ヒップホップ史にその名を刻んだ不朽のプロデューサー、故J Dillaの実弟であり、Kid Sublimeの新作『Basement Soul』に参加するなどヒップホップを超えてクロスオーヴァーに活動する弱冠22歳、Illa Jの2008年度クラシックになること必至な噂のデビューアルバム。Delicious Vinylに秘蔵されていたJ Dillaの未発表音源をIlla Jが譲り受けたという経緯で制作され、傑作『Welcome To Detroit』を想起させる!?という本作は、貫禄たっぷりなGuilty Simpsonも参加したスピーカー越しからも煙たさが伝わってくる先行シングル「R U Listenin?」、収録曲のなかでも特にIlla Jのフロウが栄え、クールネスが漂う「We Here」、足取り軽くなるエレピと硬質なビートに耳が喜ぶ「Strugglin」など珠玉揃いで構成。全体を通して硬くファットでスモーキーなビート群&上質なウワものが絡んだトラックに、歌心あるライムデリバリーでビート上を歌とラップで乗りこなすIlla Jの確信的なフロウが重なる空間には不思議と音数以上のグルーヴがあり、まさしく良質でいてヒップなサウンドというところ。
Illa Jの輝きだした才能と10年以上前に存在していたJ Dillaの輝き続けるビートが詰まったこの『Yancey Boys』は白昼夢、夢見心地という表現に近いものを感覚させてくれ、それはひたすらに気持ちよく、カラフルで、煙たく、淡く、深く、暖かみが同居したヒップホップファンならずとも見逃せない1枚となっています。
ジャケットのIlla J左目に映るJ Dillaというアートワークにも嬉しくなります。
論より証拠。まずは聴いてみてください。激PUSH!R.I.P. J DILLA.
PICK UP!
Slakah The Beatchild / Soul Movement: Vol.1
個人的2008年ベスト・アルバムは信頼と実績の良質レーベルBBEからのこの1枚。カナダ出身の男性ニューソウル・シンガー、Slakah The Beatchildのセクシー且つ艶やかでしなやかな歌声はまさにSMOOTH。浮遊感漂うなか硬いスモーキン・ビートと抜群のメロディ・ラインが印象的な7曲目「Crate Love」は多幸感、高揚感を与えてくれる病み付きなオシの1曲。アルバム全体の流れも素晴らしく程よいポップさが散りばめられていて、オシャレでアダルトな雰囲気があるものの中には珍しく聴きやすいと言えます。
Foreign Exchangeの1stにヤラれた人、快進撃を続けるJamnutsあたりの音がツボなNeo Soulファンはマストです!現行Soul、R&B好きなリスナーや、ヒップホップ黄金期のような重いビートはありませんが、ヒップホップ・ヘッズにもアピールできる中毒性と完成度を持ったレコード化熱望な1枚です。
Foreign Exchange / Leave It All Behind
別プロジェクトでもいつもツボを刺激してくれる信頼すべきオランダのビートメイカーNicolay&ヘッズにはお馴染み、今夏にリリースした『...And Justus For All』も好調だったLittle BrotherのPhonteによるThe Foreign Exchange。4年ぶり待望の2ndアルバムとなる本作は、Nicolay印とも言えるビート感とPhonteのライミングは健在!前作を凌ぐ暖かさ、ソウルネスが前面にでたサウンドで構成されています。それもそのはず、参加アーティストは次世代デトロイト・シーンを代表するキーボード奏者Zo!、ノースキャロライナのシンガーDarien Brockington、Low Budget所属のMuhsinah、インディR&B界では名の知れたYahzarahといった面々。さらに、4 HeroのMarc Macが本作のStevie Wonder「If She Breaks Your Heart」のカヴァー曲をストリングス・アレンジとくれば悪いはずがありません。要確認!早くも3rdアルバムが楽しみです。