中納良恵-Premium Showcase-ソレイユ

天井に白いレースが飾られた会場の中央にセッティングされたステージを360度取り囲むように設けられた客席が幸運な200名の女子たちによって埋め尽くされる。

ほどなく、子供たちの無邪気な声と鳥の囀り、ピアノの音色が会場に鳴り響き、そのBGMと共に真っ白な衣装を纏った中納良恵とドラムのあらきゆうこが登場。 あらきのパーカッションに合せ、中納はシーケンサーでワンフレーズの録音・再生を繰り返しながら即興で曲を作り上げていく。 パーカッションのリズムと共に徐々に増幅する音圧と"うた"の気迫に会場は張り詰めた緊張感が漂い、私たちは、ただステージ上の2人をじっと見守っていた。

中納を中心にバンドメンバー全員がステージに揃ったところでアルバム収録曲『あくび』を披露。
１曲目とは異なり軽快なピアノとバンドサウンドで歌う中納の表情が次第にほぐれていく。と同時に会場もこれまで中納良恵に対して抱いていたイメージとは明らかに違う、シンガー中納良恵である事を徐々に受け入れていく事ができた。

最初のMCで中納が言った。

『”ソレイユ”って、まるで寂れた田舎の純喫茶の名前みたいやろ？純喫茶でひとり、新聞や週刊誌を読んでいるような、誰にも邪魔されへん場所。馴染み深い感じ。』

なるほど、確かにEGO-WRAPPIN'のLIVEでの彼女は若干近寄りがたい、というか近寄らせないくらいのテンションと観客を煽るようなステージングで楽しませてくれる。 しかし、今日の彼女は違った。バンドメンバーと目と目で感じ合いながら演奏し、客席の1人1人に語り掛けるように歌う。その姿は全てを受け止める包容力と、より近くに感じられる親近感のようなものを感じ取る事ができた。ステージ上の彼女はEGO-WRAPPIN'中納良恵ではなく、１人の女性として中納良恵のありのままの姿が其処にはあった。

女性のゆれる恋心や大好きな人との何気ない日常を歌った念願（？）の”ギャルバン”チックなフレイヴァー漂う『ソレイユ』、『パステル』といったナンバーから、今回のアルバムに唯一収録された戸張大輔のカヴァー曲で、ざらついたギターの残響音の中、美しい歌詞が響き渡る『無題4』など『ソレイユ』に収録された曲はもちろん、新曲、カヴァー曲を織り交ぜた全１０曲、約１時間半のステージ。

アンコールに応え再びステージにあがった彼女が一人ピアノ弾き語りで『しずく』を歌い上げ、最後はメンバー全員でThe Monkeesのカヴァー曲『I'm A Believer』を披露。 ステージ中央でバンドメンバーと私たち観客に囲まれた中納良恵はとにかく楽しそうだった。 少し離れた所から彼女の顔を正面に見ることができた私の所にまでその幸福な感情が伝わり、会場全体を包み込む。

この幸福感は何処から来るのか？
ステージ途中のMCで中納が言ったフレーズが思い浮かぶ。

『EGOとは違う、１つの過程として見守って』。

彼女が持っている女性らしさ、家族愛や恋愛といった様々な愛のカタチなど、これまで以上にパーソナルな側面を打ち出し、ありのままの自分を曝け出した『ソレイユ』をいま、こうして人々に届けることができて、受け入れられている。