Pimp C追悼特集

2007年12月28日 (金)

南部のヒップホップシーンを代表する伝説のデュオUGKのメンバーで プロデューサーとしても知られるPimp C(本名:チャド・バトラー)が、12月4日、33歳という若さで亡くなりました。UGKとしての久々のアルバム『Underground Kingz』が今年、全米1を獲得、 これからさらなる飛躍が期待できるこの時期の突然の訃報は、関係者はもとより、多くのファンに大きな衝撃と悲しみをもたらしました。

「ダーティ・サウス最前線」という南部ヒップホップのリリース案内を続けてきたHMVオンラインでは、思い入れの深いアーティストの1人である Pimp Cの死を偲び、追悼特集を組むとともに、UGKの大ファンでもあるライターの萩谷雄一氏に追悼文を寄稿していただきました。




RIP Pimp C
R.I.P. Pimp C



 Rest In Peace、Pimp C

   オレらは、音楽なしには生きて行けない。
 なんて言やあカッコイイが、要するに、ありとあらゆる音楽をむさぼり、喰い散らかしながら、それを糧としてオレらは日々を生きてるってコトだ。コレはどーだのアレはどーだの言いながら。音楽を生み出す人々の背景にある様々な事情も感情も、こっちにしてみりゃ大した問題じゃない。音楽も商品である以上は聴き手/買い手であるオレらに選択権はあるし、それをどう扱おうと自由なんだから。実に勝手極まりないよな。もちろん、アーティストの感情や作品の背景を深く洞察して理解した上で彼らに同調しながら聴いてるって主張するヒトもいるだろう。オレだってそう思いたいし、そのために努力だってしてきたつもりだ。でも、たとえどれだけ音楽に深く踏み込みアーティストと感情を共有してるなんて感じたところで、所詮そんなのはCDのStopボタンを押せば終わりだ。オレらは簡単に自分たちの世界に帰って来れる。でも、彼らはその感情の中に生き続けるしかないのだ。

 Pimp Cが死んじまった。

 あまりにも突然な彼の死をオレが知ったのはレコード会社の人からのメールだった。「ハギヤさん、昨日Pimp Cが死んじゃったよ・・・・」。しばらくそのメールをただ呆然と眺めていた。様々な思いが頭の中を駆け巡った。ショックだった。大ファンだったし。しかも、前日、オレは偶然UGKのベスト盤を聴いていたのだ。  ただ、その時、オレの気持ちの中に妙に冷静な思いがあったのは確かだった。オレは心のどかかで「やっぱりな・・・・・」と感じていたのだ。不謹慎かもしれない。けど、それは確かだった。
 相棒Bun Bが旗を振った巨大ムーヴメント=Free Pimp C Movement〜Pimp Cのシャバ復帰を経て、満を持してリリースされたUGKの『Underground Kingz』は間違いなく最高のアルバムだった。ファンキーで、ブルージーで、途轍もなくソウルフル。彼らが体現し続けて来た独自のサウンドが、H-Town(ヒューストン)〜サウスはおろか、ウエッサイ、そして全てのヒップホップの歴史を飲み込み、奇跡的な形として結実した、稀に見るスペシャル感漂う傑作だった。
 『Underground Kingz』がスペシャルであった最大の要因は、Pimp Cの尋常じゃないヴァイブスだった。もちろん、オレも大好きなBun Bの腰の座りまくったラップもクソカッコイイにキマってる。トラックもハイ・グレードそのもの。けど、以前にも増してキレキレなラップ、時折披露する歌が醸し出すPimp Cの明らかに尋常ではないヴァイブスこそが、あのアルバムのスペシャル感を決定づけていたようにオレは思うのだ。
 あまりにも鋭利で、あまりにもサッドで、あまりにも刹那的。あのアルバムでのPimp Cの壮絶としか言いようのないヴァイブスは、自らを傷つけることをも厭わない、孤高の高みに登り詰めた表現者としてのそれだった。若くして逝ってしまったり、壊れてしまった才能溢れるあまたのミュージシャンやラッパー達が行き着いてしまった禁断の領域に、Pimp Cもまた足を踏み入れてしまったんじゃないだろうか・・・・・? オレはあのアルバムを聴いてそう感じていたのだ。  だから・・・・・、オレは彼の訃報を聞いた時、心のどこかで「ああ、やっぱり・・・・・」という気持ちを拭うことができなかったのだ。もちろん、だからと言って彼の死を痛む気持ちが揺らぐワケじゃない。特にBun Bの気持ちを思うと言葉もない。
 ただ・・・・・・、2パックにしろ、ビギーにしろ、ボブ・マーリーにしろ、その死因は何であれ、キャリア途中で、まるで突然何かに連れ去られるかのようにこの世を去ってしまった数々のカリスマ達のことを考えると、どこか運命論者的心境に陥ってしまい、ただ享楽的に音楽を楽しんでるだけの自分の立場に、どうしようもない無力感を感じてしまうのもまた事実なのだ。ある人が、ジミ・ヘンドリックスの演奏を見て、「こんな演奏をやる人間は絶対に長生き出来ないだろう」と言ったらしいが、やはり、尋常じゃないヴァイブスを吐き出し、有り得ないぐらいに濃い時間を生きているような人間は、普通には死ねないんだろうか。それが天が彼らに与えた運命なんだろうか。じゃあ・・・・・・、オレらはその死に対してどういう気持ちで接すればいいんだ?
 その後、オレはUGKのアルバムを隅々まで聴き返し、オレなりにPimp Cの冥福を祈った。でも、少し前に同じようにBig Moeのアルバムを繰り返し聴いていた(Big Moeも死んじまった)のを思い出しちまった。・・・・・・オレは、ワカったようなフリして、ただ自分に酔ってるだけなんじゃないのか? アーティストの死までも、音楽を聴いて楽しむための道具にしちまってるんじゃないのか? アーティストと感情を同化させたいなんて望む事自体が、そもそも思い上がりなんじゃないのか?  答えは出ていない。自分がPimp Cの感情に辿り着けるとも思わない。気持ちが混乱しちまってる。だから、正直、今はちょっと彼の音源とは距離を置いている。色んな意味でツラいのだ。

 それでも、オレは毎日音楽を聴いている。聴き続けるしかないんだ。

 そして・・・・・・・・、多少なりとも冷静に彼が残した音楽に再び接することが出来るようになった時、オレはあらためて痛感するだろう。Pimp Cという偉大なアーティストが残してくれた唯一無二な音楽の素晴らしさを。彼がヒップホップ・シーンに刻み込んでいった足跡のデカさを。今、オレが確実に言えることはそれしかない。

 Rest In Peace、Pimp C。
 安らかに眠ってくれ。ありがとう。
文:萩谷 雄一


 コメントをいただきました(敬称略・50音順)

別れは大抵の場合突然だけど、Pimp Cとの別れは 海を隔てた遠いオレらにあまりにも突然だった。 それでも鳴りやまぬ彼の音楽は、 前に進むヒップホップという大きな大きなDNAの中のピースとして、これからも生き続 ける。
一ノ木 裕之


その仕事内容から、実は繊細な人なのでは、と気づいたところで後の祭り、 それを隠すために選んだ名前がピンプCだったとしたら、 ここまで不器用な人生行路もないよなあ・・・合掌。
小林 雅明


古くからテキサスをレペゼンし、今では全米が認める偉大なるラッパーとなっ たPimp C。生きる伝説が自分の身をもって切り開き築き上げたシーンは、永遠に語り 継がれていくだろう。成熟を遂げたテキサスで、Pimp Cはこれからも永遠に伝説とし て語られ、シーンの発展へ寄与し続けるのだ。ただただ、残念だけど、Pimp Cが与え た影響は誰にも語り尽くせないほど大きい。ご冥福をお祈りします。
高橋 荒太郎


ラッパーとしてはやっぱBun Bの方が好きだね!ってヒトは多いのだろうが、 「ポケットいっぱいの宝石」で初めて“ファンになった”自分としてはPimp Cの声/フレー ズ/フロウの方によりFunkを感じてたり、痛みを感じていた(・・・っていうかまさに 全盛期のハンセン・ブロディ組ばりの"最強タッグ候補"だったよ!)。 なので、もうあのコンビネーションやトラックが聴けないのかと思うと・・・・・。 テキサス繋がり云々じゃないが"メガネ男子"としてもオフのハンセンに匹敵するいい 男だった。天国という名のブロックでもハッスルし続けてクダサイ。好きな曲挙げ は、切なくなるのでやめておきます・・・
二木 崇(D-ST.ENT)


ピンプの死。これは西にとっての2パック、東にとってのビギーに匹敵するデカいダメー ジだ。比べるもんじゃないんだけどさ。合掌・・・。 
升本 徹


さあこれから、というときに本当に残念でなりません。偉大なる南部のパイオニア の冥福を、心から祈ります。
吉橋 和宏


 Pimp C/UGK関連映像・サイト

Pimp C

Underground
> 「Pourin' Up」PV


Underground
> 「Knockin doors Down」PV



UGK

> 「International Players Anthem (I Choose You)」PV
> 「The Game Belongs To Me」PV
> 「Take It Off」PV
> 「It's Supposed To Bubble」PV
> 「Use Me Up」PV
> 「Something Good」PV ←必見
> Jay Z feat. UGK 「Big Pimpin」PV
* リンクが外れている場合がございます。予めご了承ください。

> Pimp Cオフィシャルサイト
> UGKオフィシャルサイト
> Rap-A-Lot Records

 Pimp C/UGK関連作品


Underground UGK 「Underground Kingz」(07年)
ヒップホップ・アルバムでここまで黒さを聴かせてくれる作品はそうそう無い。全体に漂うブルージーで琥珀色を放つUGKワールドは、絡みつくような高い声のPimp Cと重く説得力のあるBun Bの二人のラップが共存することによりいっそう完成度が増す。


Pimpalation Pimp C 「Pimpalation」(06年)
2001年から加重暴行罪で獄中生活をしてきたPimp Cの出所後初となるソロ・アルバム。Tom Pettyネタの「Free」からラストのTanya Herron嬢をフィーチャーしたAaron Hallのヒット曲ネタまで、相方Bun Bのソロ・アルバムに負けぬ内容!06年のベストアルバムの1枚。


Trill Bun B 「Trill」(05年)
Pimp Cの相方Bun BがH-Townの名門Rap-A-Lotから放った激しくヤバイアルバム。メロウになり過ぎずに尚且つ南のバウンシーな熱い汁をたっぷりと含ませた濃厚な作品。本物のサウスを堪能したい本物のファンにオススメしたい。


Sweet James Jones Stories Pimp C 「Sweet James Jones Stories」(05年)
Pimp Cが獄中にいるときにリリースしたソロ・アルバム。逮捕前に録音したと思われる音源。それでもブルージーでファンク心溢れる良作に仕上がっている。Z-Ro、Twista、相方Bun Bが参加。プロデューサーにはMike Dean、No.I.D.、DJ DMDなど。


Best Of Ugk UGK 「Best Of Ugk」(03年)
同じくPimp Cおつとめ中にリリースされたベスト。旧譜をそろえなくても良いのでUGK初心者はまずはここから入るがよし。


Side Hustles UGK 「Side Hustles」(02年)
Pimp Cがムショ入り後にリリースされた、2002年までの コンピレーションやサントラに提供した楽曲を集めた編集盤。BDPネタのScarfaceとの「The Down With Us」は必聴曲!


Dirty Money UGK 「Dirty Money」(99年)
Jay Zとの「Big Pimpin」のヒットにより一気に有名になったUGKの4th。E-40の「Captain Save A Hoe」使いの「Choppin' Blades"、Devin The Dudeをを迎えたレイドバックな「Ain't That A Bitch」、シンプルなビートの「Holdin' Na」、Eric B&Rakimが使った定番ブレイク「Don't Look Any Further」の「Like A Pimp」などこちらもクラシック。


Ridin' Dirty UGK 「Ridin' Dirty」(96年)
ブルージーという言葉がしっくりくる3rd。Ronnie Spencerのフックがソウルフルな「One Day」、ファンキーなビートに心奪われる「Pinky Ring」、スクリュー風味の「Diamonds & Wood」、大人度高めなGファンクチューンな「That's Why I Carry」などアップチューンもBPM遅めの曲もいぶし銀の味わい。タイトル曲で東派も完全KO。


Supertight UGK 「Supertight」(94年)
メジャーでのセカンド・アルバム。Pimp Cが中心になってプロデュースしたトラックはどれもブルージーでファンキー。Pleasureの「Thoghts Of Old Flames」ネタのメロウな「It's Supposed to Bubble」、T.I.がカヴァーした「Front, Back and Side to Side」など今聴いても全く色あせぬ名曲揃いの傑作。


Too Hard To UGK 「Too Hard To」(92年)
Big TymeリリースしたEPの後に放ったUGKのメジャーデビュー・アルバム。Geto Boys、Three 6 Mafiaらの影響を受けた重たく暗い空気を持ったトラックが多い。Isleyの大ネタ「Between The Sheets」の「Cramping My Style」、ダークな「Feel Like I'm the One Who's Doin' Dope」などオススメ。


 プロデュース/客演曲

■Pimp C客演一部■

Three 6 Mafia feat. UGK / On Sum Chrome ラストレコーディング
Nelly / Cut It Out
Gucci Mane / I Know Why(『Back To The Traphouse』)
Project Pat / Talkin’ Smart (『Walkin'Bank Roll』)
Chamillionaire / Welcome to the South (『Ultimate Victory』)
Baby Bash / Mean Mug(『Cyclone』)
Talib Kweli / Country Cousins(『Eardrum』)
Dizzee Rascal / Where's Da G's(『Maths + English』)
Ali & Gipp / Hood (『Kinfolk』)
Crime Mob / Go To War (『Hated On Mostly』)
8 Ball & Mjg / Whatchu Gonna Do (『Ridin' High』)
T-hud / Good Weather Music (Never Thought)(『Undrafted』)
Young Buck / 4 Kings(『Buck The World』)
Z Ro / Murder'ra (『Power』)
Lil Boosie / Soft to Hard(『Bad Azz』)
Bow Wow / 4 Corners(『Price Of Fame』)
Brooke Valentine / D Girl (『D Girl』)
Missez / Love Songs
Shawnna / Gettin Some Head (remix #1) feat. Lil' Wayne, Pharrell, Rick Ross, Pimp C, Busta Rhymes, Fat Joe & Ludacris
Scarface / Pimp Hard (『My Homies: Vol.2』)
Ludacris / Do Your Time (『Release Therapy』)
Too Short / Money Maker (『Blow the Whistle』)
E-40 / White Girl (『My Ghetto Report Card』)
T.I. / Front Back (『King』)
T-Pain / I'm N Luv (Wit A Stripper) 2 - "Tha Remix"
Lil'flip/ You'z A Trick (remix)(『I Need Mine』)
Bun B/ Get Throwed (『Trill』)
Too Short / Quit Hatin', Pt. 2 (『What's My Favorite Word』)
Greg Street/ Country Star (『Six O'clock Vol.1』)
Big Moe/ Cash (『Purple World』)
Starvin' Artist/ Green Boy (『Ridin Dirty In The South: Ultimate Southern Hip Hop Collection 』)
Three 6 Mafia/ Like A Pimp (Remix) (『Da Unbreakables』)
E-40/ Doin' The Fool(『Loyalty & Betrayal』)
Willie D/Freaky Deaky (『Loved By Few Hated By Many』)
Mc Breed/ Rule No 1 (『It's All Good』)
Three 6 Mafia/ Sippin' on Some Syrup (『When The Smoke Clears』)
Jay Z/ Big Pimpin' (『Vol.3: Life And Times Of Shawncarter』)
Ludacris/ Stic 'Em Up (『Back For The First Time』)

Dj Princess Cut 『Bout 2 Blow: Vol.2』)

■UGK以外のプロデュース■

Spice 1/ Murder Man Dance (『Last Dance』)
Sleepys Theme/ Simply Beautiful(『Vinyl Room』) Drums:Pimp C
Crooked Lettaz/ Get Crunk (『Grey Skies』)
Young Bleed/ Bring The Noise(『My Balls And My Word』)
Master P / Break 'Em Off Somethin' (『Ice Cream Man』)
Master P & Silk & UGK/ Playaz From The South (『Bouncin' And Swingin' 』)
Big Mike/ Havin Thangs (『Somethin Serious』/『Dangerous Minds(OST)』)
5th Ward Boyz / Swing Wide (『Rated G』)


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