Thursday, December 4th 2008
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今から四半世紀前の1983年、アメリカの音楽史上に残るある式典が行われた。モータウン・レコードの25周年を祝う“Motown 25”である。その際に掲げられたキャッチフレーズ“Yesterday, Today, and Forever”を、今、改めて思い返してみると、まるで予言のように感じられるのだから不思議だ。Yesterday、つまり過去は、モータウン黎明期から約20年間の'60年代〜'70年代、怒濤の勢いでヒット曲を量産した黄金時代を指す。'83年当時のTodayに貢献したアーティストには、当時プリンスの最大のライバルと言われたリック・ジェームスや、ファミリー・グループのデバージ、ソロ・シンガーに転向して大成功を収めていたライオネル・リッチーらがいた。その先にあるForeverには現代も含まれているのだろうが、仮にそのキャッチフレーズにFutureを加えるとすると、'90年代のモータウンを支えたボーイズIIメン、ジョニー・ギル、そして現在の所属アーティストであるエリカ・バドゥやマイケル・マクドナルド、インディア.アリーらの名前を挙げることができる。
現在もモータウンはレーベルとして存在しているが、“モータウン・サウンド”という言葉から多くの人々が連想するのは、やはり'60〜'70年代のヒット曲の数々、それを歌っていたアーティストたち、或いはそれらを生み出したモータウンの専属ソングライター/プロデューサーたちの名前ではないだろうか。それらを知らなくても、いや、モータウン・サウンドという言葉すら知らない人々でも、例えばシュープリームスの「恋はあせらず」('66)やテンプテーションズの「マイ・ガール」('65)、ジャクソン・ファイヴの「ABC」('70)といった楽曲を、どこかで耳にしているはずだ。街角で、ラジオで、映画の中で、はたまたTVコマーシャルなどで、'60〜'70年代のモータウン・サウンドは今なお頻繁に流れているのだから。このように、世界中のどこかで誰かが、今日も無自覚のうちにモータウン・サウンドを耳にしているのである。創設から50年も経ってもなお、あたかもつい最近レコーディングされた曲であるかのように方々で流れている音楽は、恐らくモータウン・サウンドをおいて他にはないだろう。 ベリー・ゴーディ・Jr.が俗称モーター・シティ、すなわちデトロイトにモータウンを創設してから50年も経つのだから、昔のモータウン・サウンドは今なお新鮮に耳に響くと言っても、そこにある種の懐かしさが感じられるのは当然だ。が、ただ単に古き良き時代を想起させるから懐かしいのではなく、あの頃あの時代に、ここまで緻密に作り込まれた大衆音楽が実存したということに驚かされる。だから余計に、モータウン・サウンドをオン・タイムで知らない世代がそれらを耳にしても、追体験での懐かしさを感じることができるのでは、と思う。ミラクルズ、マーヴェレッツ、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、マーサ&ヴァンデラス、テンプテーションズ、フォー・トップス、シュープリームス、グラディス・ナイト&ピップス、ジャクソン5…etc.。この場ではとても枚挙しきれないほど、モータウン・サウンドを彩ったキラ星の如きアーティストの歌声とサウンドは、色褪せるどころか、年月を経て更に輝きを増すようだ。公民権運動が盛んだった激動の時代に、奇蹟のような音楽が生まれ、そしてそれは奇蹟のように残った。 モータウン25周年に参加した錚々たるモータウンのスターたちの多くは、既にこの世を去っている。しかしながら、彼らの歌声が、そのサウンドが、この世から消えることは半永久的にないだろう——Yesterday, Today and Forever more——祝モータウン50周年!
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