リチャード・ヒコックスさん急逝

Monday, November 24th 2008

リチャード・ヒコックスさん急逝

イギリス音楽のスペシャリストとして名を馳せるリチャード・ヒコックスさんが11月23日、心臓発作のため急逝されました。心よりご冥福をお祈りいたします。

イギリス音楽のスペシャリストとして名を馳せるリチャード・ヒコックスさんが、11月23日、レコーディング・セッションのため滞在していたカーディフのホテルの部屋で、心臓発作のため急逝されました。まだ60歳でした。心よりご冥福をお祈りいたします。

【プロフィール】
イギリス音楽ファンに絶大な信頼を置かれる名匠ヒコックスは、1948年3月5日、バッキンガムシャー州ストークンチャーチの音楽一家に生まれ、ロンドンの王立音楽院で学んだ後、1967年から70年にかけてケンブリッジ大学クイーンズ・カレッジでオルガンを修めます。
　卒業の翌年、1971年にヒコックスは「シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア」を設立するという行動力を見せ、1976年から1991年までロンドン交響合唱団の首席指揮者、1985年からはロンドン交響楽団の副客演指揮者を務めており、現在まで破たんなく続くこれらの団体との長きにわたる深い信頼関係は、ヒコックスの人柄を偲ばせて余りあるものです。
　最近もロンドン交響楽団＆合唱団とはオルフの『カルミナ・ブラーナ』をライヴ録音して話題になっていましたし、シティ・オブ・ロンドン・シンフォニアとは、ヘンリー・ジェイムズ原作のブリテンのオペラ『オーエン・ウィングレイヴ』を公演で取り上げて成功に導き、続いて入念なセッション・レコーディングをおこなって熱心なファンを喜ばせていたものです。
　ヒコックスの業績はイギリス音楽で特に有名ですが、1990年には、サイモン・スタンデイジと共同でオリジナル楽器アンサンブル「コレギウム・ムジクム90」を設立しているほか、2000年から2006年にかけてはイタリアのスポレート音楽祭の音楽監督を務めるなど、オペラや古楽までカバーするレパートリーの幅広さを誇ってもいました。
　コレギウム・ムジクム90との仕事を代表するのは何といってもハイドンのミサ曲全集でしょう。合唱パートも器楽パートも素晴らしい完成度に達した立派な全集です。
　ヒコックスの芸風は明晰さを重視したものですが、率直なダイナミズムへの志向もあって聴きごたえがあり、多く手がけた世界初録音ものでも強い説得力を有していたのが印象的でした。