bad Hip」と「D.I.J.のピストル」である。爆裂度と、聴く者を狂わせる焦燥感は前作以上だ。インディで発表され大きな反響を巻き起こした大作「悪いひとたち」はセンサード・ヴァージョンで収録。
REISSUE: BLANKEY JET CITY 『 METAL MOON 』
歴史的名盤となった前作"CB JIM"。この破格過ぎる傑作爆裂ロックンロール・アルバムの次に来るものは・・・!という期待の中リリースされたキャリア唯一の5曲入りミニ・アルバム。ブっとんだロックンロールを封印し、ジャズやアコギを取り入れ、新たなサウンドへの挑戦してるせいもあり、前2作(BANG!とCB JIM)より地味ではあるが、やはり全編素晴らしい。最後のライブ"LAST DANCE"でも入場のSEとして大活躍した@、クールでハードなロカビリーA、そして上記の超名曲Dのキャッチーさと美しさと綺麗さ、そしてラストE"悪いひとたち"に匹敵する描写と純粋さと美しさ。「戦場へ行きたい網上げのブーツを履いて・・・」
REISSUE: BLANKEY JET CITY 『 THE SIX 』
『幸せ〜』のあとに発表された初のベスト盤だが、全曲リマスターされ新曲・新録を6曲収めるなど、ディープなファンにも見逃せない内容となっている。
目玉は、メンバーが仕上がりに不満を持っていた『Red Guitar〜』からの4曲で、すべて土屋昌巳をプロデュース/アレンジに迎えた再録音ヴァージョンとなっている。
いずれもアレンジを大幅に変えており、ストリングスをバックに浅井がひとり生ギターで弾き語る「ガードレールに座りながら」、オリジナルからさらにテンポを落としヘヴィなギター・ロックに仕上げた「胸がこわれそう」、ジャズ風にアレンジしタイトルも「Rude Boy」と変えた「不良少年のうた」、ロカビリー風の「僕の心を取り戻すために」と、この時期の彼ららしい多彩でひねったサウンド・プロダクションが興味深い。
新曲「Girl」「自由」のほか「悪い人たち」の完全ヴァージョンも収録。前期の集大成として妥当な内容と言えるだろう。
REISSUE: BLANKEY JET CITY 『 LAST DANCE 』
2000年7月8〜9日横浜アリーナにおけるラスト・ライヴ2デイズの1日目を完全収録したアルバム。2日目の模様は同名のDVDに収録されている。
DVDはEMI時代のアルバムからの楽曲を中心とした内容で、本作はポリドール移籍後の曲が中心となっている。
なおこの年フジ・ロック・フェスティヴァルのメイン・アクトで出演しているため、本当の最終ライヴはそちらだが、演奏の完成度、凝縮された密度とスピード感という点で、やはりこれを実質的なラスト・ライヴと見るべきだろう。
これが最後という感傷めいた甘さなど微塵もなく、3人の男たちが己の肉体だけを頼りに闘い、燃え尽きていくさまが克明に記されている。とても解散ライヴとは思えないエネルギーだが、同時にこんなバンドが本来10年もの間長続きするはずがなかったと思い知らされもする。
その壮絶なまでの自爆の一部始終。それ以来、彼らが座っていた王座は空位のままである。
REISSUE: BLANKEY JET CITY 『 LIVE 』
ぼくの見たブランキーのライヴでもっとも印象的だったのは、『Bang!』のロンドン録音から帰国してわずか2日後の91年10月5日に東京・渋谷公会堂でおこなわれたものだった。音楽による闘争。3人の戦士たちによる徹底して辛口でストイックでハードな演奏は、このバンドの真価は安易な融和や調和ではなく、メンバー同士が激しくぶつかりあい傷つけあう、そのすさまじい葛藤と軋轢の果てに初めて達成されるという事実を、骨の髄まで知らしめる衝撃的なものだったのである。そのあまりに悲痛で張り詰めた音という名の暴力の前に、観客はただ黙り込むしかなかった。
本作はその少しあと、『Bang!』発表後の92年5月のライヴで、黄色い歓声も聞こえやや華やかな雰囲気になっているが、濃厚かつヒリヒリとした緊張感に彩られた初期のライヴの鉄火場的ムードを生々しく伝える。
デビューしてしばらくは達也が一人で引っ張っていた感のある3人のバランスも良くなっている。